がん免疫薬に効果、腸細菌特定=「YB328」、樹状細胞を活性化―国立センターなど

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2025年07月15日 07:33  時事通信社

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がん免疫薬の治療効果を高める可能性がある腸内細菌株の「YB328」(産業技術総合研究所・国立がん研究センター提供)
 免疫の働きを利用してがんを攻撃する「免疫チェックポイント阻害薬」について、国立がん研究センターなどは15日、治療効果を高める可能性がある腸内細菌を特定したと発表した。この細菌株は「YB328」で、免疫システムの司令塔の役割を果たす「樹状細胞」を活性化させ、がん細胞を攻撃するT細胞の働きを促進するという。

 がん細胞には免疫にブレーキをかける働きがあり、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)はT細胞に作用することでがんを攻撃する。薬の治療効果には腸内環境の多様性が関連することが分かっていたが、詳細なメカニズムや腸以外で発生したがんにも作用する理由は分かっていなかった。

 研究チームは、肺がんや胃がん患者計50人の便検体に含まれる腸内細菌を解析したところ、ICIの効果が認められた症例ではキラーT細胞とともに、ルミノコッカス科の細菌が増えていることを確認。これまで報告がない新たな株「YB328」の特定と培養に成功した。

 マウスを用いた実験では、患者の便検体とがん組織を移植した上で、YB328とICIを投与。ICIによる治療効果がなかった便でも、YB328の投与後は腸内のキラーT細胞が増加するなどして、がんが縮小した。検体に含まれる他の菌株も比較したところ、YB328の治療効果が最も高かったという。

 研究チームによると、YB328は樹状細胞を活性化させる働きがあり、腸から離れたがん組織に移動して免疫効果を発揮することも新たに分かった。

 ICIは高額な一方、治療効果がある患者は2割程度に限られる。同センター研究所の西川博嘉・腫瘍免疫研究分野長は「キラーT細胞が少ない人でも、YB328の投与で増やすことができる。治療効果の向上につながるのではないか」と話している。論文は英科学誌ネイチャーに掲載された。 

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  • 欧米では癌は現象傾向にあるのに、日本は増え続けている。食べ物が影響して腸内環境が変化しているからだろうか?罹患して新薬治療の前に予防策も必要。医療費削減になるし
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