



もし自分の大切な子どもがこんな事故に遭ったら……。考えただけで鳥肌が立つし、相手のことなんて一生許せないでしょう。羽田さんのご家族は加害者を許せる心境になるまで、想像を絶するほどのたくさんの感情を乗り越えてきたはずです。


私は家族としておとなしく見守るのが最善であると、自分に言い聞かせていました。けれど「償い」という重しがズシンと肩にのしかかり、いつの間にかつぶされそうになっていました。そしてある日、決定的な出来事が起こるのです。





私の言葉はケンに届かなくなっていました。私が何を言っても、ケンは家族の気持ちじゃなく被害者である羽田さんの気持ちが最優先なのです。私だって別に彼女の気持ちがどうでもいいわけではありません。でも羽田さんが家族のペースに入り込んでくることにどうしても納得ができません。ケンが当たり前のように受け入れろと言ってくることには、嫌だという感情しかありませんでした。
ケンの過去を受け入れる、その罪を一緒に背負うと決意して結婚したはずなのに、結局私には覚悟が足りなかったということなのでしょうか。「もう無理だ……」それが私の出した結論でした。
【第11話】へ続く。
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