岡崎かのん、「音楽座ミュージカル」新作に初挑戦「自分自身と本当の意味で向き合う時間」

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2026年07月18日 14:10  クランクイン!

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クランクイン!

岡崎かのん  クランクイン! 写真:吉田沙奈
 1987年に結成して以来、数多くのオリジナルミュージカルを生み出してきた「音楽座ミュージカル」。8年ぶりとなる新作は、カーネギー賞とケイト・グリーナウェイ賞を同時受賞した児童文学『A MONSTER CALLS』の世界初ミュージカル化である『カイブツはささやく』だ。イチイの木の怪物との出会いを通じて自らの真実と向き合う少年の物語を、作中の舞台を現代日本に変えて描き出す。主人公・ヨナの母のキャスト候補である岡崎かのんに、新作への意欲や作品の魅力を語ってもらった。

【写真】岡崎かのん、過去の舞台写真に囲まれて 撮りおろしショット

■死の淵でも諦めない母役「全人類に見ていただきたい」

――まずは、この作品をご存知でしたか? 初のミュージカル化に対する思いもあわせて教えてください。

岡崎:知っていましたが、原作を読んだことはありませんでした。多くの方に知っていただいている作品だと思うので、プレッシャーもありつつワクワクしています。

――作品からどんな印象を受けましたか?

岡崎:音楽座ミュージカルにぴったりな作品というのが第一印象でした。作品のテーマが普遍的で、死生観もそうですし、人間が何を選択し、人生で何を感じ取って、受け取って生きていくかといったメッセージが散りばめられている。音楽座ミュージカルが届けたいものとリンクすると思います。また、主人公が13歳の男の子なんですが、すごく多感な時期で、自分自身の感情や気持ちにちゃんと気付けない時期は自分にもあったなと思いました。初めて気付く感情と向き合う様子にゾワゾワするというか、共感を覚えました。

――これから本読みなどが始まるということですが、現時点で役にどんな印象を持っていますか?

岡崎:私は今、お母さんの役をやっています。末期がんで死の淵にいるという役で、当事者になったことはありませんが、目の前に自分よりも大切な子どもがいる時、どういう生き方をするかすごく考えています。最後まで諦めずに生き続ける母親でありたいので、最後まで死にそうにない力強さを持ち続けられるかをポイントにしたいです。

――この作品をどんな方に届けたいでしょうか。観た方に持ち帰ってほしいものも合わせて教えてください。

岡崎:この作品は、全人類に見ていただきたいと思っています。というのも、大切な人を失う経験は必ず訪れます。その中で、お客様それぞれの視点と主人公の心が通じる瞬間があるんじゃないかなと。感情をうまく言葉にできないお子さんや若い方はもちろん、大人の方にも届けたいです。

 何を持ち帰ってほしいかについては、私たちも模索しているところです。でも、音楽座ミュージカルの全ての作品に通じるテーマとして、「生きていく中で何を選択し、悲しみも苦しみも乗り越えて自分の人生を生きていくかという希望」がある。それをお伝えできたらと思っています。

■「役者としてカンパニーにいること」こそが、自分自身と向き合う時間

――再演でもキャストや演出が変われば違う作品のような感覚だとは思いますが、新作をいちから立ち上げることについてはいかがでしょうか。

岡崎:作品の主軸を進めていく代表という大きな存在がいる中で、俳優一人ひとりが作品を創作していくのが、音楽座ミュージカルの一番大きな特徴だと思っています。今回は8年ぶりの新作で注目を浴びていると思いますし、YouTubeなどで新たなお客様にも注目していただいている中での新作なので、私たち一人ひとりの力量、作品にかける思いにかかっていると思います。

 また、すごく重たいイメージの作品ですが、時代に合わせてポップに楽しんでいただけるようにしたいねという話になって、役名も日本人に変えようということになったり。代表からの問いかけに対してみんなで考えて進める、ちょっと海外っぽい作り方だと思います。一人ひとりがクリエイターのような感覚です。

――台本を拝読しましたが、確かに役の名前や舞台設定が今の日本になっていて親しみやすかったです。

岡崎:新代表になってから、「今上演するからこそ、今のお客様に何を受け取ってほしいか」という意識が強くなっています。新作など、自由にアレンジができるものはすごく現代的な要素も入れていて、柔軟だと思います。

