妻のあざらしさん(63歳・写真右)と夫の上田さん(31歳・写真左)厚生労働省の人口動態統計によると、2019年の初婚夫婦の年齢差は、同年齢の21.0%が最も多い。次いで夫が1歳上で、同年代同士の結婚が多いことがわかる。
一方で、夫婦で10歳以上離れた「年の差婚」を選択する者もいる。ニュースで話題になる芸能人だけでなく、一般人でも存在するのだ。なぜ、その選択に至ったのか。一緒にいることで、周囲からどう見られるのか。
今回は、32歳差の夫婦であるあざらしさん(63歳・妻)と上田さん(31歳・夫)に話を聞いた。
◆ブログ読者からの“入れ知恵”で32歳差が発覚
——二人が付き合うことになったきっかけは何でしたか?
あざらしさん(以下、あざらし):2020年の8月、私がカフェに行った時に、たまたま同じお店にいた彼が、帰る時にスマホを席に忘れていたんです。彼に声をかけて、その日はそれで終わり。当時は私が58歳、彼は27歳でした。
その1週間後に、埼京線に乗っていたら「前の席に、長身のイケメンがいるな」と思って、よく見たら彼でした(笑)。お互いに「あ!あの時の!」と気がついて、たまたま降りる駅が一緒だったこともあり、LINEを交換したんです。
上田:連絡先を交換してから、毎日2時間くらい電話していました。話がすごく弾んで、9月にデートをすることになりました。
——その時は、あざらしさんが30歳差の58歳であることを知っていましたか?
上田:18歳差の45歳くらいかと思っていました(笑)。年が離れていることに抵抗はありませんでした。9月に付き合うことになった時も、お互いの年齢も知らないままでしたしね。
あざらし:年齢を知るきっかけになったのは、私が「彼氏は21時には寝るみたい」とブログに書いたら「それ既婚者でしょ。その時間以降は連絡するなってことだよ。だまされてるよ」とコメントが来たことでした。彼のことが信じられなくなって、お互いに運転免許証を見せ合うことにしたんです。
上田:このようにブログ読者のなかでもアンチが「あざらしさんのため」を装って、妻に変な入れ知恵をして、情緒不安定になることが何度もありました(笑)。
◆「どうせ介護で捨てられるよ」「子どもができなくてかわいそう」
——他にはどんな“入れ知恵”があったのでしょうか。
あざらし:「どうせ介護で捨てられるよ」「男が子ども欲しくなって捨てられるよ」というコメントも来ます。捨てられたら、捨てられたでいいもん(笑)。
「夜の生活は大丈夫なの? 週に何回してるの?」という心配や、「ブス、ばばあ、加工はずせ」という、面と向かって他人に言えないような声も届きます。
上田:今までアンチは女性が多かったのですが、フォロワーが増えて、最近では男性も出てきました。僕は顔を載せていないので「素顔さらせ、ばばあ好き」とか来ます。
「子どもができなくてかわいそう」というメッセージも多いですが、僕たちはすでに話し合って納得していることなので、他人から言われる筋合いはないですね。
——交際を告げた時、それぞれのご両親の反応はどうでしたか?
あざらし:母は喜びつつ、夫に向かって一言目に「あなた、こんな子どもも産めないような女でいいの?」でした(笑)。父はもう他界しています。私は地元を離れて長いので、家族の反応はあまり気になりませんでした。
上田:僕の両親はかなり驚きつつ、父は「ま、いいんじゃない」と言いましたが、母は「孫の顔が見れない」と猛反対しました。でも、産むのは別に僕じゃないですよね。母とはケンカになり、反対を押し切って、2022年12月24日に入籍しました。
◆「ゴールは結婚」周りの意見は聞かなくていい
——子どもを持たないなら、結婚せずに同棲のままでも良さそうですが……。
上田:一回目のデートから「この人は明らかに、今までの人と違う」と感じて、結婚を意識していました。年上女性って全員が成熟しているわけじゃなくて、ガキみたいな女性もいますから(笑)。
あざらし:私もゴールは結婚でした。ビジネスを大きくしたり、年に何回も旅行に行ったり、こういう暮らしをしたり……といった、二人で共通のビジョンがあったので。あとは病気になった時に、横にいれる関係がよかったんです。夫婦じゃないと病室に入れませんよね。
もし、その場限りのさみしさを埋めるだけの共依存で、将来は二人で何したいのか決まっていなかったら、結婚はしなかったでしょうね。
みなさんのゴールはどこか分かりませんけど、もしゴールが結婚なら、だらだら同棲するのはお勧めしません。私は結婚相談所(Mareal)を経営しているのですが、その中で、年下男性と同棲を続けても、いいように使われるだけの女性をたくさん見てきました。
年上女性はご飯を作って掃除をしてくれるので、男は居心地がいいから一緒にいるだけ。ある程度のところで捨てられます。私はすぐに結婚に至りましたが、もしそうなっていなかったら「1年間とか期間を決めて、結婚できないなら次にいく」というルールを作っていたと思います。
◆「お母様はこちらへ」アンチの言葉もパワーに変える
——年の差婚ならではのエピソードはありますか?
あざらし:携帯ショップでスマホを契約したとき「お母様はこちらへ」と店員に言われたことですね。さすがにちょっと傷つきました(笑)。
上田:「さっき、〇〇を歩いていましたよね?」と、SNSでよく来ます。外では手を繋いで歩いているし、年が離れているから、目につくんだと思います。
SNSだけでなく、やっぱり友達や身近にいる人からも色々と言われます。でも、周りの意見は一切聞かなくていいと考えています。未成年じゃないんだから、自分がいいと思ったことをすればいい。ごり押しすれば、勝手に認めてもらえますよ。強行突破して、納得させればいいんです。
結婚したら母も納得してくれました。僕たちは年の差生活をSNSで発信しているので、幸せそうな僕の姿を見て、気づいたんでしょうね。
あざらし:今では変な入れ知恵をされても、ブロックしたら秒で忘れるし、むしろアンチの言葉でパワーが出るので、情緒不安定になることもないので大丈夫です(笑)。
——周りの意見を気にせず、アンチの言葉もパワーに変えていく。これは他人の目を気にしがちな現代人にとって、幸せに生きる秘訣なのかもしれない。
<取材・文/綾部まと>
【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother