<ニュースの教科書>
STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)の「俳優部」が演劇界で存在感を増しています。アイドルを目指して磨いた歌と踊りのスキル、仕事への姿勢、そしてルックスと3拍子そろった彼らの思いとは。【相原斎】
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■タイプロが注目
人気グループtimeleszの追加メンバーを決めるオーディション「タイプロ」は昨年来、注目を集め、社会現象となりました。選ばれた新メンバー5人のうち、寺西拓人(30)原嘉孝(29)の2人は、実は同じ事務所の「俳優部」からの転出組でした。
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STARTO ENTERTAINMENT(SE)と言えば、きら星のような人気グループの名前が頭に浮かびます。「研修生」の立場で事務所に入り「ジュニア」となった若者たちの目標はあくまでグループとしてのデビューです。
ところが近年、ジュニア卒業後に個人アーティストとして事務所の公式サイトに登場する例が多くなりました。SE組織図の中に公式の俳優部があるわけではありませんが、業界関係者やファンの間で彼らは「俳優部」として認識されています。
異色のコメディー「あなたに会えてよかった」の公演を終えたばかりの林翔太(35)は「もともとV6に憧れて事務所に入ったんですけど。ジュニアのまま20代半ばになった頃、30代で自分が立てるステージって何だろうと考えたんですね。ミュージカルが好きだったこともあり、僕の場合はそれが演劇の世界だったんです」と心境の変化を明かしています。
■ジュニアで磨き
関西ジュニア時代からダンスやアクロバットに定評があった今江大地(29)は「ジュニアで10年くらいたった5年前には、正直限界を感じて辞めようと思っていました。そこでいただいたのが(初主演舞台の)『冒険者たちのホテル』だったんです。新しい世界で視野がパッと広がった気がしました」と、転機を振り返ります。
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彼らにはアイドル事務所ならではのルックスに加え、幼少期から磨いた歌と踊りのスキルがあります。演劇界から次々にオファーが舞い込むのも自然なことなのかもしれません。
■早いセリフ覚え
昨年末から連続6本の過密スケジュールに追われる高田翔(31)は、子役時代の10歳の時に劇団四季「ライオンキング」のヤングシンバ役で初舞台を踏んでいます。文字通り「舞台の子」と言っていいでしょう。それでも「声変わりに悩み、役者をやりたいと思っても、うまくいかない時期もありました。コロナ禍のときに(堂本)光一クンから声を掛けていただいた『Endless SHOCK Eternal』を完走できたことで、ようやく腰が据わった気がします」と「俳優部」までの紆余(うよ)曲折を明かしました。
ここ10年余り、SE所属アーティストの企画ページ「サタスタ」を担当しています。インタビューを重ねる中で「俳優部員」のセリフ覚えのスキルの高さにはしばしば驚かされました。
林は「台本を開いたところを写真に撮ったみたいに頭に入っているんですね」と写真的な記憶力を明かしました。セリフ覚えの早さに定評がある松本幸大(36)も「受験勉強と一緒です。自分のセリフを隠しながら頭に入れていく。いつの間にか開いたページがそのまま頭に浮かぶようになりました」と似たようなスキルの持ち主です。
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「キ上の空論 人骨のやらかい」の公演を終えたばかりの室龍太(36)は「ボイスメモにセリフを吹き込んで覚えるので、イヤホンは必携です」。高田は「上演中の台本はもちろん、過去作も入れたタブレットを常に持ち歩いています」と、最新機器も上手に活用しています。
■「ふぉ〜ゆ〜」も
CDデビューをしないまま公式サイトに登場した異色グループ、ふぉ〜ゆ〜も舞台での活動が多いこともあって俳優部と認識されています。メンバーの福田悠太(38)はこの7年間で主演舞台14回という実績の持ち主ですが、謙虚な姿勢が記憶に残っています。
「座長という意識はないんですよ。(主演)1作目の演出家、吉原光男さんが『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役を史上最年少でやったすごい人で『福ちゃん、座長とか言ってるけど、別に座長じゃねえから。マジ関係ないからさ』と言ってくださったこともあって(笑い)、以来、キャストの1人として参加している意識が強いですね」と心の持ちようを明かしました。
確立した劇団の中に、あるいはプロ意識の高い舞台俳優の中に独り飛び込む形で出演するケースがほとんどですから、「新参者」の意識を持ち続ける俳優部員も少なくありません。
昨年、演劇ユニット「キ上の空論」に初参加した室は「稽古は淡々と進むので、必死に食らいつかないと置いてかれます。精神面、体力面でまた1つ成長できると思います」と気持ちを引き締めていました。
こちらも昨年、宅間孝行氏作・演出の「夕−ゆう!」に出演した松本は「稽古は厳しいけど、楽しい。ここではダメ出しを『ギフト』と呼ぶんですけど、毎日いただけるギフトはどれも勉強になります」と笑顔を見せました。
そんな松本も「舞台は大好きですけど、今でもライブやりたいという気持ちはあります」と明かしました。
■ライブへの思い
林も「今年2月の誕生日にライブイベントができたのが自分としては大きかったです。役がある姿しかお見せできなかったのが、素の自分でファンの方に接することができましたから」と言います。
舞台俳優として貴重な存在となった今も、ジュニア時代に目指した歌って踊るライブへの思いは胸にしっかり残っているようです。
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