
髪を引っ張ってしまった男性
「あるあるですよね。僕にも経験があります。僕が座ったあと、ドア脇に立った女性がやたらと頭を振るんですよ。そのたびに僕の目の前や頬に髪の毛が当たる。気持ちのいいものではありません。何度か声をかけたんですが、彼女、ヘッドホンをしていて聞こえていない。肩を叩こうとも思ったけど、座席脇の壁が高い。仕方がないので、次に髪の毛が襲来してきたとき、僕のバッグと座席脇の壁に挟んでしまいました」そう言うのはケンイチさん(39歳)だ。彼女は髪をはさまれて驚いたのだろう、怒ったような表情で彼のほうを見た。ヘッドホンをはずしてほしいとそぶりで示してから、彼は「あなたの髪の毛が僕の顔に当たるんですよ」と言った。
「彼女は僕を睨みつけ、そのまま降りていってしまいました。悪いのは僕なの? という感じでしたね」
飛行機の機内でも
彼は飛行機でも同じような経験をしたという。前の座席の女性が少し席を倒したのだが、そのときにわざわざ髪を上に上げてバサッと落としたのだ。「ちょうど飲み物が配られた直後でした。僕はたまたますぐに飲んでしまったけど、飲み物の中に入っていた可能性もある。僕だけではなく、彼女本人だって嫌でしょう、それは。オレンジジュースでべったりになった髪を想像して、ちょっと笑っちゃいましたけど。そんなふうに思う僕も意地が悪いけど、それだけ不快だったということです」
確かに髪の長い人は、自分が意図せずに他人に迷惑をかけているかもしれない。本人はおそらくそこまで想像が至っていないだろうけれど。
「混んだ電車の中でもありますよね。前の女性が振り仰いだわけでもないんだけど、冷房や暖房の風が急に舞って、髪の毛がバサーッみたいなことが。顔にベタッと貼りつきそうになって、うわっと叫んでしまったこともありました」
そのときは「ごめんなさい」と言ってもらったので少しは救われたとか。
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同性から見てもハラハラ
「同性から見ても、髪の毛問題、分かります。ハラハラすることがあります」タカエさん(33歳)の友人のユミさんは背中の真ん中くらいまであるロングヘアが自慢らしい。ただ、食事のときなどもそのままにしているので、タカエさんは何度も注意してきた。
「麺類などを食べるときも、ゴムで結ったりしないんですよ。かなりのロングだから多少、首を前に倒しても髪は流れてこないんですが、何度も顔を下に向けているうちには髪が背中から胸の方に流れてくる。ときにはスープにべったり入ってしまったこともあります。見ていて不快でした」
髪を結うとあとがつくから嫌なのとユミさんは言うらしいが、「それより一緒に食べている人間の気持ちを考えて」と言ったそうだ。
デートのときにも
「ユミはデートのときもその調子だったみたいで、付き合いだした彼が大阪出身だったのでお好み焼きを食べに行ったんですって。彼があっと叫んだときには、彼女の髪が焼きたてのお好み焼きにべったりくっついていたとか。それが原因ではないでしょうけど、その彼にはフラれたと言ってました。たぶん、一事が万事で、TPOをわきまえない女だと思われたんじゃないでしょうか」仕事のときも上司に仕事の進捗状況を説明しようとして、書類を見ながら前屈みになり、髪が邪魔で書類が見えなくなったとか、以前にはシュレッダーに髪が挟まれそうになったこともあるという。
「彼女の場合、どこか間が抜けたところがあって笑い話で済むことも多いけど、食べ物がらみは笑って済まないこともあると思う。基本的に他人が自分の長い髪を肯定していると思い込んでいるのが彼女の欠点なんですよ。私は彼女と仲がいいので、遠慮なくいつもそう言ってるんですが、なんだかまともに受け取ってくれないんですよ。みんな私のロングヘアを羨ましいと思っているはず、なんて感じているのかもしれません」
いつか彼女が、自慢のロングヘアでとんでもない目にあわなければいいがと、タカエさんはひそかに心配しているそうだ。
(文:亀山 早苗(フリーライター))
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