「ビッグチームと肩を並べることができると信じている」前年の飛躍を経て迎えたアルピーヌ最終年にかける想い【フレデリック・マコウィッキ インタビュー】

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2026年05月07日 17:20  AUTOSPORT web

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フレデリック・マコウィッキ(アルピーヌ・エンデュランス・チーム) 2026年WEC第1戦イモラ
 長年在籍したポルシェを卒業し、新たな挑戦として母国フランスのアルピーヌへ2024年11月に電撃移籍を果たしたフレデリック・マコウィッキ。翌年のシーズンからアルピーヌA424のドライバーとしてWEC世界耐久選手権に参戦している彼は、さまざまなカテゴリーを渡り歩き、豊富な経験を持つベテランとしてチームのまとめ役のような立場でもある。そんなマコウィッキに今季2026年の展望について開幕戦イモラで聞いた。

―あなたかアルピーヌに加入してから、とくに昨シーズンはマシンのポテンシャルの向上やチームの雰囲気が良くなったように感じます。ル・マンでは2台揃ってフィニッシュし、イモラとスパで36号車が表彰台、富士では姉妹車の35号車が優勝を果たすなど飛躍が見えますが、今季に向けてはオフの間にどのようにことを行ったのでしょうか?

フレデリック・マコウィッキ(FM):まず、今年は新しいパッケージが導入された。(A424の設計)当初の計画では、ル・マンに焦点を当てたパフォーマンスを考慮し、最高速度を出すために空気抵抗の少ないクルマを作る予定だったのだが、実際のところでは少し方向性がずれたマシンとなってしまっていた」

「デュアルボンド(2段階制のBoP=性能調整)の登場で状況は一変した。だからこそ、マシンバランスを再調整し、ダウンフォースを増やすことが大きな課題となっていた。最終的にはエンジニアたちは良い結果を導いてくれたと思うし、僕たちはそれにとても満足している」

「しかし、どれだけパフォーマンスが向上したかを真に判断するには、テストベンチや実車テストだけでは分かりかねない部分も多く、実戦となるWECのレースウィークエンドを経験してこそ、それが初めてしっかりとした判断材料となるのは言うまでもない。予選と決勝レースを経て、僕たちが望むようなステップアップを果たせたのか、すべてのセッションでその能力を発揮できるようになったかどうか、まずは開幕戦後に明らかになるだろう」

⎯⎯あなたが過ごしたことのある日本での姉妹車の優勝には、手応えと今後の向上を感じられたのではないでしょうか。

FM:「確かに富士のような良いレースもあったし、調子の悪いレースもあった。2026年シーズンはもっと安定した成績を残してつねに上位グループに入り、自分たちが目指す場所に行けるということを証明したい」

「昨年はまだパフォーマンスにばらつきが見られたので、今季は全体的に安定したパフォーマンスを毎ラウンドで発揮できるようにすべきだと考えている」

⎯⎯オフシーズンにはシミュレーターにも多く乗り、テストも数多く行われていましたね。

FM:「シミュレーターは今や開発において非常に重要な役割を担っている。レースイベントに向けて準備し、マシンが期待どおりの性能を発揮できる状態にあることを確認するためには、マシンの特性をしっかりと理解する必要があるんだ」

「現状ではシミュレーターなしではさまざまプロセスの作業ができない。つまり、最初は適切な相関関係を確立するのに苦労し、非常に長いプロセスが必要だった。今はかなり良い状態になってきている」

「シーズン前に行っていた複数回のトラックテストも含めて、僕たちは昨年までのレースの復習を経て、前進している。すぐに大きな飛躍というよりは、一歩ずつ確実に進んでいくことを目指している」


■ミック・シューマッハーとの忘れられない思い出

⎯⎯2025年はジュール・グーノンとミック・シューマッハーという、とても深い絆と信頼で結ばれたチームメイトでしたね。今年はシューマッハーが抜け、新たなチームメイトを迎えましたが、ビクトール・マルタンスという新たなチームメイトはあなたから見てどんなドライバーですか?

