相続トラブルの8割は遺産額5000万円以下…一般家庭で「未然に防ぐ対処法」

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2025年06月18日 16:10  web女性自身

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相続と聞くとすぐ「私たち庶民には関係ない」と言う人が多い。



「私も以前は相続など人ごとでした。だから知識もなく対策もせずに直面してしまい、大変でした」



そう話すのは『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)の著者で、ジャーナリストの永峰英太郎さん。



「母が亡くなったとき、父は認知症で署名もできない状態でした。それを知った銀行は遺産相続に応じてくれず、母がコツコツ貯めた預金の相続にも苦労しました」(永峰さん、以下同)



銀行の相続対応に、預金額の多寡は関係ないのだという。



また、相続トラブルは“お金持ちに限った話”ではない。裁判沙汰になった相続トラブルは、遺産額1千万円以下が33.8%、1千万円超5千万円以下が43.8%。実に約8割が遺産額5千万円以下で起きている。“争続”は富裕層ではなく、一般家庭で起きることなのだ。



「ただ私が経験した相続問題は、親が元気なうちであれば簡単な手続きで解決できるものばかり。早めに準備すれば怖くありません」



永峰さんが見た、ごく普通の家庭にありがちな相続トラブルとその対処法を聞いた。



【1】母が実印を持っていないと、父の死亡保険金を請求できない



「私の義母は『夫の実印があればいいんでしょ』と思い、自分の実印を持っていませんでした」



だが、夫亡き後の保険金の請求や遺産相続、自宅の売却など高額が動くときに本人の実印は必須だ。



実印の登録は、役所に本人が出向くか、自筆の委任状があれば代理人による申請も可能。



「仮に義母が認知症で委任状も書けなかったら、印鑑登録ができず、保険金の請求もできなかったでしょう」



【2】マイナンバーカードがないと、公的書類の発行が面倒



たとえば遺産分割協議書の作成には、戸籍謄本や印鑑証明などが必要だ。マイナンバーカードがあれば、本人の了承を得て暗証番号を聞き、公的書類の多くをコンビニで取得できる。カードがなければ、本人か委任状を持つ代理人が役所に出向くしかない。カードの有無でかかる手間は雲泥の差だ。



【3】親の普通預金が引き出せず、介護費用にひと苦労



「親自身の介護に使うと銀行窓口でどれだけ頼んでも、預金者が認知症だと普通預金は出金できませんでした。親から暗証番号を聞いておけばよかったのだろうか」



大手銀行などの「代理人予約」を利用しよう。親と代理人がそろって手続きしておけば、認知症の診断後は代理人が取引できる。



【4】定期預金は、認知症になったら解約できない



定期預金の出金は預金者本人か、委任状を持つ代理人による手続きが必要だ。認知症の悪化や意識不明などで委任状にサインができないと、定期預金は解約できない。



「逆に、自分のサインが書けるうちなら解約できます」



高齢の親の定期預金は自動継続をやめて、出金しやすい普通預金にまとめておくと安心だ。



【5】母が認知症なため、父の死亡保険金がゼロに



保険金は受取人か、委任状を持つ代理人が請求するものだ。



「私の知人は父の死後、認知症の母に代わって保険金を請求しましたが、保険会社は『委任状がないと手続きできない』の一点張りだったそうです」



しかも生命保険は原則3年の時効がある。時効を過ぎれば請求権が消滅し、保険金はゼロになる。



保険の受取人が高齢だと危険だ。受取人の変更申込みは契約者の電話でOK。子どもに変更しよう。



【6】ネット銀行は紙ものがなく、口座の有無さえ把握が困難



「実家で預金通帳や保険の書類などを探すと、利用中の金融機関はあらかたわかると思います」



それでも不明な場合、保険は「生命保険契約照会制度」、証券は「証券保管振替機構」の活用を。



「ただし、ネットの金融機関は書類がないことが多く、見つけづらい。親に持っている口座を聞いておきましょう」





■親の成年後見人になれても「成年後見監督人」に費用が



【7】ポイントは相続不可、マイルや電子マネーは相続可



「楽天ポイントやVポイントなど、ポイントはほぼ相続できません。親に使い切ってもらいましょう」



いっぽう航空会社のマイルやSuicaやWAONなどの電子マネーは相続できるそう。何を使っているか、チェックして。



【8】相続放棄をしたのに、空き家になった実家の管理を回避できず



借金を相続すると、相続人が返済義務を負うことになるが、相続を知ってから3カ月以内なら、相続放棄も可能だ。検討しよう。



ただ実家の近隣の人に「相続を放棄したので後は知りません」とは言いづらいもの。近隣に迷惑をかけないように、相続を放棄しても空き家の管理が残る場合も。



【9】相続登記をしていないと、3代さかのぼって書類を集める羽目に



2024年4月から「相続登記」が義務化。親の没後、遺産は名義の変更後でないと売却等は行えない。



なかには、他界した祖父母名義のものも。その場合、名義変更に関わる書類を3代分集める羽目に。いますぐ実家の名義を確認して。



【10】親の成年後見人になっても、「成年後見監督人」に費用が必要



「母が亡くなったとき、父は認知症で相続がまったく進まず、最終的に成年後見制度を利用しました」



後見人に司法書士などが選ばれると費用が発生する。永峰家は息子である永峰さんが後見人になれたものの、後見人をフォローする「成年後見監督人」が付き、月2万円の費用がかかったという。



「監督人は父がおごると言っても父のお金を使うことを認めず、生前贈与も許可せず、父のお金は誰のもの? という疑問が残りました」



成年後見制度は“最後の砦”だ。それまでに打つ手はたくさんある。



「ぜひ遺言書を作成して。遺産分割がスムーズに進み、きょうだいのもめごとも防止できるでしょう」



「まだまだ元気!」と笑えるうちに、相続の準備を始めよう。

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