【カレー】新宿の老舗カフェ兼ビアパブで食べる、南国スパイシー鶏と野菜と豆のカレー:パリッコ『今週のハマりメシ』第195回

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2025年07月18日 12:00  週プレNEWS

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新宿「ベルク」の南国スパイシー鶏と野菜と豆のカレー

ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

【写真】ビールがついてもお得なランチメニュー

* * *

珍しく午前中からあちこち移動しなくてはいけないスケジュールだったが、天気が味方をしてくれない日だった。

日中ずっと、突然土砂降りの雨が降ったかと思えば、真夏日のように晴れたりのくり返し。それゆえ、雨で気温が下がるようなことがなく、むしろ地面は加湿器のように湿気を量産し、不快指数はマックス。汗ばむTシャツとうねり放題の髪の毛にげんなりしつつ、中継地点である西武新宿駅からJR新宿駅への乗り継ぎをしたのが、午後2時ごろ。

そういえば昼食がまだだし、いいかげんこの鬱陶しい気分をリセットしたい。ありがたくも空調のきいた地下街を歩きつつ、今自分の体が求めているものは? と自問しながら歩いていたら、どこもなんだか決め手に欠けて、JR新宿駅手前までやってきてしまった。視界の先にあったのは「BEER&CAFE BERG(ベルク)」。もう、入らないわけにはいかないか。


ベルクは、駅直結の商業ビル、ルミネエストの地下にある、カフェ兼ビアパブ。テーブル席もあるが立ちカウンター席も豊富で、さっとコーヒーを飲んだり、名物であるホットドッグなどの軽食を食べたりもできるし、膨大にある(200種類以上あるらしい)メニューをつまみに、昼間っから生ビールで酔っぱらうこともできる。今書いていて、こんな楽園のような店がよく新宿駅からすぐの場所に存在しているなとあらためて驚く、奇跡の店だ。

とにかくメニューがありすぎて、たまに寄るくらいの自分はとても全容を把握できておらず、たいていはお得そうなセットを選ぶ。今の時間帯ならば「ランチサービス」。なかでも神がかっているのが「エッセンベルク」で、人気メニューであるポークアスピックやレバーパテ、その他野菜のおかずやパンやスープまでがセットになった、なんと1皿に30種類もの食材が含まれた豪華な一品。それが単品で税込803円、ビールつきで1,188円というんだからすごすぎる。


ただし提供が11時からで1日30食限定なので、万が一残っているか? と思いつつレジに向かってみたら、やっぱり品切れだった。ならばこちらも盛りだくさんのセット「ジャーマンブランチ」かなと、自動的に注文をしそうになってふと気づく。ランチメニューのなかに「南国スパイシー鶏と野菜と豆のカレー」なる一品があることを。そういえば最近、なんというかこう、きちんと手をかけて作られたうまいカレーが無性に食べたかったんだよな。今日自分が食べるべきなのは、これかもしれない。


ベルクのランチカレーは、基本が693円、少なめが638円、コーヒーつきが836円と涙が出るほどリーズナブル。しかし信じがたいのはやはり、生ビールつきの値段だろう。なんと1,078円。

僕はそこに、280円の「ソーセージ」をトッピング。このソーセージ、ドイツの「IFFA ハム・ソーセージコンテスト」で金賞を受賞したこともあるベルクのオリジナル。名物のホットドックにも使われている看板商品で、それがカレーにトッピングできるなんて嬉しすぎる。

ちなみにこの、南国スパイシー鶏と野菜と豆のカレーは、それまで長く提供されていた五穀米と十種野菜のカレーに代わり、2023年から新定番となったメニューらしい。思えば僕はこれまで、ベルクでカレーを食べたことはなかった。初ベルクカレーへの期待に胸を高鳴らせつつ、いただきます!


まずはカレーをひと口食べて、大きくうなずく。なるほど、こういう方向性か。

こだわり店の自家製ソーセージやハムを食べたとき、ふだん食べているような市販品に比べ、出会い頭のパンチが控えめで、しかし噛み締めるごとにその深みに徐々にうっとりしてゆく、というパターンは多い。具体的には、塩気や旨味調味料でわかりやすいインパクトを出すよりも、素材本来の味わいを大切にして組み立てられてられているというか。ベルクのソーセージももちろんそういう美味しさの逸品なんだけど、カレーでもその信念がぶれていない。


ひと口目はむしろ、想像していたよりも塩気や辛さがおだやかで、あれ? と少し違和感を感じるくらい。ところがそれをよく味わい、さらに2、3口と食べすすめてゆくと、もうとりこだ。豊かなスパイスの風味と、ほろほろの鶏肉の旨味、トマトをベースにしつつ、玉ねぎ、ほうれん草、ブロッコリー、しいたけ、さらにレンズ豆やひよこ豆などたっぷりの野菜たちが織りなす深み。それらがじわじわと心身に浸透しながら元気をくれる、癒しのカレー。

酸味と食感が良いアクセントになる、ごろっと切られたピクルスもいい。そして嬉しいのは、やっぱりソーセージ。


どすんと存在感のあるそれは、そのままかじってビールのつまみにするのもいいし、カレーと合わせてさらなる滋味を堪能するのもいい。あぁ、カレーもソーセージも、心の底からうまいな......。

初めて食べたベルクのカレーの、そのベルクらしさがなんだか頼もしく、僕はすっかりと元気になってまた次の目的地へと向かうのだった。

取材・文・撮影/パリッコ

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