『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』堀田秀吾 アスコム 「やらなきゃいけないのにやる気が出ない」「なんとなく楽しくない」――体調は悪くないのになんとなく元気がないという、"覇気がない"人が増えていると、研究者の堀田秀吾氏は指摘する。現代は「情報過多社会」、言い換えると「ストレス過多社会」であり、多くの人が疲れを感じやすい状況にあるのだ。
ストレスを軽減するには原因を取り除くのが一番だが、そう簡単なことではない。そこで役立つのが、堀田氏の著書『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』(アスコム)である。本書は"誰にでもできる""簡単な"方法から心を元気にしようとアプローチする一冊だ。それもただの気休めや迷信のような方法ではなく、きちんと科学的根拠のあるノウハウばかり。
たとえば「沈んだ気分を一気に上げる方法」として、堀田氏が提案するのが「変な踊りを踊る」という方法。これはサンフランシスコ州立大学のペパーとリンによる研究に基づいている。研究では両手を大きく上げてスキップするなど楽しい動きをする被験者と、俯いて歩くなどのしょんぼりした動きをする被験者の「元気エネルギー」の変化を調べた。
すると、楽しい動きをしたほうは元気度がアップ。しょんぼりとした動きのほうは、実験前に元気だった人まで元気度が大幅に下がったという。
「どの国にも伝統的な『踊り』があるものですが、踊ることによってみんなで『楽しい気持ち』『嬉しい気持ち』『神聖な気持ち』などがコントロールできるということを、人は太古の昔から知っていたのかもしれません」(本書より)
この理論は他の大学でも検証されていて、5分間のダンスはストレスや疲労の解消に効果があるということもわかっている。もし変な踊りに抵抗があるなら、全力で飛び跳ねたり「キーーン!」と言いながら走ってみてもOKらしい。
もっと日常的にできることなら、「堂々と歩く」だけでもストレスホルモンは減少する。コロンビア大学のカーニーらの研究では、堂々とした姿勢=背筋を伸ばした姿勢でいると、「テストステロン」が増加するというデータが取れている。テストステロンは決断力や積極性、攻撃性などに関係するホルモンだ。さらに、ストレスホルモンである「コルチゾール」の低下も見られた。
背筋をシャンと伸ばすだけで、ストレスが減少しポジティブな気持ちになれる。落ち込んだり暗い気持ちになったときこそ、背筋を伸ばすように心がけたい。
そうは言っても、どうしても気持ちがノらないときもあるだろう。ノリが合わないが参加しなくてはいけない飲み会や、ゴールの見えない渋滞など......。どうしてもテンションが下がってしまう場面に直面したときに、その状況を楽しんだ者が人生の勝者だと堀田氏は言う。
ではどうすれば状況を楽しめるのだろうか。
「脳科学者で東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授によると、脳のやる気スイッチを入れるのは『なりきる』という方法もあるそうです。つまり、『楽しんでいる自分になりきる』ということです。自分は楽しんでいるのだと脳をだますのです」(本書より)
ノリの合わない飲み会では、あえてその場に溶け込んで「私はカメレオン俳優」と役者になりきる。渋滞にハマってしまったら、「いくら何でも混みすぎ! もう歌っちゃおうかな!」と「逆に楽しい」という方向に考え方を転換すると良いそうだ。
受け身ではなく、能動的に楽しもうとする。どんなことでも積極的に取り組むことで、楽しさはどんどん増していく。楽しくなれば、受けるストレスは最小限に抑えられるというわけだ。
反対に、「無理」「できない」「最悪」といった思考では積極的な行動はついてこない。ネガティブな思考になりがちな人は、「自分の中の切り替えフレーズ」を作っておくと良いと堀田氏は提案している。堀田氏が教わったのは、「ピンチ・ピンチ・チャンス・チャンス・ランランラン!」(ピッチピッチ チャップチャップ ランランランのメロディーで)などというもの。これくらいなら、すぐにでも実践できるのではないだろうか。
本書には、反対に元気を出すために「やってはいけない」習慣も紹介されている。先程ネガティブ思考はダメだと説明した通り、罵り言葉や人の悪いところに注目するような「ネガティブな行動」はもちろん、「やけ酒」もNGだという。もちろんNGな理由にもちゃんとエビデンスがあるのだが、詳細は本書で確かめていただきたい。
ちょっとした心がけと誰にでもできる行動で、毎日を元気に過ごせる"コツ"。全てを実践するのは難しいかも知れないが、できそうなことから少しずつ生活に取り入れてみてはどうだろうか。
『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』
著者:堀田秀吾
出版社:アスコム
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