FM:「去年の僕は本当に幸運だった。ミックが卒業したのは残念ではあるが、今年も素晴らしいラインアップで、正直にこの3人全員の雰囲気は最高だと思っている」

「ビクター(マルタンスの愛称)はとても若くて、機敏で、好奇心旺盛。彼はとてもポジティブなエネルギーをもたらしてくれて、僕たち3名はレースに向けて非常にうまく連携できていると思う。正直に言って、ドライバーとしては文句のつけようがないよ。ジュール(・グーノン)とビクターという本当に優秀なドライバーたちに恵まれていて最高だ」

⎯⎯あなたもとても可愛がっていたミック・シューマッハーですが、彼の新たな挑戦について、どう見ていますか?

FM:「インディカー・シリーズに参戦するとなると、それは壮大な挑戦だ。彼は覚えるべきコースがたくさんあるが、それはミックもしっかりと理解しているはずだ」

「とくにアメリカのコースは、どちらかというとオールドスタイルで、ミスをする余地はほとんどない。彼のレースへの取り組みや走りに対する追求は身近で見ていたので、僕はミックのことをちゃんと理解したうえで言うけれど、彼にはレーシングドライバーとしてのしっかりとした素質と才能があるので、きっとうまくいくと信じているし、それに関して疑いの余地はないと断言できる」

「結果が出るまでには少し時間がかかるかもしれない。しかし、すでにオーバルコースでの彼の予選での走りは非常に素晴らしかった。彼は才能を充分に備えているのだから、情熱を持ち続け、計画的に準備をしていつもように取り組めば、きっと成功するはずだと僕は確信している」

⎯⎯ミック自身から、あなたとジュールには深い信頼関係とかけがえのない友情を持っているという話を聞いています。

FM:「僕たちのトリオは本当にすごく良いコンビネーションで、ミックは素晴らしいチームメイトだったと思っている」

「世間的にはF1から来た彼をネガティブに報道するメディアもたくさんあったが、ミックがアルピーヌに加入した際に、彼は本当に謙虚だったし、初挑戦となる耐久レースでなんとしてでも良い成績を出したいと願っていたので、彼とジュールと一緒に立てた2024年富士のポディウムはとても嬉しく、忘れられない思い出のひとつとなった」

「だからこそ、彼のこの新たな挑戦での成功を心から願っている。彼がインディで活躍できない理由はない」


■2026年シーズン限りでプログラムが終了

⎯⎯昨年は35号車と36号車がル・マン24時間レースで念願の完走を遂げて、確かな手応えをやっと掴みはじめたことでしょう。

FM:「そうだね、完走を遂げられたことは本当に大きな前進になった。そこからシーズンオフには2026年へ向けての改善点の徹底的な見直しを行ってきた。つまり、今年は両方のマシンが完走し、両方のマシンが非常に良いパフォーマンスを発揮し、非常に良い結果を残すことにフォーカスを当てている」

「なぜなら、昨年は信頼性が非常に向上したおかで、2024年に比べるとはるかに良い結果を残せることが出来たのは満足していた。しかし最終的には、レース全体を通してのパフォーマンスという面では少し失望をしたのも事実だ。今年は本当に良い成績を残したいと願っているからこそ、上位に食い込み、良い結果を残せるようにすることを目標としている」

⎯⎯飛躍的なステップアップを遂げた2025年シーズンを経て、さらなる期待を背負う2026年シーズンの開幕直前の2月に、今季を持ってWECからの撤退という、信じられなく悲しいニュースに震撼しました。

FM:「僕がいま言えることは2点だけ。まず、最高の仕事をするためには、とにかくしっかりと今シーズンの活動に集中しなければならない。だからこそ、これはしっかりと明確にしなければならない重要なことなんだ」

「そしてふたつめは、チームに良いモチベーションを与え続けていたいと思っている。チームの皆が、一丸となって最高のパフォーマンスを発揮できるよう昼夜を問わず懸命に働いてくれている。だからこそ、このプロジェクトに携わるすべての人に敬意を表し、僕たちドライバーも彼らの尽力に応えるべく準備やレースに魂を込めてしっかりと挑まなければならない」

「良い結果を出すためには、つねに良い心構えが必要だ。それは絶対に間違いないと思っている」

⎯⎯アルピーヌとしてのWEC参戦最終年となる今シーズンの目標は?

