“出生数70万人割れ”の衝撃。若者の余裕のなさは「経済面だけの話ではない」

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2025年06月10日 15:51  日刊SPA!

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写真/PIXTA
’24年の国内の出生数が統計開始の1899年以降初めて70万人を下回り、合計特殊出生率も1.15と過去最低となった。わずか2年前の’22年に出生数80万人割れとなったばかりで、少子化は加速度的に進んでいる。国立社会保障・人口問題研究所は、’35年には出生数が60万人を下回る可能性もあるとしている。
◆少子化に歯止めがかからない現状

林芳正官房長官は記者会見で、「経済的な不安定さや仕事と子育ての両立の難しさなど、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている」と指摘したうえで「多くの方々の子どもを生み育てたいという希望が実現しておらず、少子化に歯止めがかかっていない」と話した。

39歳で出産を経験した信州大学特任教授の山口真由氏は、都会でも地方でも少子化が進む背景とその要因について語りつつ「女性の社会進出こそ少子化の原因という考えは捨ててほしい」と強調する(以下、山口氏の寄稿)。

◆「怒涛の30代」を過ごす女性たち

昨年生まれた子どもの数が初めて70万人を下回り、合計特殊出生率も過去最低の1.15となった。日本の少子化は地方でも都会でも進む。まず、3世代同居で子育てしやすいと喧伝される地方からは、実は若い女性たちが逃げ出し、出生数が激減している。逆に、そうした人々を惹きつける東京の出生率は2年連続で1を下回った。東京は全国平均よりも出会いが多く、そうやって結婚したカップルは子どもを産んでいる。だが、なんせ一人っ子が多いのだ。東京に住む子持ち世帯のなんと40%近くが一人っ子である。

その理由の1つが1人目を産む年齢だろう。東京の初産年齢は全国の中で最も高い。高学歴化した上にキャリア志向の強まった女性たちは「怒涛の30代」を過ごす。

失恋、転職や留学をぎゅっと詰め込んであっぷあっぷし、なんとか一息ついた39歳で初めて子どもを産んだ私自身も、その体現者である。だからといって、女性の社会進出こそ少子化の原因という考えは捨ててほしい。実際、専業主婦とキャリア女性の出生率は’18年に逆転している。子育てにかかる住居費や教育費に鑑みれば、2馬力でやっとというのが正直なところだろう。

◆若者世代に負担を押し付けない少子化対策とは

子どもにかつてないほどコストがかかるいま、必ずしも余裕がない若者世代にその負担を押し付けるのは酷ではないか。この“余裕”は経済面だけの話じゃない。私自身、30代までは一人時間を満喫したかったし、迷走するキャリアを立て直すのに精いっぱいだった。逆に、自分のためだけに邁進した日々があったからこそ、仕事に裁量ができ、飲み会にも飽きて日常がマンネリ化したいま、子育てという新鮮な経験に激しく消耗しながらも心から感謝できている。

寿命が延びた現代人は昔よりもゆっくりと大人になる。そう考えると、40代からがいまどきの子育て適齢期かもしれないのだ。だが、生物としての出産適齢期は昔と変わらない。もし、2つの適齢期を生殖技術の進化ですり合わせられたなら、少子化問題に新たな光が射すのではないか。

【山口真由】
1983年、北海道生まれ。’06年、大学卒業後に財務省入省。法律事務所勤務を経て、ハーバード大学ロースクールに留学。帰国後、東京大学大学院博士課程を修了し、’21年、信州大学特任教授に就任

このニュースに関するつぶやき

  • 1人の子宮持ちが、勉強して仕事に打ち込んで同時に子供を産むなんて、殆ど無理。大和民族存続の為に夢の全部か一部を諦めて、子供を産む事に専念して貰うしかない。
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