「ショウヘイって誰?」マイク・タイソンの発言が浮き彫りにした、大谷翔平人気をめぐる“世界とのズレ”

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2026年07月18日 09:01  日刊SPA!

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写真/産経新聞社
 大谷翔平は、本当に「世界的な」アスリートなのでしょうか。
◆「ショウヘイって誰?」マイク・タイソンの発言に波紋

 日本時間7月16日に開催された、アメリカスポーツ界のアカデミー賞とも称されるESPY賞での出来事が波紋を広げています。

 最優秀単一試合パフォーマンス賞のプレゼンターとして登場した、プロボクシング元世界ヘビー級統一王者のマイク・タイソンが、大谷翔平の受賞を発表した後、司会を務めたYouTuberのジェイク・ポールに「ところでショウヘイってどこのどいつだ?」とつぶやく動画が拡散されたためです。

 このニュースに、多くの日本人が憤っています。ネット上では、「そもそもタイソンをプレゼンターに起用したのが人選ミス」「この仕事を引き受けるなら事前に予習しておくべきだった」など、タイソンの姿勢を批判する意見が相次ぎました。

 一方で、「アメリカ全体で考えれば、大谷の知名度がそこまで高くないという現実を認めざるを得ない」という冷静な声も見られました。

 いずれにせよ、日本人にとって誇りの象徴ともいえる大谷翔平に対し、タイソンの率直な反応が冷水を浴びせたように受け止められたことは間違いないでしょう。

 ご存じの通り、日本では朝の情報番組が大谷の打席ごとに速報を伝え、夜になれば試合のハイライトが繰り返し放送されています。その一方で、アメリカでは「ショウヘイって誰?」という反応が起こり得る。このギャップをどう受け止めるべきなのでしょうか。

 そこで改めて、野球という競技、そして大谷翔平という存在を、少し引いた視点から見直してみたいと思います。

◆大谷翔平に対するアメリカと日本の“温度差”

 タイソン以前にも、大谷の知名度や人気について疑問を投げかけた人物がいました。アメリカ在住のタレント、野沢直子です。

 野沢は2023年8月16日に放送された『ナイツ ザ・ラジオショー』(ニッポン放送)で、大谷の人気を認めながらも、「野球好きな人は野球を見るんだけど、やっぱりアメリカはバスケとアメフト。そこらへんはキラキラしているけど、野球はそれに比べるとちょっと地味なスポーツという印象がある」「日本では毎日ショウヘイ、ショウヘイって言っているけど、温度差があるかな」と語りました。

 あれから約3年が経ちました。それでも今回、タイソンからあのような反応が出てきたということは、アメリカにおける野球、そして大谷翔平の立ち位置が、根本的には大きく変わっていないことを示しているようにも思えます。

 もちろん、大谷がアメリカの国民的娯楽であるメジャーリーグを代表するスーパースターであることは疑いありません。しかし、それが日本で語られるような「世界中にその名が轟く」というスケール感と完全に一致するかといえば、そこにはやはり温度差があるのでしょう。

◆アメリカでさらに存在感を強めるサッカー

 もっとも、近年はWBCの盛り上がりや全米中継の増加に加え、配信やマーケティング戦略の見直しもあって、今年のMLBの視聴者数は前年比44%増というデータもあります。

 しかし、その追い風が、長年続く野球人口の減少に歯止めをかけられるかといえば、依然として楽観はできません。

 実際、今回アメリカで開催されたサッカーワールドカップでは、給水タイムの導入によって実質的なクオーター制に近い演出が採用され、決勝では大規模なハーフタイムショーも実施されました。

 世界最大の競技人口を誇るサッカーが、アメリカ流のエンターテインメント性を積極的に取り込み始めたとも言える出来事です。見方を変えれば、アメリカにおいてもサッカーが存在感を一段と強める局面を迎えているのかもしれません。

◆マイク・タイソンの一言が日本人の心を揺さぶった理由

 そうした変化が起きているにもかかわらず、日本のスポーツニュースは相変わらず大谷翔平をトップニュースとして扱い続けています。

 もちろん、大谷の活躍が日本人に勇気や希望を与える明るいニュースであることは間違いありません。

 しかしその一方で、世界のスポーツ地図が少しずつ塗り替えられている現実から、目を背けているようにも映ります。いまの日本は、大谷翔平という一人のスーパースターに、自国の誇りまでも託してしまっているのではないでしょうか。

 だからこそ、マイク・タイソンの何気ない一言は、多くの日本人の心を揺さぶったのです。

 あの反応を単なる無礼として片づけるのではなく、日本と世界との認識のズレを映し出す出来事だったと受け止めることも、必要なのではないでしょうか。

文/石黒隆之

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。X: @TakayukiIshigu4

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