Googleは検索を“捨てていない” 「AIモード」投入、狙いは過去資産の徹底活用

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2025年05月23日 10:21  ITmedia NEWS

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 Googleの収益は、いまだ「検索」とそれにひも付く「検索連動広告」から生まれている。


【画像を見る】グーグルがアメリカで始めた「AI検索」がこちら(全7枚)


 2022年に生成AIが大きな話題になって以降、「生成AIはネット検索のエコシステムを揺るがす」といわれてきた。OpenAIなどの新興勢力に対し、Googleは後手に回っている……との見方はそこから生まれている。


 今回のGoogle I/Oで、同社は「AIによる検索新時代」をアピールした。その中核にあるのが、AIを使った検索モードである「AI Mode」だ。検索のユーザーインタフェースを大きく変えるものであり、「ついにGoogleが、既存検索からAIへ切り替えた」とも言われている。


 では、それは本当に正しいのだろうか?


 確かに大きな変化ではあるが、どうも捉え方はズレているのではないか。


 Google I/Oを取材し、同社検索技術トップのリズ・リード氏へもインタビューし、彼らの考えがわかってきた。


 Googleは本業である検索で、どの方向に向かおうとしているのだろうか? その点を考察してみた。


●AI Modeは検索、会話を楽しむものではない


 生成AIと検索の関係は、そんなにシンプルなものではない。


 Google・検索技術担当バイスプレジデントのリズ・リード氏は、「他のチャットbotと比較すると、多くの異なるユースケースに焦点を当てている。AI Modeは検索であり、会話を楽しみに行く場所ではない」と話す。


 生成AIベースのチャットサービスはいろいろなことができる。一方で、一番向いていないのが「知らないことを質問し、答える」ことだと言っていいかもしれない。1つの事実として、生成AIがそのまま検索エンジンを代替するのは難しいのは間違いない。生成AIになにかを尋ねても正しい答えが返ってくるとは限らず、いわゆる「ハルシネーション」はまだまだ多数ある。


 そこで、「生成AIがWebを検索してまとめ直す」「多数のWebへとアクセスし、その情報を考察してレポートにする」という方法が増えている。前者は「Perplexity」のようなサービスであり、後者はいわゆるDeep Searchである。GoogleはGeminiを持っており、Geminiで似たようなニーズに対応しようとしているものの、それは「検索」とは違うものだ。


 ユーザーの視点から見れば「大きなテキストボックスに文章を入力し、なにかの結果を得る」という意味では似た存在だが、求めるものはイコールではないし、アウトプットも同じではない。


 ではGoogleはどんなアプローチを採ったのか?


 1つは、2年前に「SGE」として発表され、現在は「AI Overview」として日本でも公開されている機能だ。こちらはネット検索をAIがまとめたものが一番上に表示される形であり、「従来のネット検索のまま、まとめを表示するもの」という形だ。


 現状精度に課題は見られるものの、利用は伸びているという。Google I/O の基調講演でも、アメリカとインドの数字を示し、AI Overviewの利用が伸びていることが説明された。


 次が、25年に本格展開がアナウンスされた「AI Mode」だ。こちらはAIチャットサービスと同じように答えがまとめられるだけでなく、一番下に「さらに質問する」テキストボックスが用意される。


 形としては異なるが、「双方がもたらす結果は似ている」とGoogleは説明する。


 それは「いままでより複雑な検索が行われるようになる」ということであり、「複雑な検索が行えると、人々はさらに対象に興味を持って検索する」という点だ。


 検索はすでに「キーワードベース」ではなく、文章での検索が可能になっている。ただ、AI Overviewではそこに複雑な答えをシンプルな見かけで提供可能になっているし、AI Modeではもっとしっかりした回答が出てくる。


 特にAI Modeは検索に特化したGeminiを使っており、質問を文脈で分けて複数のサイトを検索してまとめ直す。そのため、全体としてより精度の高い回答が得られる可能性は高い。


