7月20日の投開票まで、残すところあと2日となった参院選。「FNNプライムオンライン」は16日、全国最多32人が7議席を争う東京選挙区では、5人が先行、6人が当落線上にいることを報じた。その先行組の中でも、とりわけ注目を集めているのが参政党の新人・さや氏(43)だ。
「さや氏は都内の女子短大を卒業後にJAZZシンガーとして活動し、’08年にCDデビュー。公式HPによると、西城秀樹さんや因幡晃さんなど、名だたるアーティストとの共演歴もあるようです。また、FMヨコハマのラジオ番組に出演していた経験に加え、保守系メディアのキャスターを務めていることもあり、“シンガーソングキャスター”という珍しい職業を自称しています。
今回の参院選では積極財政論者として経済政策を主眼に置いています。これまでの演説では、『ドケチ緊縮財政を終わらせる』『政府に足りないのは財源ではなくて、国民に対する愛情』などと訴えています。安全保障面では、7月3日に出演した日テレNEWSのYouTube番組『投票誰にする会議』で、個人的な考えとして『核武装が最も安上がり』と述べるなど、国際社会を生き抜く上での核保有に言及していました」(全国紙政治部記者)
各メディアの情勢調査では、参政党が10議席以上を獲得する見通しも伝えられているだけに、さや氏の一挙手一投足にも注目が集まっている。
そんななか、さや氏は7月14日にロシアの政府系メディア「スプートニク」の日本版「Sputnik 日本」が公開したインタビューに出演したのだが、これが波紋を呼んでいる。
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《【参院選立候補の歌手・さや氏「政治に無関係ではいられない」】》と題したインタビューで、さや氏は約15分間にわたり、《「文化人放送局」のキャスターになったきっかけと自身の世代》《経済と文化の関係、日本が直面する「グローバリズムの波」について》《政治の世界に入り、参院選立候補を決意した理由》《「参政党」を選んだ決め手》《日本社会における主な課題、当選したらどう解決していくのか》といった5つのトピックに回答した。
ただ、「スプートニク」は、EU(欧州連合)が、’22年のロシアによるウクライナ侵攻直後、虚偽情報を利用したプロパガンダを防止する目的で、圏内での配信を全面的に禁止する措置を取ったロシア系メディアのうちの一つ。
そのような経緯もあるため、Xではインタビューに応じたさや氏をめぐって、《参政党とロシア政府繋がってんの?》《政治を志す者であればスプートニクがロシアのプロパガンダメディアだと分かる程度の分別はあって然るべき》といった批判が相次いだ。
なお、参政党の神谷宗幣代表(47)は15日に更新したXで、さや氏がインタビューに応じた経緯について、《私も広報部も許可を出していません。現場と党の末端の職員が勝手にやってしまったので、その職員には厳しい処分を下しました。これまでもこうしたことが何度もあり、私は処分を下します》と説明。同日に出演したネット番組「ReHacQ」でも、“ロシアと関係があるのか”という質問を否定する中で、「スプートニクに出たから親露派はあまりに短絡的」と訴えていた。
また、17日の投稿では、さや氏がインタビューに応じた経緯について、《候補者のさやさんは本部に確認をしています。そこはガイドライン通り。(候補者はYouTubeを含めて外部のメディアの出演許可をとらねばならないルールにしています。)それを受けた職員がなぜか独断で許可をだしていたのです。その職員にはそんな権限はないのに、許可を出したため、さやさんが出演した形になります》と明かしている。
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とはいえ、神谷氏がロシアとの関係性を否定した今もなお、さや氏の出演を問題視する声は根強い。
そこで本誌は7月16日、「スプートニク」というメディアの実態や、今回の事案の問題点などについて、明治大学サイバーセキュリティ研究所・所長の齋藤孝道教授に話を聞いた(以下、カッコ内は齋藤教授の発言)
――「スプートニク」とはどのようなメディアなのか
「我々専門家の間では、プーチン大統領、および大統領府第一副長官のアレクセイ・グロモフらが率いる『越境型国営メディア』という認識です。『スプートニク』も『Sputnik 日本』も母体は同じですが、日本とは違い、欧州では『情報工作機関』という扱いでアクセスが禁止されている、完全に“アウト”とされる存在です」
――「Sputnik 日本」の実態は?
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「“一般メディアっぽく”見せる必要があるので、基本的には政治だけではなく、生活的な話や、ほんのりとした話題など様々な軸で発信をしています。そしてフォロワーを増やす。そうした情報のなかに、発信したい自分たちの『プロパガンダ』や『ナラティブ』を、所々で織り交ぜるというやり方です」
――過去にも、鈴木宗男元参院議員(77)、原口一博衆院議員(66)など、日本の政治家が出演した例が複数あるが、問題点は?
「日本の政治家の間では、基本的に出演が推奨されていないメディアという認識が幅広く持たれているはずです。しかしながら、出ている先生方の中にはスプートニクがプロパガンダ機関であることをよく知らなかった可能性が高い。
日本ではメディアのバックグラウンドチェックがほとんど行われていませんから、さや氏も様々なメディアから依頼が殺到するなかで、知らずに出演してしまったことも考えられる。スプートニクがインフルエンサーを起用するのは、よくあるテクニックなんです。ただ、出演してしまったことは問題なのですが」
――日本の政治家が出演することで起こる問題とは
「ロシアのプロパガンダ機関ですから、出演したことで彼らの主義・主張を補強してしまうことに繋がるんです。そうした主張に沿う発言をしていなくても、これだけ支持を集めている政党の候補者が出てしまうと、それを入り口として有権者が『スプートニク』に触れ、結果的に『スプートニク』というメディア自体の信ぴょう性を上げる可能性がある。特に参政党支持者に対して影響を与えてしまったという点において、問題だと言えるのではないでしょうか」
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