
世界では人道支援に資金が集まらない一方で、軍事に費やす予算が増え続けています。中東など各地で戦禍が収まらない中、軍事力に頼る安全保障の持続可能性について考えます。
【写真を見る】出産10日後に戦闘開始…幼子を抱えて避難した母親
停戦期間中も続くレバノン攻撃 100万人以上が“過酷”な避難生活アメリカとイランの停戦期間中も続く、イスラエルによるレバノン攻撃。多くの建物が破壊されているレバノンでは、イスラエルによる攻撃開始以来、100万人以上が避難生活を余儀なくされています。
記者
「学校のホールでは、このようにテントが設置されていたり、テントがない家庭は布で仕切りを作って、皆さんこの場所で暮らしている」
カメラに寄ってくるのは、故郷を追われた子どもたち。出産10日後に戦闘が始まり、幼子を抱えて避難した母親も...
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避難者
「ここでの生活は本当に大変で、望むものが十分ありません。何と言えばいいのか、本当に過酷です」
多くの避難民が支援を待ち望む一方で、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が始まって2か月あまりとなる火曜、アメリカの戦費が日本円で4兆5600億円かかったことが明らかに。
1発45億円とされる迎撃ミサイル「SM3」は130発以上、1発4億円とされる「トマホーク」は1000発以上が使われたとの分析も出ています。
この状況に、ヘグセス国防長官が議会で追及を受けます。
民主党 アギラー下院議員
「いま弾薬不足が問題になっている。減った分を補充するために、どのような取り組みを行っているか?」
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アメリカ ヘグセス国防長官
「弾薬不足だという見方には反論したい。それは事実ではない。我々は任務を遂行するために必要な弾薬をすべて保有しており、今後もさらに弾薬を増やしていく」
さらなる軍備増強を明言するアメリカ。ほかにもイスラエルに対し、年間6000億円という多額の軍事支援も続けているのです。
軍事費増額で打撃受ける人道支援 国連は“不満”を吐露こうした莫大な軍事費が投じられることで、大きな打撃を受けることとなったのが、国際機関などによる人道支援です。
5月、ホルムズ海峡封鎖などの影響により、人道支援のための輸送コストが2割近く上昇したと国連の機関が発表。
UNHCR ウルフ報道官(1日)
「輸送コストが1ドル上昇すれば、現場支援を1ドル分減らすか、支援する人数を減らすことを迫られるのです」
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輸送コストだけではありません。UNHCRは世界中で紛争や迫害から避難を強いられた1億人以上の人々を支援。予算は前年から2割減らされ、日本円で1兆3000億円ですが、その予算の半分しか確保できない状況がここ数年続いています。
かたやアメリカは、戦闘からわずか2か月で5兆円近くをイラン攻撃に費やす現実。人道支援に後ろ向きの姿勢は、ことさらトランプ政権になって顕著になっています。
設立以来、世界約130か国で人道支援などを行ってきた、USAID(アメリカ国際開発局)。この組織に、トランプ氏は...
アメリカ トランプ大統領(2025年2月)
「急進的な狂人が運営するUSAID。私たちは彼らを追い出す。そして決断する」
大規模な人員削減を行ったり、USAIDが日本円で5000億円拠出予定だった開発援助などを停止するとしたのです。
国連で人道問題担当のフレッチャー事務次長は、アメリカだけでなくヨーロッパからも支援が落ち込んでおり、各国が軍事費増額に重きを置く姿勢に不満を吐露します。
国連(人道問題担当) フレッチャー事務次長(2025年12月)
「(各国の)予算が厳しいことは分かっている。しかし世界は防衛費に2.7兆ドル(428兆円)も費やしているではないか。銃とか武器とか、その1%強でも我々に回して欲しい」
専門家は本来、人道支援は軍事力と同等かそれ以上に“広い意味での安全保障”に貢献してきたと指摘します。
東京大学東洋文化研究所 佐橋亮 教授
「戦後の国際秩序において、各国への援助とか国際機関におけるリーダーシップとかルール作りというのは、狭い意味での利益ではなく、もっと大きな利益、戦略的利益にかなうものだった。だから人権重視でやってきた。しかしそれがすっぽり抜けて、まずアメリカが背を向けている」
そして、アメリカに限らず、いま多くの国が軍事力によって相手からの攻撃を抑止しようと躍起になり、人道支援をおろそかにしているといいます。
東京大学東洋文化研究所 佐橋亮 教授
「何にお金を使うべきなのか、どういう風にすれば世界の状況は良くなるのか。(軍事費だけでない)より広い投資というものが必要なのではないか。今の日本も含めた先進国の考え方はあまりにも(軍事力による)抑止一辺倒。
戦争を防ぐ、人々の状況を良くするのは決して(軍事力による)抑止、または戦争への対処だけでは終わらない。そこ(戦争を防ぐ)には外交努力もあれば、様々な援助が必要」
人道支援という形での安全保障。その意義を改めて考えるべき時が来ています。
