海外のスパイらはかつて情報収集の重点を軍事や政治に置いていたが、近年は、民間企業の先端技術などにシフトしている。警察当局は、携帯電話の無線基地局やスマートフォンのタッチパネルに関する技術情報などの漏えい事件を相次いで摘発する一方、企業にも対策を取るよう呼び掛けている。
警視庁は2020年、在日ロシア通商代表部の職員らに唆され電話基地局などの社外秘文書を取得したとして、通信大手ソフトバンク元部長を逮捕。大阪府警も同年、スマホのタッチパネルに使われる技術情報を中国企業に漏らしたとして積水化学工業元社員を書類送検した。
21年には神奈川県警が、データベースサービス会社から不正に軍事関係の文献を入手し、ロシア通商代表部員に渡した疑いで、元調査会社の経営者を逮捕するなど、摘発が相次いでいる。
警視庁は同年、プロジェクトチームを設置し、捜査と並行して、スパイの手口や技術流出対策に関する情報を国内企業に提供する活動にも注力している。
警察庁もホームページの専用サイトで、サイバー攻撃や不正アクセスによる情報窃取のほか、スパイ工作や経済・学術活動を通じた技術流出のリスクを指摘。企業に対し、接点のない外国企業からのSNSを通じたメッセージ▽「お礼」名目のプレゼントやごちそう▽見知らぬ外国人からの声掛け―などに注意するよう呼び掛けている。
政府は外国勢力による情報窃取を阻止するための「スパイ防止法」の検討に着手。昨年5月には、「重要経済安保情報保護・活用法」が施行され、重要物資供給網の脆弱(ぜいじゃく)性などの機密情報を取り扱うことができる人物を政府が認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度がスタートしている。