大雨で家屋の周囲を流れる濁流=11日、熊本県玉名市 九州北部では10日から12日にかけ、日本海側に停滞する前線の影響で大雨が降った。一部自治体に大雨特別警報が発表された熊本県では、土砂崩れに巻き込まれるなどして2人が死亡したほか、熊本、福岡両県で計4人が行方不明になった。
気象庁は11日午前0時20分、熊本県玉名市と長洲町に大雨特別警報を発表し、朝になって八代市と宇城市、氷川町、上天草市、天草市を順次追加。その後雨の勢いが弱まったのを受け、同午後3時45分にこれら7市町すべて、警報に切り替えた。
熊本県などによると、同県甲佐町では11日午前4時すぎ、「車で避難しようとして土砂崩れに巻き込まれた」と通報があり、車内から女性と長女(4)、長男(1)の3人が救出された。午後1時半すぎ、車外にいた夫とみられる男性(57)が心肺停止状態で救助されたが、その後死亡が確認された。
同県八代市では11日午後0時半ごろ、「普通乗用車が用水路に転落している」と付近の住民から119番があった。車内にいた70代女性が心肺停止の状態で病院に搬送され、市によると、死亡が確認された。
熊本、福岡両県では10日から11日にかけ、川に流されて計4人が行方不明になった。熊本市北区では車両2台が流出。1台から1人が脱出したものの、もう1台に乗っていた男性1人の行方が分からなくなっている。同市南区でも同居する男性がいなくなったと通報があり、県警などが捜索している。
福岡県福津市の本木川では10日午後5時半ごろ、近隣住民から「高齢の男女2人が川に流された」と消防に通報があった。県によると、2人は同市に住む夫婦で、県警と消防などが捜索を続けている。
気象庁の立原秀一予報課長は11日午後の記者会見で、「東シナ海から前線や前線上の低気圧に向かい、非常に暖かく湿った空気が流れ込み続けたのが大雨の要因」と説明。前線が予想より南下しなかったため、熊本県で10日夜から断続的に線状降水帯が発生し、記録的短時間大雨情報が相次いで出された。
玉名市は11日午前8時10分までの12時間雨量が404.5ミリ、八代市は午前10時50分までの同雨量が385.5ミリとなり、いずれも観測史上最多記録を更新した。