●深い検索の増加がアクセスを増やす


 前出のように、Googleは「AIがGoogleへのアクセスを奪っている」とは考えていない。AI Overviewは成長しているし、複雑な質問の増加はアクセスの増加につながっている可能性がある。


 リード氏はAIが検索に関わる利点を「深い検索の増加」と話すが、それは単に複雑な話題を聞く、ということに限らない。「Google Lens」や「Google Live」のような画像を使った検索も増えており、それもまた検索内容と回答の高度化につながる。


 さらに面白いのは「言語が情報の壁になってはいない」(リード氏)という点だ。


 AI OverviewやAI Modeは生成AIが関わるので、言語の壁を越えやすい。検索の結果として提示される内容として、別の国の言葉で書かれた文章が出てくることも多いのだ。また「外国語」という意味だけでなく、医学や経済などの専門文書についても「言葉が分かりづらい」という意味では状況が似ている。そこでAIによる解説・まとめが加わることで、情報へのアクセスは増加する。


 もちろんその場合、「正確である」ということが重要になる。AI Overviewも回答の質では課題を抱えているが、その点は現在も改善が続いているという。短時間での私見だが、AI ModeはAI Overviewよりもハルシネーション的な回答が少ないように感じた。


●Googleが蓄積したデータがAI検索でも生きる


 検索に特化したAIサービス、という意味で重要なのが、「Googleの持つ情報を活用する」という点だ。


 以下の画像は、AI Modeでまとめられたページの一部だ。Googleマップの情報が使われているのがお分かりいただけるだろうか。


 Googleは検索サービスとして、文章だけを探しているわけではない。画像やショッピング情報などを独自にまとめているし、Googleマップのようなサービス上では、地域・地点情報も集めている。現在のGoogle検索でもそれらの情報は使われているが、AI Modeでも同様に活用される。


 そういう積み重ねが存在し、さらにそこにはネット広告との連動もある。それは間違いなくGoogleの強みといえる。


 さらに、Googleには「Googleのサービスを持っている」「過去の検索履歴を知っている」という強みもある。これらは個人の文脈(パーソナル・コンテクスト)を知るための大きな手掛かりだ。


 といっても、Googleはパーソナル・コンテクストを自社や他社のために使おうとしているわけではなく、あくまで「あなた個人」のサービス向上に使う。


 AIとの対話による検索では、AIが自分のことをどれだけ知っているかが重要になる。同じ質問をしても自分のことを理解していなければ、たくさんの説明をしないと満足する答えが得づらい。


 しかし、過去の検索情報やメールの履歴などを踏まえることで、言葉を尽くさなくてもある程度の答えが得られるようになる。これは、家族や友人に相談するのと赤の他人に相談することの違いに近い。


 そのために利用履歴を蓄積するAIサービスも増えているが、Googleはそもそもこれまでの蓄積量が違うため、圧倒的に有利だ。


 このことは、今後どのような影響を生み出すのだろうか? 競争のためには強力なGoogleにまとまってしまうのは厳しい、という見方もあるだろう。一方で情報を守るには「シンプルな垂直統合が望ましい」という考えもあるだろう。


 どちらにしろGoogleは、これまでの「検索」を捨ててAIに飛び込もうとしているのではない。むしろ「過去の検索利用」「蓄積した検索に付随するデータ」「広告」「サービスアカウント数」といった価値を最大限に生かし、自分達のフィールドの中にAI検索を組み込む形を進めているのだ。その流れを支えるのは「AIで検索の量が増える」という同社が得た確信であり、Googleにとっての本業である「検索」の大きさであるのだろう。


 同時に、Googleのサービスとの連携が重要になり、検索だけでなくGeminiの価値が高まると、そこでは会員制サービス、いわゆるサブスクの重要性も高まることになるだろう。ある意味今後は、検索とサブスクのコンビネーションこそがGoogleのビジネス……ということになると予測している。



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  • 常に調べて深掘りする癖があるからAIに頼るってことあまりないんだよな。不必要な情報はいれないし。知識量が違うんだよ、君たち一般人とはね。
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