「コンサートチケットの転売出品は権利侵害」 「チケット流通センター」巡り日本初の司法判断、STARTO社などが発表 今夏“公式リセールサイト“の立ち上げも

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2025年03月19日 19:33  ねとらぼ

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声明を発表したSTARTO ENTERTAINMENT

 STARTO ENTERTAINMENT(STARTO社)とヤング・コミュニケーション(YC社)は3月19日、「チケット流通センター」と「チケットジャム」の運営会社に関する対応を発表し、東京地方裁判所が「コンサートチケットの転売出品が権利侵害にあたる」との司法判断を行ったことを明かしました。STARTO社の調べによるとこうした判断は日本初とのことで、同社は「画期的な司法判断であり、YC社の長年の転売対策の努力が結実した結果」とコメントしています。


【画像で見る】「チケット流通センター」とは


●定価越えで数千件出品されていたコンサートチケット


 2025年2月17日に発表された「チケットジャム」の運営会社への発信者情報開示命令を求める申し立てと並行して、2024年11月28日付でSnow Manのコンサートチケットを転売出品していた16件を対象に「チケット流通センター」の運営会社・ウェイブダッシュに対して、情報開示請求を行ってきたYC社。


 「チケット流通センター」では、複数のSTARTO社契約タレントのコンサートチケットが定価を超えた金額で数千件出品されていたことから、チケットの定価をウェイブダッシュに伝えたうえで当該コンサートに関する出品の全件の削除を求めたところ、「いずれにも応じられない」との返答だったことから東京地方裁判所に発信者情報開示命令を求める申し立てに踏み切ったといいます。


●日本初「コンサートチケットの転売出品は権利侵害」との司法判断


 YC社は「タレント及びコンサートに足を運んでくださるファンの皆様を守るため、長年にわたって様々な転売対策に取り組んでおりました」とし、それらの経験をもとに、今回の発信者情報開示命令申し立てでは、「本人しか利用できないチケットを転売出品することはイベントに入場資格のない人物を入場させようとする行為でありチケットの無効化や本人確認の強化等の負担が生じる業務妨害にあたり、YC社の営業権を侵害する」ことなどを申し立ての理由としていました。


 こうしたYC社の申し立てについて東京地方裁判所は「本人しか利用できないチケットの転売出品がYC社の営業権を侵害するもの」として、16件全ての転売出品に対して2025年3月10日付で発信者情報開示命令が発令されたとのことです。


 今回の裁判所の判断についてSTARTO社は「日本で初めて(当社調べ)コンサートチケットの転売出品が権利侵害にあたると判断された画期的な司法判断であり、YC社の長年の転売対策の努力が結実した結果と言えます。本来入場できない人物をチケット購入者本人あるいは同行者のふりをして入場させようとする行為に繋がる転売出品は、様々な業務妨害を引き起こすものとしてコンサート主催会社に対する権利侵害であることが明らかにされました。YC社の長年の取組によって出された今回の判断は、同じような転売問題を抱えるイベント業界全体にとっても解決策を示すものになったと考えます」とコメントしました。


●今回の司法判断のポイントは


 STARTO社・YC社側で今回の申し立てを行った東京フレックス法律事務所・中島博之弁護士はねとらぼ編集部の取材に対し、チケット不正転売禁止法ではこれまで、本人しか利用できないチケット(特定興行入場券)を、「業として定価を超えて有償譲渡まで行うこと」で初めて取締できることとなっているため、摘発のハードルが高いものだったと説明。


