部下が突然退職→「補充すればいい」は危険な誤解! チームメンバーの離脱が与える「負の影響」

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2025年05月23日 21:20  All About

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部下の突然の退職。「補充すればいい」は危険な誤解かも? プロジェクトでの離脱は業務停滞、士気低下、離脱連鎖を招く致命傷に。管理職が知るべき、チームメンバーの離脱が与える「負の影響」について説明します。
部下の突然の離脱。「仕方ない」で片付けていませんか? プロジェクトにおけるメンバー離脱は、業務遅延やチームの士気低下を招き、負のスパイラルを生む危険なサインかもしれません。

20年以上プロジェクトマネージャを務めてきたプロジェクトのプロ・橋本将功さんの著書『人が壊れるマネジメント プロジェクトを始める前に知っておきたいアンチパターン 50』では、プロジェクトを失敗に導く陥りやすいマネジメントの落とし穴(アンチパターン)についてお伝えしています。

今回は本書から一部抜粋し、プロジェクトの成否を左右するチームメンバー離脱の深刻な影響と、その対処の難しさについて紹介します。

メンバーの離脱は深刻な問題になっている

プロジェクトの成功には、チームメンバーが安定してプロジェクトに関与し続けることが欠かせません。プロジェクトの進行中にチームメンバーが離脱する事態が発生すると、計画や進行に大きな影響を及ぼします。

しばしば「人が辞めても、その穴はいつかは埋まる」という風に言われることがありますが、これは定常業務などで穴を埋める工夫が繰り返し行われてきた業務に対し当てはまることであり、始まったら止めることが難しく、属人性が高い取り組みであるプロジェクトには当てはまらないことが一般的です。

特に、重要な役割を担っているキーパーソンが突然プロジェクトから離脱する場合、その穴を埋めるのは容易ではなく、最悪の場合、プロジェクト全体が頓挫して失敗に陥るリスクさえあります。

人手不足の昨今では、職種によっては確保にかなり時間や労力、費用がかかります。

たとえば、レバテック株式会社の「ITエンジニア・クリエイター正社員転職/フリーランス市場動向2023年12月」によると、プロジェクトマネージャーは中途採用の求人倍率が 29.5倍(1人の転職者に対して約30社が募集している状況)に上ると言われるほど、極めて採用が難しい状況にあります。

「チームメンバーの離脱による崩壊」は、多くのプロジェクトが直面する課題の一つであり、事業全体に波及することもあるため、計画段階から適切に対策を講じることが求められます。

チームメンバーの離脱が与える「負の影響」

チームメンバーの離脱がプロジェクトに与えるマイナスの影響は深刻で、そこから連鎖して複数の問題を引き起こします。

まず、最も直接的な影響として「業務の停滞」が挙げられます。離脱したメンバーが担っていたタスクが中断するため、その引き継ぎや再分配が必要になります。

離脱した人のポジションがプロジェクトマネージャーやチームリーダーであれば、その影響はチーム全体に及びます。

メンバーポジションの人材でも、専門的な知識やスキルが必要な業務の場合、そのメンバーが抜けた後に適切な後任を見つけるのは非常に困難です。

その結果、プロジェクトのスケジュールが大幅に遅延し、他のメンバーにも負担がかかります。

また、「チーム全体の士気の低下」も深刻な問題です。

信頼関係やタスクの連携が重視されるプロジェクトでは、特定のメンバーが離脱すると、残されたメンバーは大きな不安を抱えます。

離脱が他のメンバーにとっての追加業務負担を生む場合、その不満がさらに士気の低下を招き、悪循環に陥ることがあるのです。

このような状況では、プロジェクトに対する全体的なモチベーションが下がり、チームのパフォーマンスが著しく低下します。

さらに、「心理的な影響」も無視できません。

離脱したメンバーがチームメンバーから高い信頼を受けていた場合、その存在がいないことでチーム内に「このプロジェクトは成功しないのではないか」という悲観的な雰囲気が広がることがあります。

離脱の原因が組織やプロジェクトの意思決定に関する問題である場合、残されたメンバーも同様の問題を抱えている可能性が高く、それを食い止める「精神的支柱」となる人がいなくなると離脱が連鎖的に続くリスクがあります。

離脱するメンバーは本音を話さない

メンバーの離脱が深刻な影響をもたらす反面でその対処が難しいのは、離脱するメンバーが問題を正直に教えてくれるケースが必ずしも多くないからです。

業務負担などで離脱する人もいますが、信頼関係が失われたことで離脱する人は「本音」を話してくれるとは限らないのです。

特に本音を伏せて前向きな理由として離脱の意図が伝えられる場合は、組織側も「個人の人生上の新しいチャレンジ」として受け止めるため、本質的な問題が解決されずに事態が深刻化してしまいます。

プロジェクトの予算の大部分を人件費が占めることからもわかる通り、その投資効果を適切に発揮して成功させることができるかどうかは、チームや関係者の個々人の安定性に懸かっています。

メンバーやキーパーソンから離脱の兆候が出る前に、常日頃から士気が維持できているか気にかけておくことが求められます。

橋本将功(はしもと まさよし)プロフィール

パラダイスウェア株式会社 代表取締役 早稲田大学第一文学部卒業。文学修士(MA)。大学・大学院ではイスラエル・パレスチナでテロリズムの調査研究を実施。IT業界25年目、PM歴24年目、経営歴15年目、父親歴11年目。 Webサイト/ Webツール/業務システム/アプリ/ 組織改革など、500件以上のプロジェクトのリードとサポートを実施。世界のプロジェクト成功率を上げて人類の幸福度を最大化することが人生のミッション。著書に『人が壊れるマネジメント』(ソシム、2025)『プロジェクトマネジメントの本物の実力がつく本』(翔泳社、2023)『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』(翔泳社、2022)
(文:橋本 将功)

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