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コメ価格の高騰が続く中、「ふりかけ」市場が拡大している。日本食糧新聞社によると、2021年の市場規模は364億円だったが、2024年は416億円と、過去最高を更新した。
中でも、今年で発売65周年を迎えた「のりたま」を販売する丸美屋食品工業(以下、丸美屋、東京都杉並区)は25期連続増収を達成するなど好調だ。なぜ、業績を伸ばし続けられるのか。
丸美屋の売上高(2024年12月期)は、674億6800万円を記録。主力商品の業績を見ると、「ふりかけ」が259億円(前年比6%増)、「中華」が143億円(同5%増)、「釜めしの素」が58億円(同1%増)と各カテゴリーが伸びた。
堅調な業績を維持する背景には、コメ価格の高騰を含む物価上昇がある。「節約志向の高まりを受け、コストパフォーマンスの高い商品の需要が伸びている」と同社マーケティング担当の濱田洋平さんは分析する。詰め替えタイプの「ふりかけ」やおにぎり・混ぜご飯の素などが売れた。
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また、丸美屋によると、ここ2年ほどでふりかけの購入層が広がっているという。新規購入者は安心感のある商品を選択する傾向があり、「のりたま」や「味道楽」などの知名度の高いブランドが選ばれやすい。
●幅広い商品展開と豊富なラインアップ
丸美屋が業績を伸ばしている背景に、消費者の節約思考だけでなく、同社が築いてきた事業基盤も挙げられる。最大の特徴は、多角的な商品展開だ。
「丸美屋といえばふりかけ」というイメージもあるが、麻婆豆腐の素や釜めしの素、レンジ調理食品まで幅広い商品を扱っており、新商品の投入数も年間70〜80品に上る。仮にふりかけ市場が低迷しても、他のカテゴリーで補い、売り上げを確保できる体制が整っている。
消費者の認識も変化しており、かつては「手抜き」とみなされることもあったレトルト製品が、現在は「便利な調理料」として社会的に受け入れられるようになった。この認識の変化も、同社の安定した業績を支えている。
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ふりかけ・中華料理の素など、ロングセラー商品の基盤がしっかりしているからこそ、新商品開発や新たなカテゴリーへの挑戦が可能になっている。同社広報の青木勇人さんは「ロングセラー商品があるからこそ、新商品も安心して購入されるブランドになっている」と説明する。この好循環も増収を支える重要な要素だ。
また、「おいしさ」にもこだわり、差別化を図っている。いくら安くても、おいしくなければ続けて購入してもらえない。丸美屋では、ふりかけは約100種類のラインアップを展開し、飽きのこないおいしさを提供。リピーターの確保に力を入れている。
●65年間愛され続ける理由
丸美屋の定番商品である「のりたま」は、2025年に発売65周年を迎える。発売当時、高級素材だった海苔と卵をもっと手軽に食べてもらいたいという思いから開発され、支持を集めた。
時代とともに海苔や卵の位置付けが変化する中でも売れ続ける理由について、濱田さんは「生活のスタイルに溶け込んでいるから」と分析する。保存性が高く、安価で、保管にスペースを取らず、なにより調理不要で白いご飯にかけるだけというコスパとタイパの良さが、現代のライフスタイルに適合している。
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また、のりたまは時代に合わせて変化し、これまでに8回のリニューアルを実施している。塩分を減らしたり、卵の風味を強化したりとマイナーチェンジを重ね、その時々の消費者ニーズに応じて調整を行ってきた。
現在、のりたまの売り上げは約60億円。1食分(2.5グラム)に換算すると、年間7.2億食分が消費されている計算になる。商品数が多い丸美屋の中でも、「全国的に愛されている」(濱田さん)という言葉の通り、地域による偏りもなく支持を集めるロングセラー商品となっている。
1月には、65周年を記念して「ひよこのかまぼこチップ」が入ったのりたまを発売した。子どものふりかけデビューのきっかけづくりを意図したところ、子育て世帯から反響が集まり、販売数も好調に推移しているという。
●ふりかけ需要は堅調に推移
一方で、国内におけるコメの消費量が減少傾向にあり、ご飯のお供を提供する丸美屋にとっては課題として映る。しかし、長期的なデータを見ると、コメの消費量が減少する中でもふりかけ市場は堅調に推移している。
「かつては白いご飯自体がご馳走で、少しのおかずでご飯を何杯も食べてお腹を満たしていた。食が多様化し、白ご飯だけで食べる人は減ったものの、何かで味付けして食べたいというニーズが増えている」と濱田さんは分析する。
白ご飯の食数自体が減っても、ふりかけを使う比率が上がれば、ふりかけの需要は維持できるという考えだ。また、近年は「わさび系のフレーバー」など、大人の嗜好(しこう)に合わせた商品が好調だという。
また、単身世帯が増えているため、孤食ニーズへの対応も強化している。今後は、電子レンジで温めるだけで食べられる調理済み総菜や、ご飯とセットになった丼商品などの開発に注力していくという。
丸美屋は、2025年12月期の売上目標を683億円(前年比1%増)に設定し、26期連続増収を目指す。コメの高騰や食の多様化という環境変化の中でも、「おいしさ」を基本に据え、時代のニーズに合わせた商品開発を続けていく方針だ。
(カワブチカズキ)
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