『未来のムスコ』が映す“小劇場のリアル” 劇団 南極に聞く創作の裏側【ドラマTopics】

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2026年03月16日 10:02  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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大規模な商業公演とは異なり、小劇場を主戦場とする劇団は、限られた空間と予算の中で作品を立ち上げる。舞台美術や小道具の制作から宣伝、運営に至るまで、劇団員自らが担うことも少なくない。観客との距離が近いからこそ生まれる緊張感と熱量、そして“ないものをあるものとして”立ち上げる想像力――そこに小劇場演劇ならではの醍醐味がある。

【写真で見る】ドラマ『未来のムスコ』の劇中劇を監修した「劇団 南極」のこんにち博士さんが描く小劇場演劇の未来とは…

その小劇場演劇のリアルを体現しているのが、TBS系火曜ドラマ『未来のムスコ』で志田未来が演じる主人公が所属する劇団「アルバトロス」である。支えているのが、小劇場を拠点に活動する「劇団 南極」だ。

本作で劇中劇の監修を務めるこんにち博士さんは、まさにそうした現場の最前線に立つ一人である。劇団 南極で脚本・演出を担う彼に、創作の姿勢や劇団運営の実情、そして演劇という表現の本質について聞いた。

“作ること”を大切にする劇団のかたち

こんにち博士さんが語る劇団 南極の核にあるのは、「作ること」そのものである。

「創作、いわばクラフトのようなことが、劇団の今のテーマです。周りの方からもよく言っていただきますし、自分たちでも大切にしている部分です。想像すること、そして作ることそのものを、とても大事にしています」と力を込める。

言葉どおり、小道具も数多く劇団員自ら制作していて、「まずは自分たちで全部一度作ってみる、という姿勢を大事にしています」と強調する。

劇団 南極の雰囲気は和やかだ。劇団員10人は年齢も近く、それぞれが明確な役割を担う分業体制で運営している。

「脚本、演出、音楽、デザイン、ウェブサイト、SNS、会計など、役割を完全に割り振っています。基本的に演出家が主導権を握る劇団が多いですが、僕らの場合は状況によって主導権が入れ替わります。音楽なら音楽担当、デザインならデザイン担当が中心になる。分担しながらも、みんなで同じ方向を向いている感覚があります」と実情を明かす。

観客との“共犯関係”が生む舞台の熱

演劇という表現については、「“ないこと”が面白く、同時に難しい」と切り出す。

「今回『未来のムスコ』で劇中劇を作った時に、より強く感じました。映画やドラマは画面の中に映っているものが基本的に全てですが、演劇はお客さんがその場にいる。だからこそ、うそが見えやすい。どうしても作り込み切れていない部分も出てくるんです」。

その中で、場面転換の多い作品では、舞台上で“ないものをあるものとして”成立させなければならない。

「ないものをあるものとしてどう演出するかが、演出家や劇団の力の見せどころです。お客さんが一緒に想像しながら見る、“共犯関係”のような感覚。演者とお客さんが一つの画を共有する感じが、面白さでもあり難しさでもあると思います」と演劇の醍醐味を語る。

公演ごとに空気が変わるのも舞台ならでは。「初日は神経をビシビシと張り巡らせています。お客さんも緊張感を持って観に来られるので、何が起こるか分からないスリルがあります。ハプニングから生まれるグルーブもあれば、公演を重ねることで作品が成熟していく感覚もある。そこは映画やドラマとは違うところです」と語気を強める。

自身は初日の“ドタバタ感”も好む一方、観客としては千秋楽を好んで観ることが多いという。「お客さんによって初日が好きな方もいれば、千秋楽が好きな方もいる。公演期間の中で舞台が変わっていくところは、独特の魅力です」と目を細める。

“大きな物語”への挑戦と小劇場の現実

こんにち博士さんが創作において近年強く意識しているのは、「大きな物語」を描くことだ。

「小劇場では半径1メートルの物語、登場人物の心の機微を描く作品が主流です。それもとても好きですが、宇宙や恐竜のような大きなモチーフを扱う作品は減っているように感じます。だからこそ、自分が作るものはできるだけ大きな物語にしたいと意識しています」と展望を語る。

一方で、劇団運営には現実的な課題も横たわる。

「演劇はドラマや映画といった他のカルチャーに比べて観客の母数が少なく、限られた層を多くの劇団が取り合っている状況です。純粋に面白いものを作ることと、職業として生活を成り立たせることの両立には、依然として高い壁があります」と率直に打ち明ける。

演劇を商業化すれば安定は見込めるが、チケット価格を抑えたままでは難しさも残るという。「そもそも観劇人口が限られている。だからこそ、普段演劇を観ない人に足を運んでもらう必要があります。観劇人口を増やし、間口を広げることは、常に考えています」と課題を見据える。

演劇の“とっつきにくさ”をどう払拭するかも重要なテーマだ。

「難解な演劇にも面白い作品はたくさんありますし、僕自身はそれも好きです。ただ、南極はできるだけとっつきやすい位置にいたい。まずは演劇になじみのない方をフィールドに引き込み、そこから演劇の奥深さに触れるきっかけを作ることが理想です」と思い描く。

“この人と作りたい”という思いが物語を動かす

劇団 南極で脚本や演出を担うこんにち博士さん自身の原動力を尋ねてみると「人」だと答える。

「演劇というジャンルよりも、何かを作りたいという気持ちが原点にありました。劇団員や、他の仕事で出会うクリエイターやスタッフの方々と『この人と一緒に作りたい』と思う気持ちが原動力です」と胸の内を明かす。

脚本は俳優が決まってから書く“当て書き”を大切にしている。

「『泥沼惑星』(第1話)は俳優が決まりきっていない段階だったので想像を膨らませて書きましたが、『オーマイゴーマイウェイ』(第5話)はキャストの方々と実際にお会いした印象から、細部を当て書きで修正しました。その人自身の魅力や刺激を脚本に落とし込めるのは、演劇ならではの強みです」と手応えをにじませる。

最後に、劇団としての願いを口にした。

「『未来のムスコ』をきっかけに、演劇を全く知らない方が小劇場に足を運んでくださったらうれしいです。そして、せっかくなら『南極を観てみよう』と思っていただけたら、とても光栄です」と期待を込める。

ドラマの世界で描かれる劇団の姿は、決してフィクションの中だけの話ではない。小劇場の現場には、想像力と地道な手作業に支えられた創作の日常がある。こんにち博士さんの言葉は、その現実を静かに物語っていた。

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