


若い女の子に夢中になっている俺に、妻としてヤキモチを焼いているわけでは……ないみたいです。ミサトの冷ややかな視線は、完全にお怒りモードです。まさかこんな反応がくるとは……。俺は慌てて話を切り上げようとします。

そのとき後部座席から泣き声が聞こえてきました。チャイルドシートで寝ていたマシロが起きてしまったようです。車を停め、マシロを抱き上げるとミサトは言いました。「ラクになるって何? バカバカしい。笑わせないでよ」

自分でも驚くほど饒舌に、俺は推し活についての熱弁をふるいつづけました。「ミサトもヤキモチを焼くんだ。可愛いところあるな〜」なんて一瞬でも思い込み、口にした俺がバカでした。俺はミサトのお怒りモードのスイッチを押してしまったようです。
しかしミサトがなぜこれほどまで怒っているのかが、俺にはさっぱりわかりません。俺が息子を連れてライブに行けば、ミサトも面倒をみる子どもが1人減ってラクになるはず。どうしてわかってもらえないんだろう……。今は推しのことを黙っていればよかったと後悔しています。
【第7話】へ続く。
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