2026年のARAアメリカ・ラリー選手権第2戦『ラリー・イン・ザ・100エーカー・ウッド(100AW)』にて、北米シリーズデビューを飾ったTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)の新兵器『GRカローラ・ラリーRC2』 この3月中旬に開催された2026年のARAアメリカ・ラリー選手権第2戦『ラリー・イン・ザ・100エーカー・ウッド(100AW)』にて、北米シリーズデビューを飾ったTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)の新型『GRカローラ・ラリーRC2』だが、続く第3戦『クボタ・オリンパス・ラリー』にヤリ-マティ・ラトバラのスポット参戦が決定。WRC世界ラリー選手権史上最多となる212戦に出場した“鉄人”の米国デビューがアナウンスされた。
同選手権でもっとも歴史あるイベントのひとつとして今季は4月17日から19日に開催されるラリーにて、40歳のラトバラは北米ラリーレイド界のスターであるセス・キンテロのフル参戦車両と並び、チームの用意する2台目のトヨタGRカローラ・ラリーRC2をドライブすることが決まった。
ここまでラトバラはRC2クラスの参戦車両開発に深く関わっており、このオリンパス・ラリーのステージ群に近いオリンピック半島の高速で流れるような林道など、すでに北米各地でテスト走行を重ねてきた。こうしたテスト走行の実施こそが、今回の米国デビューへの道を切り拓いたという。
「昨年、GRカローラ・ラリーRC2を北米で5回テストしたんだ」と、北米大陸のモータースポーツ専門サイト『RACER.com』に明かしたラトバラ。「その経験と、このクルマのポテンシャルを実感したことで、ラリーに参戦したいという気持ちが芽生えた。オリンパス・ラリーのコース周辺でテスト走行をした際、そのステージでの走りに感動した。そしてイベントの歴史と意義にも感銘を受けたんだ。だからこそ、このラリーに参加できたら素晴らしいだろうと思った。そして幸運にも、今回その機会を得ることができたよ」
今季のオリンパス・ラリーは、ワシントン州シェルトンを拠点とする同イベントが、1986年のWRC開催を実現してから40周年を迎える記念すべき大会となる。この3年連続開催の始まりに敬意を表し、大会主催者はオリンピック半島の鬱蒼とした森林地帯に広がる18のグラベルステージを含む、200マイル(約320km)を超えるSS競技ルートを設定。これは現代のWRCイベントに匹敵する距離となる。
「確かに、これは長距離ラリーだ」と続けたラトバラ。「そして、挑戦なのは距離だけではない。何が起こるかわからないし、私が聞いたところによると、オリンパス・ラリーのリスクは他のARAイベントよりもはるかに高いようだ。レッキの後、コース全体をよく見てどこを攻めるべきか、どのステージがタイヤにとってよりリスクが高いかを判断する必要がある。これは新しいプログラムであり、私たちはまだマシンの開発段階にあるため、完走して、ここでのレースから得られる経験と情報を最大限に活用することが重要なんだ」
このRC2仕様GRカローラは、昨年開催された東京オートサロン2025の最終日にサプライズ発表されたモデルから発展したもので、ラリー2仕様のGRヤリスから1.6リッター直列3気筒ターボエンジン、5速シーケンシャルミッション、前後ディファレンシャル、ブレーキ、サスペンションなど多くの主要コンポーネントを流用している。ただしGRカローラのホイールベースが長いため、このRC2は単なるヤリスのボディ変更版ではなく、ラトバラが説明するように、それぞれ独自の強みと特性を持つ。
「もちろん、共通する部分もたくさんある。ただホイールベースが長く、ボディも少し大きくなったカローラはGRヤリスほど俊敏ではないことがお分かりいただけるだろう。その一方でカローラは高速域での安定性が高く、スピードの出る広い道路では非常に快適に走行できる。私がこれまで見てきた限り、そして理解している限りでは、ARAのラリーはほとんどが高速で流れるようなステージ構成だし、カローラはそういったコースやドライバーが求めるフィーリングに非常に適していると言えるね」
カリフォルニア出身で23歳のキンテロは、前戦100AWでこのクルマのデビュー戦を任されると、ミズーリ州での初日を7位で終えた。しかし2日目のウォータースプラッシュで水しぶきを浴びて吸い込み、早々にリタイアを余儀なくされた。ただし吸気系とエンジンが乾いた後、キンテロは競技登録外でラリーに復帰し、最終ループを完走して貴重な走行距離とデータを蓄積した。
「セス(・キンテロ)はまだこのタイプのラリーに慣れていないことを忘れてはいけない」とWRC通算18勝を記録するTGR-WRTのチーム代表。「彼のスピードは非常に印象的だが、彼にとって最大の課題はペースノートに合わせて運転する方法と、ペースノートを作成する方法を習得することだ。これは大きな課題で、彼がペースノートに慣れるようにサポートすることがチームにとっても私にとっても最優先事項だ。そして先ほども言ったように、完走することが最優先事項であることを忘れてはいけない。それは私を含めて同じだよ」
そのラトバラ自身は現在もステージラリーに勤しみ、1993年仕様のセリカST185で2025年のFIAヨーロッパ・ヒストリック・ラリー選手権を制覇し、昨年のラリー・フィンランドではGRヤリス・ラリー2を駆り、WRC2クラスで僅差の2位に入った。
「オリンパスラリーでの目標は、フィンランドで感じたような良いフィーリングとスムーズな走りを再現することだ」と続けたラトバラ。「もちろん、このラリーは初めてだし、まだコースも見ていない。フィンランドのように20回も走ってコースを熟知しているわけではないし、限界に近づくのは難しいだろう。でも、まずはカローラの実力と他のマシンを比較して見極め、アメリカのドライバーのレベルや競争の激しさを肌で感じ、そこからステップアップしていきたいと思っている」
前述のとおり80年代に開催されたWRCイベントには、トヨタのワークスドライバーだったビヨン・ワルデガルドに加え、優勝したランチアのマルク・アレンのほかユハ・カンクネンらも出場していた。
「ユハやマルク・アレンとも話したよ。ふたりともラリー、とくにステージを楽しんだようだね。マルクは砂埃がひどかったと記憶しているようだけど、ユハが言うように40年も経つと細かいことはあまり覚えていないんだよね(笑)」とTGR-WRT代表代行を務めるカンクネンの言葉を暴露する。
「でも、彼らから話を聞けるのは本当にありがたいし、もちろん私自身もテスト走行をした経験があるから、少しずつイメージが掴めてきている。私にとって最初に思い浮かぶのはウェールズのステージかな」
今後6月にはテネシー州とケンタッキー州で、2027年のWRCアメリカラウンド候補地でのイベントも予定されており、ラトバラも北米の動向に注目している。
「言うまでもなく、アメリカは自動車メーカーにとって巨大な市場だ。近年のF1の成長ぶりやファン層の規模を考えると、WRCがアメリカで開催されることは非常に重要だと考えている。しかしWRCが発展していくためには、強力な国内選手権も必要不可欠で、両者は密接に関係しているんだ」とラトバラ。
「だから、今回オリンパス・ラリーに参戦できる機会を得られたことは本当に楽しみだよ。アメリカのラリー、そしてファンの雰囲気を肌で感じることは同じくらい重要だ。GRカローラ・ラリーRC2のプログラムを見れば、トヨタにとってアメリカのラリーがいかに重要かが分かるだろう。早く体験したいし、これは非常にエキサイティングな旅の始まりだと確信しているよ」
[オートスポーツweb 2026年04月02日]