再審制度を見直す刑事訴訟法改正案の審議を傍聴する袴田ひで子さん=5月27日、国会内 再審制度を見直す政府の刑事訴訟法改正案は、9日の衆院法務委員会で参考人質疑が行われ、衆院審議がヤマ場を迎える。与党は12日にも委員会採決に踏み切り、衆院通過を急ぎたい考えだが、証拠の扱いを巡る野党との隔たりは埋まっていない。野党は並行して審議されている対案の受け入れを迫り、政府案修正の可能性を探る構えだ。
政府案は先月26日に審議入りした。手続き長期化の「元凶」とされてきた再審開始決定に対する検察の不服申し立て(抗告)は、自民党内での激論の末、「十分な根拠がある場合」を除いて原則禁止されることになった。
ただ、政府案では、裁判所が検察に証拠提出命令を出すケースは「相当と認めるとき」と限定的。証拠の一覧を掲載したリストは裁判所のみに提示され、弁護士には示されない。証拠の目的外使用を罰則付きで禁じる規定もあり、再審請求者や弁護士を萎縮させかねないとの懸念も残る。
これに対し、野党は「このままでは冤罪(えんざい)被害者の救済が遠のく」と批判。中道改革連合、チームみらい、共産党は、再審見直しを主導してきた超党派議連の見解に沿って(1)検察抗告を全面禁止(2)証拠は原則開示(3)証拠リストも開示(4)目的外使用は可能―とする対案を提出した。
法務省はこれまでの審議で、検察が「十分な根拠」がないのに抗告に踏み切れば「裁判所で棄却され、刑事訴訟法上違法となる。国家賠償の問題も生じ得る」と答弁した。これを受け、超党派議連メンバーの与野党議員からは「検察抗告は一定程度の抑制が担保された」との声が出ている。
このため、週明けからの与野党折衝では、証拠開示の範囲、証拠リストの扱い、目的外使用の是非が焦点になる見通しだ。
政府は「自民の事前審査で修正を重ねており、これ以上の修正はあり得ない」(法務省関係者)との立場。衆院では与党が4分の3の議席を占めており、政府案の修正は見通せないのが実情だ。このため、野党内では衆院では付帯決議で政府にクギを刺すにとどめ、与党の過半数割れが続く参院で与党に修正を迫るべきだとの声も出ている。
9日の参考人質疑では、静岡一家4人殺害事件で再審無罪が確定した袴田巌さんの姉、ひで子さんらが意見陳述する。与党は10日に高市早苗首相出席の質疑を行い、12日に衆院法務委で採決する日程を描いている。