米鉄鋼大手USスチールの買収手続きが正式に完了したことを受け、記者会見する日本製鉄の橋本英二会長=19日午前、東京都千代田区 米鉄鋼大手USスチールの買収手続きが正式に完了したことを受け、日本製鉄の橋本英二会長らが19日、記者会見した。橋本氏は「経営の自由度と採算性は確保されており、満足のいくものだ」と大型買収の意義を強調。また、「トランプ大統領の優れた判断に敬意を表したい」と述べ、今後米政府の協力を得つつ、新生USスチールの成長を目指す考えを示した。
買収総額は約141億ドル(約2兆円)で、日鉄はUSスチール株を1株当たり55ドルで買い取り、完全子会社化。これにより、約1年半にわたる買収劇が決着した。
USスチールは定款変更などの手続きの後、米政府に経営の重要事項に対して拒否権を持たせる「黄金株」を発行する。同株に議決権はないが、米政府は独立取締役1人を選任する権利を持つほか、本社や生産・雇用の国外移転、社名変更や設備投資削減などに米大統領の同意が必要となる。
橋本氏は、トランプ政権の高関税政策で「米国現地での事業展開の重要性はますます高まる」と買収のメリットを強調。黄金株については日鉄側から提案したと説明した。また、トランプ氏が日本の製造業の力を活用することが米鉄鋼業の再生につながると判断したことが買収実現を後押ししたとの認識を示した。
買収完了に先立ち、両社と米政府は、黄金株の発行や、日鉄が2028年までにUSスチールに約110億ドル(約1兆6000億円)を投資することなどを盛り込んだ「国家安全保障協定」も締結している。