 「今回、本人しか利用できないチケットを転売する出品行為自体が権利侵害と認められた点が画期的な司法判断だと言えます」とコメントしました。


 また、「今まで、チケット転売の違法性が裁判で正面から争われた事例はないと思われますが、(他人名義の定期などを使用して電車に乗車する)キセル乗車と同じで、本人しか利用できないチケットを第三者が使って本人のふりをしてサービスを受ける・イベントに入場すれば、イベント主催者への業務妨害になるだけでなく電子計算機使用詐欺あるいは詐欺罪にもなりかねません。このような犯罪にも繋がりかねない転売出品が主催者への権利侵害と判断されたわけですから、今後は出品行為に着目して各業界の転売撲滅への取組が劇的に進む可能性も期待できます。YC社の長年の転売問題に対する取組がまさにチケット転売問題の闇を照らす事例になったのではと思います」としました。


●転売を反省していた人に対して「チケット流通センター」側が驚きの対応


 またSTARTO社によると、今回の裁判の過程でウェイブダッシュ側は法律に基づき、出品者(転売者)に情報開示に関する意見照会を行っており、その過程で「転売を反省して情報開示に同意した人物がいたにもかかわらず、裁判手続上でそのことを明らかにせずに全件開示を拒否して争う姿勢を維持した」とのこと。


 YC社も「転売を反省して開示に同意する人物と開示を拒否して転売が合法と主張するような人物との扱いに当然差異をもうける予定でしたが、運営会社側の対応によりそれが不可能となりました。転売を反省している人物が情報開示に応じてコンサート主催会社側と和解などの解決を希望していると思われる状況にもかかわらず、チケット転売サイト運営会社がそれを妨げるようなことはあってはならないと考えますので、この点についても抗議する予定です」とコメントしています。


 なお開示された人物に対しては「本人の反省度合いなどを参考にしながら法的な責任の追及を行う」としています。


●さらに4342件を情報開示請求、初の公式リセール準備も


 STARTO社とYC社はウェイブダッシュ側の対応に加えて、チケットの不正転売対策対応をさらに推し進めるとして、2025年2月末までに「チケット流通センター」で特に多くの転売出品が確認されたSTARTO社の契約タレントのコンサートチケット4342件について情報開示請求を行いました。


 STARTO社とYC社は「『チケット流通センター』や『チケットジャム』などのチケット転売サイトでコンサートチケットが大量に転売されることで、本来入場することができない人物がコンサート会場に多数来場することになります。そのことに起因して、入場時のトラブルや開演の遅れ等が発生したり、本人確認を強化する必要が生じたりするなど、YC社への業務妨害だけでなく、正規の来場者であるファンの皆様にもご不便をおかけする事態が発生しております」とコメント。


 「当社契約タレントに関するチケットの販売規約上は、転売を試みた時点で当該チケットは無効となり、転売されたチケットを購入してもコンサート会場に入場することはできませんので、この場で改めて注意喚起いたします」としています。


 またYC社は、やむを得ない理由でコンサートに行けなくなった人を対象に、 希望する別のユーザーへ定価でチケットを譲れる“公式リセールサイト”を今夏立ち上げる予定で準備していると発表。


 STARTO社は「1人でも多くのファンの皆様に違法ではなく、適正な方法でチケットが行き渡るように、当社は引き続きYC社に協力してまいります」とコメントしています。


●STARTO社・YC社の開示請求を巡り、対処法を売る悪質ユーザーの存在も明らかに


 STARTO社・YC社の開示請求が進む中、過去にチケットを転売してしまった人たちがグループチャットに集まって対応を話し合うといった動きも確認されています。


 そんな中、XなどのSNSでは「PayPay」などの決済サービスで金銭を送ってくれた人に「集まった情報を流す」「(開示請求先への連絡の)文書を考える」というユーザーも登場しました。


 こうした行為は、弁護士ではない者が報酬を得る目的で法律相談を行ったり、代理人として交渉を行ったりする「非弁行為」に該当する可能性があるほか、新たなトラブルの火種となる可能性が十分考えられるため、安易な接触は控えたうえで誠実に対応することが解決への近道となりそうです。


(Kikka)



このニュースに関するつぶやき

  • ま、まだ地裁判断だからな。私が言っている通りの判断ではあるが。
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