
「光熱費や保険料、いろんなものがじわじわ上がっていて不安……」
そんな声を多く聞くようになりました。物価が上がる“インフレ”は、日々の生活にじわじわと影響を与えます。特に、子育てや住宅ローンなど支出が多い世帯にとって、これは他人事ではありません。
これまで「なんとなく」で済ませていた家計も、今こそ立ち止まって見直すべきタイミングかもしれません。この記事では、インフレ時代に備えるための家計管理のポイントを、初めてでも実践しやすい形でお伝えします。
インフレは“気付かないうちに家計をむしばむ”
インフレとは、モノやサービスの値段が全体的に上がっていくこと。例えば、1年前は100円だったパンが130円になっていたり、電気代が月数千円上がっていたり。大きな変化ではないように見えても、1年、2年と積み重なれば家計への影響は大きくなります。ここ数年のインフレの厄介な点は、「給料が上がらないのに支出だけが増える」こと。つまり、知らないうちに“実質的な可処分所得”が減っていることです。
家計を「見える化」するだけで安心感が変わる
「家計簿は苦手……」という方も多いと思います。ですが、完璧な記録をつける必要はありません。まずはざっくりと、毎月、何にいくら使っているかを「見える化」してみましょう。自分の家計の“クセ”が分かると、意外とムダって見えてくるものです。
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・月々の手取り収入とボーナス
・固定費(住宅ローン、保険、通信費など)
・変動費(食費、日用品、外食、レジャーなど)
・貯蓄・投資に回せている金額
これらを把握するだけで、「何にお金がかかっているのか」「ムダはないか」といった改善ポイントが見えてきます。アプリやエクセルを使うのが苦手なら、紙に書くだけでも十分です。
今こそ「固定費の見直し」で家計に余裕を
インフレ下では、変動費(食費やガソリン代など)の節約には限界があります。それよりも、一度見直すだけで効果が続く「固定費」に目を向けましょう。例えば、以下のようなものがあります。・スマホ代:格安SIMに乗り換えると年間数万円の節約に
・保険料:家族構成や年齢、健康状態などを考慮し過不足なく整える
・サブスクリプションサービス(音楽配信、動画配信、定期購読など)の料金:なんとなく契約し続けているサービスを洗い出す
家計全体の中で固定費が占める割合は高く、ここをスリム化することで、将来のインフレにも強い家計をつくれます。
「貯める」と「育てる」の併用。お金にも働いてもらおう
これまで「お金は銀行に預けるもの」と思ってきた方も多いでしょう。確かに預貯金は元本が保証されていて安心です。
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こうした状況では、貯蓄とあわせて「投資」も取り入れることが大切です。例えば、毎月3万円貯められるなら、2万円は預貯金に、1万円は積立投資へ。NISA制度(新しいNISA)を使えば、非課税でコツコツ投資を続けられます。毎月1万円でも、10年20年と積み立てれば、資産を「育てる」力になります。
もちろん、リスクを伴う投資には慎重になるべきですが、学びながら少しずつ始めていくことが、これからの家計防衛には欠かせない時代です。そうすることで、リスクを抑えながら資産を育てていけます。
家計管理は「暮らしを守るリスクマネジメント」
家計管理というと「我慢」「節約」といったイメージを持つかもしれません。ですが本来は、自分と家族が安心して暮らしていくためのリスクマネジメントです。インフレで経済状況が変化してきた今、「これからの暮らし方」を見直すチャンスです。これを機に、家計管理を「習慣」として取り入れてみてはいかがでしょうか?
家計のこと、なんとなく後回しにしてきたな……という方も、この機会にほんの少しだけ、財布の中と向き合ってみてください。きっと、数年後の自分に感謝される一歩になるはずです。
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家計管理や節約を軸に、生活に寄り添った提案を行うファイナンシャル・プランナー。家庭科の教師としての勤務経験があり、赤字家計を脱出した自分の体験から、ユーザー目線でのアイデアを発信している。
(文:二宮 清子(ファイナンシャルプランナー))