石破茂首相(写真左)と立憲民主党の野田佳彦代表 参院選の投開票が20日に迫り、石破茂首相(自民党総裁)は演説で「責任政党」の立場を強調する場面が目立っている。山積する内外の課題に対応できるのは長年政権を担う自民だと発信し、苦戦が伝えられる選挙情勢を挽回したい考えだ。これに対し、立憲民主党などは物価高や社会保障改革での与党の「失政」を批判。投票先を決めていない無党派層の取り込みを狙う。
「今良ければいいのか、次の時代にも責任を持つのかの戦いだ」。15日、香川県三豊市で演説した首相は、野党による消費税減税やガソリン税暫定税率廃止の主張に「『選挙さえ勝てればいい』とやっていたら国が滅びる」と真っ向から批判した。
14日には青森市でも、ガソリン減税による減収を懸念する地方自治体の声を念頭に、「財源をつくらなければ困るのは市町村。地方はどうなる」と強調。難航する日米関税交渉への野党による批判には「文句を言うのは簡単。全身全霊で交渉しているときに『あれがだめ』と言って何になる」と語った。
背景には、報道各社の情勢調査から非改選を含む自民、公明両党の過半数維持が危ぶまれることへの焦りがある。賃上げや米価高騰対策で一定の成果を挙げたとみる首相周辺からは「どうしてここまで悪くなるのか」と戸惑う声も漏れる。一方で、選挙直前に打ち出した国民への2万〜4万円給付案について「バラマキ批判を招いただけ。判断ミスだ」(政府関係者)との手厳しい見方もある。
安定感を強調し巻き返しを図る首相を横目に、野党は攻勢を強める。「邪魔されないためには参院も少数与党に追い込むことが必要だ」。立民の野田佳彦代表は15日、新潟県魚沼市で、先の通常国会で野党提出の暫定税率廃止法案が廃案になったことを引き合いに、参院でも与党過半数割れに追い込むと主張。石破政権のコメ政策も「行き当たりばったりだ」と断じ、農業従事者の自民からの「離反」を誘った。
国民民主党は現役世代に照準を合わせた「手取り増」を呼びかけ、伸長が伝えられる参政党は外国人政策見直しを引き続きアピール。日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は公示以降、与党の給付案を手厳しく批判し、社会保険料引き下げのための医療制度見直しを各地で主張している。15日には神戸市で「社会保険料負担を抑えたい。先送り政治には反対だ」と訴えた。