FM:「表彰台や優勝を目指していると同時に、ル・マンでは可能な限り最高の成績を収めたいと願っている。ル・マンでの最高の成績とは、最終結果以上にレース全体を通して好成績を収めることだと僕は考えている。昨年は終盤に、短期間で非常に良いパフォーマンスを発揮できたシーンがいくつかあったので、それをさらに安定した状態でコンスタントに発揮したい」

「しかし全体的に見ると、当初は苦戦していた時期や状況がまちまちだったこともあった。だからこそ、今は『例えどんな状況に陥ったとしてもアルピーヌには解決策がある』と言えるようになった」

「僕たちは、つねにベンチマークとなるチーム、つまりフェラーリと肩を並べることができるようになれると信じている。今年のベンチマークが誰になるかは分からないが、フェラーリやトヨタのようなビッグチームとつねに肩を並べてコンペティティブになることが僕たちの目標だ」


■日本のファンに応援してほしい

⎯⎯ところで、昨年末にグーノンから、あなた方ふたりが十数年前に一緒に写った写真と昨年同じシーンで撮った写真を見せて貰いました。

FM:「当時のジュールはまだとても若く、フランスのポルシェカレラカップの育成ドライバーで、僕はポルシェのワークスドライバーだった。僕もその2枚の写真を改めて見ることができてとても嬉しかった」

「ジュールは当時、まだ数多くいる若いドライバーのひとりだったのだが、とても好奇心旺盛で、すでにポルシェのワークスドライバーとして仕事をしていた僕にたくさんの質問をし、本当にさまざまなことを知りたがっていたので、彼のことをよく覚えていたよ」

「当時まだあどけなかった少年が、この10年で成し遂げたことを誇りに思うべきで、素晴らしいキャリアを築き、スパ、デイトナ、バサーストなどで数々のビッグレースで勝利を収めてきて、いまや世界トップクラスのGTドライバーとなり、僕のチームメイトとなった」

⎯⎯そしてグーノンはあなたと一緒に写真を撮った日から「フレデリック・マコウィッキと、いつの日かチームメイトになることが夢になった」と言いました。

FM:「僕のキャリアの中で、ジュールと出会ったことは、最高の出来事のひとつだと思う。僕たちふたりは仕事上でも人間的にも本当にうまく連携できている」

「性格的にも多くの共通点を持っているとも思っている。レースキャリアでは大きな資金や後ろ盾のないまったくのゼロからスタートし、プロドライバーとして達成するためには、本当に懸命に努力したというキャリア形成の点でも似ている。僕と同じような道を辿り、そして夢を叶えた彼の存在を本当に誇りに思うよ」

⎯⎯グーノンはフランス人として、フランスメーカーのマシンをドライブし、あなたとともにいつの日かル・マンで優勝する夢を語ってくれました。

FM:「ル・マンの頂点……もちろん、全力を尽くすよ」

「本当にチーム全体で力を合わせ、士気をとても高めて日々の仕事をこなしているなかで、正しい位置にいないという理由はない。あとは僕たち次第なんだ」

「アルピーヌの活動は今シーズンが最後になる。だから、アルピーヌのドライバーとして僕の大切な日本のファンと富士で会えるのは最後になってしまう」

「しかし、シーズン最終戦まで僕たちは決して諦めずに全力で挑み続けるので、アルピーヌとして有終の美を飾れるよう今季も変わらず応援して欲しいと願っているよ。日本のファンの皆さん、富士で会いましょう。アリガトウゴザイマス!」

[オートスポーツweb 2026年05月07日]

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