写真 みなさん、こんにちは! ファッションスタイリスト&ライターの角佑宇子(すみゆうこ)です。
昨今、物議をかもしている、透け透け素材のシアートップスや下着のチラ見せコーデ。このようなファッションの流行は決して今に始まったことではなく、昔から若い世代を中心に繰り返しブームを巻き起こしています。
なぜ、このような過激な肌見せや露出度の高い服装が流行るのか。私たち女性は何を思い、どんな意図を持ってそのような服装をするのか。今回はその心理についてご紹介いたします。
◆90年代、00年代、10年代も露出コーデは存在していた
昨今でいう刺激的なファッションといえば、へそチラルック、下着のロゴ見せコーデ、シアー素材の中に仕込んだ透けブラコーデなど。これらの服装をしている若い女性を見て私たち40代は思わずギョッとしてしまいますが、こうしたファッションはアイテムこそ違えどかつても存在していました。
例えば、90年代はリゾートワンピースだったパレオが流行。ついでキャミソールトップス、お尻の割れ目が見えんばかりのヒップハングボトムス。露出が控えめになり始める2010年代においても、一部ギャルたちの間ではお尻と脚の境目が見えるほど短い丈のホットパンツが流行していました。このように過去のトレンドを遡ってみれば、およそ10年サイクルで刺激的なファッションアイテムが登場しています。
◆スカートを短く上手に折り込んでいた女子高生時代
今アラフォー世代であるみなさんが、10〜20代の時はいかがでしたでしょうか。お母さんに怒られそうな過激なファッション……とまではいかなくても、女子高生時代ではいかにスカートを短く上手に折り込むか試行錯誤していた方も多いのでは?
私たち女性には、もちろん全員ではないですが、その時々で「なんとなく」「かわいいから」という理由で、あっさりと気軽に過激なファッションを楽しめる時代があるようですね。
◆「男性のため」でも「エロ」でもない
過激なファッションが巷で話題になると決まって、「エロい格好をして男を誘惑したいのか?」「目のやり場に困る」「下品に見える」といった厳しい声が飛び交います。
しかし、実際に露出度の多い服装を好む女性たちに調査をすると、ほとんどの場合が「男を誘惑するつもりなんて一切ない」とセックスアピールの象徴であることを強く否定します。そして、それは何も強がりではなく心の底から決して“エロ目線”ではないという理由があるのです。
◆人目もはばからず、好きな服を好きなように
これは筆者の経験談ですが、痩せる前はできるだけ露出を避けワイドシルエットのアイテムを好んでいました。そこから運動を習慣化し、見た目も変わって腹筋が仕上がってくるとその嬉しさから服の趣味もガラッと変わり、ボディラインがわかるような服装を好むようになったのです。
この身体の変化によって服装の好みが変わったという自覚はあるのですが、その心理背景に「男の人にスタイルが良いと褒められたい」といった意図は全く存在していません。
どちらかといえばむしろ同性である女性に「良い身体をしているね!」と褒められることの方がとても嬉しかったと記憶しています。でも、誰かに褒められることは副産物的な喜びに過ぎませんでした。単純に今まで着られなかったタイトなシルエットの服が着られるという事実が嬉しかったのです。
これまではしたくても身体がみっともないからと思い実現できなかった服装を、身体を鍛えることで存分に楽しめるようになったので、人目もはばからず、年甲斐もなく、好きな服を好きなように着て自己肯定感を高めています。
◆露出度の高い服装を選ぶ理由
対する若者が露出度の高い服を好むのは、体型崩れや肌のハリの衰えというものを知らないからということが大きく起因しているのではないかなと思います。
大人世代は経験上、容易に露出度の高い服を選ぶことができません。「こんな体型では……」「いい歳をして露出なんて」「身体を冷やしたら健康に害を及ぼす」という概念ができあがっているからです。
しかし若くて元気な10〜20代は、服装と自分の身体がミスマッチを起こすという経験を比較的持ちにくいので、その点を気にせずに露出度の高い服装に挑戦しやすいのではないかと推察します。
◆いやらしい視線を向けられることも理解
その一方で、露出度の高い服装を着るといやらしい視線を向けられることも、もちろん理解しています。しかし、それでも気にせずに露出を楽しむのは、「若さ」という自信を無意識に持っているからなのかもしれません。
「いつかは着られなくなるから、周りの目など気にせず露出を楽しみたい!」と、考える子もいれば「誰に何と思われても、私はこれがかわいいと思ったから着る!」という本能に基づいて露出を楽しんでいる子と、その心理はさまざまです。
しかし、総じて彼女たちに共通するのは、若い世代にとって露出とはあくまでもファッションの一部であり、数あるおしゃれの表現方法の一つにしか過ぎないということなのです。単に大人が恐れてできない服装だから、着用する世代層に偏りが出て「若者は露出を好む」という図式に見えているだけなのではないでしょうか。
◆目のやり場に困ってしまうことも?
好きな服を着ればいいけれど、それで犯罪に巻き込まれては元も子もない。こうした意見も数多く寄せられますよね。自己防衛のためにも過度な露出を控えるべきという声も、決して間違ってはいないでしょう。しかし、一概に服装の自由を制限するべきとも言えないのが難しいところです。
露出自体が悪とは言わないものの、身近な人が目のやり場に困ってしまうことが多いのであれば、それは時と場合によって「セクハラ」になってしまうこともありえます。大事なのは、どんな時にどんな場所で、どんな目的を持ってそのファッションをするのか。TPOを意識した服装を心がけて不快を与えない程度に自由なファッションを楽しむことが、大人世代の私たちにできるおしゃれな嗜(たしな)みなのかもしれません。
<文&イラスト/角佑宇子>
【角 佑宇子】
(すみゆうこ)ファッションライター・スタイリスト。スタイリストアシスタントを経て2012年に独立。過去のオシャレ失敗経験を活かし、日常で使える、ちょっとタメになる情報を配信中。2023年9月、NHK『あさイチ』に出演。インスタグラムは@sumi.1105