――映画化もされている作品ですが、ミュージカルになることによって生まれる新しさについて、現時点でいかがでしょう。

岡崎:楽曲ができ上がってきていて、重いシーンをポップに見せられるのはミュージカルならではだと思います。カイブツもすごく陽気に歌うので、すごく可能性を感じました。怪物とは言っていますが、怖い存在ではないので、もしかしたら皆さんが一番好きなキャラクターになるかもしれません。主人公に寄り添いつつ、ギャグを言ったりふざけたり、でも本質をついたり。お客様もクスッと笑える瞬間が生まれるんじゃないかと思います。

――主人公が「物語」を通して自分の本心と向き合って成長していく物語ですが、ご自身にとって、自分と向き合うための勇気を与えてくれるものはありますか?

岡崎:私は音楽座ミュージカルにいることがすごく勇気のいることというか、自分と向き合わないとここにいられないと最近すごく感じます。今上演している『マドモアゼル・モーツァルト』もそうですが、作品をやっていく中で本当に自分が掴めていないもの、見たくないものにも向き合わないと成立しない。役者としてカンパニーにいることが、自分自身と本当の意味で向き合う時間になっていると感じます。

■初のオリジナル作品「大変さと面白さを実感」

――音楽座さんはYouTubeでも制作過程などを赤裸々に発信しています。

岡崎:YouTubeは2026年の1月から始めたんですが、全くミュージカルを知らない外部のディレクターさんに撮っていただいています。私たちが「それって面白いの?」と思う部分も切り取ってくださって、「ミュージカルに興味がなかったけど観に行きたくなりました」と言っていただくことが増えました。逆にファンの方からは赤裸々すぎて驚かれました。もちろん全てお見せしているわけではないですが、ディレクターさん視点で面白いと思った部分にはNGを出さず、ありのままの姿を見せています。

――そこから興味を持った、まだ劇場に来たことのない方に向けて、この作品の魅力を伝えるとしたらどんなことになりますか?

岡崎:やっぱり「生」ということでしょうか。決められた演出とセリフがあっても、本当に毎回違います。稽古中はもちろん開幕してから結末が変わることもあって、その瞬間しかないものをお届けしています。今回もオリジナルを作っていく過程を皆さんにお届けすると思うので、興味を持っていただけたらぜひ勇気を持って観に来ていただきたいです。

――オリジナル作品は8年ぶりということで、岡崎さんがオリジナル作品にがっつり関わるのは初めてではないかと思います。

岡崎:ちょうど入団した時に『SUNDAY(サンデイ)』を作っている最中でしたが、入団した日にセットも組まれていたので「プロの現場ってすごい、こうやって稽古していくんだ」という感覚だったんです。今回の作品はオリジナルキャストとして参加するのもいちからの創作も初めてなので、大変さと面白さを実感しています。自分が作品をどう思っているか、シーンについて考えていることを話して一緒に作っていける環境はすごくありがたいです。

――入団からの8年で様々な作品に関わってきましたが、作品に向き合う姿勢の変化などはありましたか?

岡崎:かけ合いながら稽古が進むのは初めてのことだったので、自分の中に「こうしたい」という思いがないと舞台に立てない・役を演じられないという発見が一番大きかったです。俳優としては、言われたものを表現するのではなく、目の前の作品が自分にとってなんなのか、役をどう理解してどう表現したいかを考えて、自分の中にあるものと周りを掛け合わせて作っていくようになったのが変化だと思います。

――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

岡崎:音楽座ミュージカルの作品は、皆様の心に寄り添ってそっと背中を押すような、人生を生きていく上での温かい力になると思います。シリアスな原作を私たちがどう創作していくか、ぜひ劇場で体感していただきたいです。音楽座ミュージカルらしい尖った作品になると思うので、ぜひ楽しみにしていてください。

(取材・文・写真:吉田沙奈)

 ミュージカル『カイブツはささやく』は、10月11日に大田区民ホール・アプリコ 大ホール(大田区プレビュー公演)、12月11日〜20日に草月ホール(12月15日は休演日)にて上演。

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