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日本の公立小学校を舞台にしたドキュメンタリー映画が海外で大きな反響を呼んでいます。なぜ日本の当たり前の風景が世界から注目されるのか?作品を監督した山崎エマさんが自ら解き明かします。
「子供たちに責任を与え、大人が導く教育がない国が多い」「個人的には日本の小学校に通えば(どこの国の子供でも)日本人になれるんじゃないかと思っていて、それぐらい教育が統一されている国はなかなかないです」
『小学校〜それは小さな社会〜(英題:The Making of a Japanese)』で取り上げた日本の小学校教育について、山崎さんはそう語ります。同作の短縮版『Instruments of a Beating Heart』はニューヨーク・タイムズの動画配信サイトで公開され、今年の米アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門にノミネートされました。
山崎さんはイギリス人の父と日本人の母を持ち、大阪の公立小学校を卒業した経験を持ちます。そして成人後にニューヨークで働いていたとき、周囲より「がんばるときのスタンダードが上」であるという強みが小学校時代に培われたことを自覚したといいます。
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また海外での日本のイメージが「だいたい寿司とサムライとアニメ」という状況のなか、日本の本質を伝えるドキュメンタリーの舞台として小学校を選択。東京都世田谷区の公立小学校を150日間、4000時間かけて取材しました。
なぜ作品は海外で注目されたのでしょうか?
掃除や給食当番、黒板消し係、委員会活動などの生活面が教育の一環であるという、日本では当たり前のことがそもそも画期的だと受け止められているといいます。
「自分たちで自分たちのことをやる、子供たちに責任を与えそれを大人が導くという教育がない国が多いです」
「日本はなぜこうなのか」のヒントは小学校教育に詰まっている作品中に登場する運動会や音楽会など、本番に向けて何週間も練習を重ねる行事のあり方も特徴的だといいます。「力を合わせる練習をして、達成感を学ぶことが海外にはあまりない。教わるのではなく、自分たちで何かを体感して学んでいくやり方が日本ならではです」
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「特に欧米は個人の個性を作り、その次に周りの人とうまくやっていくことを教える。日本は逆で、まず集団の中での責任や役割、貢献が優先されて、次に個人を作っていく」
コロナ禍を経て「自分だけ大丈夫でも生きていけない」ことが諸外国で体感されたことも、協力や思いやりといった日本の教育の強みが評価されている一因かもしれない、と山崎さんは指摘します。
日本の教育も時代とともに変化しているそうです。「協力や思いやりは行き過ぎてしまえば同調圧力や連帯責任になってしまう。ただ私の時代と比べても、例えば1人の子供のために授業を止めて先生が対応したり、ほかの子供たちが待ったりと、個人を尊重する姿をたくさん見ました」
「この20年ぐらい、教育界が力を入れてきた子供たちの自己肯定感を上げようとした結果がこの映画に多く含まれていると思います」
小学校教育を考えることは日本の未来に直結している、と山崎さんは言います。
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「他人のことを放っておけない子供たちが日本は多いとされていて、私も自分の息子を日本の公立小に入れたいぐらいプラス面が圧倒的に多い。
そういう教育のプラス面に気づかず、全部を欧米風にしても日本はやっていけない。『日本はなぜこうなのか』のヒントは良くも悪くも小学校教育に詰まっていると思っています」
山崎さんは「日本社会を考える三部作」として前作で取り上げた高校野球、今回の小学校に続き、次回作は日本の大人たちを題材にした作品を構想しているということです。