最高裁の宇賀克也判事(69)=学者出身=が20日、定年退官する。最高裁判事は判決や決定で法廷意見(多数意見)とは別に「個別意見」を示すことができるが、宇賀氏は他の判事に比べて突出してその数が多く、存在感を放っていた。
宇賀氏は最高裁第3小法廷に所属。最後に裁判長を務めた生活保護費減額処分の取り消し訴訟では、国による減額を違法としたものの賠償請求は棄却した法廷意見に対し、宇賀氏は厚生労働相の減額判断には重大な過失があるとして賠償を命じるべきだとする反対意見を述べた。
反対意見は個別意見の一つ。他にも、野党が求めた臨時国会の召集に約3カ月間応じなかった2017年の安倍晋三内閣の違憲性が問われた訴訟の判決(23年9月)▽最大格差が3・03倍だった22年7月の参院選の1票の格差訴訟の判決(23年10月)▽生殖機能を無くす手術を性別変更の条件とする性同一性障害特例法の要件の憲法適合性が争われた家事審判の決定(23年10月)――などでも反対意見を書いた。
宇賀氏の反対意見は国会や国に厳しく、市民ら原告目線の内容が多いのが特徴だ。
裁判所ホームページで検索したところ、同じ日時に同内容の判決が複数言い渡された集団訴訟の重複分を除くと、宇賀氏が関わった判決と決定は113件。3分の1を超える40件で個別意見を書き、このうち反対意見は20件に上った。
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宇賀氏は東京大法学部卒。1994年に東大大学院の教授に就任し、内閣府公文書管理委員会で委員長も務めた。行政法の権威として知られ、19年3月に最高裁判事に就いた。裁判所法は最高裁判事の任期を70歳までと定め、宇賀氏は21日に70歳となる。後任は東大法学部長で大学院法学政治学研究科長の沖野真已氏。【巽賢司】
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