2025年FIA F2第8戦シルバーストン 宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC) 前戦シュピールベルクでマシントラブルに見舞われた宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC)。その翌週、イギリスのシルバーストン・サーキットで行われた2025年FIA F2第8戦の走り始め、フリー走行を9番手で終えた。
「フリー走行はそこそこ良い感触で、予選に向けて細かな調整をして臨もうとしていました」と、宮田はレースウイーク後の取材で振り返った。
ただ、フリー走行と同じ金曜日に行われた予選で宮田はタイムを残すことができなかった。またしても、宮田のマシンはトラブルに見舞われたからだ。
「予選はピットレーンを出た瞬間にエンジントラブルが起きてしまい、ウォームアップすらできずに終わってしまいました」と、宮田。
トラブルの詳細について、宮田は多くを語らなかった。なお、オートスポーツwebの調べでは前戦シュピールベルクとは違った要因でエンジントラブルが起きてしまったようだ。
なすすべがないままスプリントレース、フィーチャーレースともに最後列からのスタートとなった宮田。土曜日のスプリントレースではアムーリ・コルデール(ロダン・モータースポーツ)とのポジション争いの末、ターン15でコルデールをコース外に押し出し、持続的なアドバンテージを得たとして、宮田に10秒のタイムペナルティが下った。
高速の右コーナーであるターン15にて、宮田はコルデールに外側からオーバーテイク試みた。サイド・バイ・サイドの末、宮田はターン15でコース外に出ることになり、コルデールの前でコースに復帰しポジションをキープした。
ただ、ターン15のエイペックス(頂点)時点で、宮田車のフロントアスクルはコルデール車のミラーよりも後ろだったことから、レーススチュワードはコルデールについて、ターン15の立ち上がりで宮田にスペースを開ける義務はなかったと判断。走路外からコルデールをかわし、ポジションを戻さなかった宮田に10秒のタイムペナルティを科すことを決定した。このペナルティにより、17番手でチェッカーを受けた宮田は20位となった。
「ペナルティは残念でした。シルバーストンはオーバーテイクが難しいサーキットですから、前に出るにはトライしなければ難しい状況でした。そのトライの末のペナルティなので、仕方ないという思いもあります」と、宮田。
日曜日のフィーチャーレース(29周)は天候が一転。レース開始当初は雨粒こそ落ちていなかったものの、その直前まで激しい降雨に見舞われたことから、路面は完全なウエット状態だった。全車がウエットタイヤ(F1と異なり、FIA F2には浅溝/インターミディエイトタイヤの設定がない)を履き、水飛沫が高く巻き上がるなか、宮田は17番手までポジションを上げてレース後半を迎えた。
20周を迎えたころから各車タイヤ交換へ。ほとんどの車両が2セット目のウエットタイヤに履き替えるなか、21周目にピットに入った宮田はオプションタイヤ(ソフト)を履く賭けに出た。スタート時よりも路面は乾いたようだが、それでも溝のないドライタイヤで走るには厳しいコンディションだった。それを証明するかのように、宮田と同じオプションタイヤに履き替えたガブリエレ・ミニ(プレマ・レーシング/アルピーヌ育成)がピットアウト直後にスピンを喫し、マシンを止めてしまう。
ミニのストップでバーチャル・セーフティカー(VSC)導入となるなか、同じくドライタイヤに履き替えた直後のロマン・スタネ(インビクタ・レーシング)がスピンからマシンを止め、VSCはセーフティカー(SC)に切り替えられた。ドライタイヤでの走行は困難を極めたことから宮田は再びピットに入り、ウエットタイヤを履くと17番手でコースへ復帰した。
残り2周でリスタートを迎えたが、ジョシュア・デュルクセン(AIXレーシング)のスピンですぐさまSC導入となり、SC導入のままチェッカーとなった。デュルクセンのストップに加え、終盤にビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/ウイリアムズ育成)がピットでマシンを降りたため、宮田は15位でフィーチャーレースを終えた。
「フィーチャーレースで入賞するにはリスクを背負うしかなかない状況でした。リスクを背負ったものの、結果に繋がりませんでした」と、宮田。続けて、シルバーストンの週末を振り返った。
「今回のレースウイークは予選で起きたエンジントラブルで台無しにされてしまったというのが、第一印象です。先週末のシュピールベルクでもトラブルが起きて、チームはトラブルを起こさないように努力を尽くしています。とはいえ、僕にはどうしようにもできないことですから、素直に受け止めることはできないというか、受け止めにくい状況が続いたダブルヘッダーでした」
「次戦のスパ・フランコルシャンは、去年いいレースパフォーマンス(フィーチャーレースでは16番手から7位入賞)があった場所です。まずは予選からいいポジションで終えるように尽くします。トラブルを避けて、ベストなパフォーマンスでレースウイークを過ごせるようにしたいと思っています。いつも応援ありがとうございます」
FIA F2は全車がまったく同じパッケージ(シャシー+エンジン+タイヤ)で競うフォーミュラカーレースだが、前身のGP2時代からメンテナンスや管理による個体差、トラブルの頻度の違いが出やすい状況が続いている。チームやドライバーが介在できない領域でのトラブルのなか、宮田も我慢の戦いが強いられている。
[オートスポーツweb 2025年07月09日]