「普及してほしい」「ありがたすぎ」と話題…博物館の新スペース 担当者も驚きだった、想定外の需要も

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2025年05月21日 06:50  まいどなニュース

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九州国立博物館に登場した新施設、3つの小さな部屋があり…(提供:九州国立博物館)

「九州国立博物館に『あんしんルーム』ができます!」と、Xでのお知らせに、「嬉しい部屋」「普及してほしい…!!」「めちゃくちゃ優しい」など歓迎する声が続々。はたして「あんしんルーム」とは? 同館に取材しました。

【写真】外から見るとスタイリッシュな雰囲気

車椅子で入れる部屋、大きなクッションがある部屋、座り心地の柔らかそうなイスのある部屋に分かれ、「刺激に敏感な方が、気持ちを落ち着かせるため」として作られた「あんしんルーム」。「部屋があることで、あんしんして来館できる方が増えますように!」と期待が込められたスペースです。

その投稿に対して、
「イベントでぶっ倒れ経験のある私的には普及してほしい…!!」
「感覚過敏、パニック障害のある私には嬉しい部屋……」
「初めて行く博物館として最適」
「これありがたすぎ!!  美術館にもよく展示スペースに椅子とか置いてくれてるけど、鑑賞してると結構酔うんですよ!」
「美術館博物館で良い展示だと作品の力に負けて酔ったように気分が悪くなることがあるのでこういうのすごく欲しい」
「これ色んなところに設置して欲しいなぁ。人間多い所に行くと人酔いみたいになるから…」
と、ニーズに応えた“珍しい”部屋であることが分かります。

4月2日に運用開始した「あんしんルーム」の経緯と反響・反応について、九州国立博物館の企画課 教育普及の担当者・西島さんに聞きました。

「海外の施設を調査し、すぐに取り組めるものから…」

今回の投稿に、「#カームダウン」「#クールダウン」といったハッシュタグが付いており、最近徐々に広まっている「カームダウン・クールダウンスペース(ルーム)」と同じ目的を担った部屋です。

人が多く行き交い、騒音があるような公共の場で、静かに落ち着くための場所として必要性が広まってきており、空港や駅などの公共交通機関のほか、最近では『大阪・関西万博』にも。今回、九州国立博物館では、「あんしんルーム」という名に。

その経緯について、「当館は『誰もが楽しめる博物館』を目指して様々な取り組みを行っています。これまでは視覚障がい者や聴覚障がい者向けのプログラムを実施してきました」と西島さん。

例えば、視覚障がいや聴覚障がいのある人、それぞれに対応した展示ガイドアプリの提供や、視覚に障がいがある人とない人が対話しながら鑑賞するイベントなどが開催されています。

そういった取り組みを進める中で、他の障がいにも目を向けるように。「発達障がい者に関しての取り組みは2024年からとなります。2022年に私がシンガポールのアクセシビリティ(施設やサービスの利用しやすさ)の調査をした際、センサリーマップやカームルームを既に導入していることを知りました。すぐに取り組めるマップから進めていきました」。

センサリーマップとは、発達障がいや感覚過敏がある人が、事前に確認できるよう、館内の明るい、暗い、静か、混雑、大きな音がする、においがする…といった場所を記した地図(館内図)。同館では「あんしんマップ」と名付けられています。

なぜ「あんしん」という名前に?

福岡市発達障がい者支援センター(ゆうゆうセンター)に外部アドバイザーをお願いするなかで、マップだけではフォローしきれない情報がたくさんあることに気づき、博物館で体験することを写真とわかりやすい文章で説明した「あんしんガイド」も作成。

「発達障がい者の中には初めての場所への戸惑いや、光・音、人の多さなどの刺激で落ち着かなくなったり、パニックになったりすることがあり、そのような時に休めるカームダウンルームのような場所があるといい、というアドバイスをいただきました。そこで、あんしんルームを作った次第です」と、いずれも「福岡市発達障がい者支援センター」から監修を受けて進めていきました。

先行して作成した「あんしんマップ」「あんしんガイド」と統一するため、また監修者から「まだカームダウンルームといった名称は浸透しているとは言えない」と教わり、わかりやすいように「あんしんルーム」という名に。また、なじみがある人に向けて「カームダウン クールダウン」のピクトグラムも表示しています。

はたして、どんな部屋なの?

「あんしんルーム」は博物館1階のミュージアムショップの裏、入場無料の体験型展示室「あじっぱ」の横に設置され、エントランスからは隠れた位置に。

3つの部屋があり、「雪」は靴を履いたまま使え、車椅子でも入室可能。大きなクッションがある「月」は靴を脱いで使用。イスのある「花」では靴を履いたまま使用できるといったようにそれぞれに特色があります。

また、イヤーマフなどの気持ちを落ち着かせるグッズも自由に使え、部屋の照明の明るさは自分の好みで調整可。待合室には同伴者用のイスも配置。

予想していなかった反応も

今回の投稿でリアクションにあった、美術館・博物館などで情報量の多さで気分が悪くなった症状などについては、現時点で来館者からの報告はないものの、「SNSで『美術館や博物館で酔う』と多くの人が書かれていて、そういう方々にも需要があることには驚きました。想定外でした。『博物館疲労』という現象があり、その可能性が高いのではないかと思います」と西島さん。

「博物館疲労」は博物館などの文化施設の展示を見ることで、精神的・肉体的に疲れてしまうことを指し、発達障害や感覚過敏でない人も起こりうる状態のようです。障害がある人に配慮して作られた施設が、そうでない人にとっても役立つというのは、他のバリアフリー施設と共通していますね。

そのほかにも、「あんしんルーム、無香料であったら嬉しいです」と、においが気になるとXでのコメントがあり、そのことについて、「SNSでのご意見は伺っていますが、博物館側が来観者へ柔軟剤や洗剤に関してのお願いなどは特にしていません」としつつ、「あんしんルームにはにおいの要素は置いていません」とのことでした。

運用開始から日が経っていないものの、西島さんのもとに使った人からの反響が少しずつ届き始めているようです。

「実際に使った方からは『落ち着いた』『気持ちよかった。すごくいい部屋』『種類が異なる部屋があってよかった』などといったご意見をいただいています。SNS上での反応になりますが、『ありがたい』『いい取り組み』『他の場所にも増えてほしい』など多数のコメントをいただいています」

◇  ◇

九州国立博物館では、特集展示『煌めきの古伊万里 ―小郡C.C.コレクション』が2025年7月6日まで、特別展『九州国立博物館開館20周年記念 九州の国宝 きゅーはくのたから』が2025年7月5日から8月31日に開催。あんしんガイドの内容は本人用と同伴者用があり、ほかのバリアフリー情報とともに公式サイトで確認できます。

■九州国立博物館
住所:福岡県太宰府市石坂4-7-2
開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
特別展開催期間中の金曜・土曜は【夜間開館】9:30〜20:00(入館は19:30まで)
※閉館時間は変更の場合あり

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・谷町 邦子)

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このニュースに関するつぶやき

  • 美術館や博物館はソロ活派には嬉しい施設。素敵な装いで香水をたっぷりのマダムも割と多い。展示よりも残り香に途中で酔って気分が悪くなってしまった事も有る。有ると嬉しいスペースだ。
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