ソニーもパナも変わる中、三菱電機が「家電」を続ける理由

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2026年06月06日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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三菱電機、なぜ家電を続けるのか

 日本の電機メーカー各社が、中国・韓国勢との激しい価格競争や事業構造の転換を理由に、次々とB2C(個人向け家電)事業から撤退、あるいは縮小しています。ソニーはエンターテインメントと金融の会社へと変貌を遂げ、パナソニックは車載電池やサプライチェーン管理などのB2B領域に重心を移しつつあります。


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 そんな中で、三菱電機は非常にユニークな立ち位置を堅持しています。同社は人工衛星、発電設備、エレベーター、ファクトリーオートメーション(FA)といった巨大インフラ事業を中核に据えながらも、冷蔵庫や炊飯器、エアコンといった家電を現在も重要な主軸事業の一つとして位置付け続けているのです。なぜ三菱電機は家電にこだわり続けるのか、そのビジネスモデルと戦略を解説します。


 三菱電機の歴史は、1921年に三菱造船(現・三菱重工業)の電機製作所が独立したことから始まります。当初から発電機や電動機といった「重電(重工業系電気機器)」の技術に強みを持っていました。


 このインフラ・産業向けの高度な技術を家庭用製品に転用する技術の垂直展開こそが、三菱電機の家電の源泉です。例えば、同社の象徴的な製品であるエアコン「霧ヶ峰」シリーズに搭載された、人の体温を感知する「ムーブアイ」などのセンサー技術は、産業用ロボットや高度な計測機器で培われた知見がベースになっています。


 ソニーやパナソニックと三菱電機の決定的な違いは、その市場戦術にあります。三菱電機は、テレビやスマートフォンのように流行の移り変わりが激しく、価格競争に陥りやすい製品からは早期に距離をおきました。一方で、生活に密着し、かつ技術力の差がユーザーに伝わりやすい「白物家電」にリソースを集中させました。


 炭を削り出した内釜という、量産には不向きだが圧倒的な食味を追求する炊飯器の「本炭釜」シリーズや、解凍の手間を省く独自の温度制御技術「切れちゃう瞬冷凍」を採用する冷蔵庫などは、「高くてもいいものが欲しい」という高付加価値層を狙った“ニッチトップ”戦略の象徴です。


 三菱電機が家電を続ける最大の理由の一つはブランドイメージの維持です。人工衛星や発電所は社会にとって不可欠ですが、一般消費者がその恩恵を直接「三菱電機のロゴ」とともに実感する機会は多くありません。キッチンやリビングに三菱電機の製品があることは、企業ブランドを一般家庭に浸透させる重要な鍵となっています。


 また、近年のスマートハウスの進展により、家電の役割は変化しています。エアコンや給湯器(エコキュート)は、エネルギーマネジメントという観点で見れば、住宅というインフラの末端デバイスです。三菱電機が得意とする電力制御技術や省エネ技術を家庭内で完結させるためには、家電という出口を持っていることが大きな強みとなります。


 三菱電機の家電部門は、インフラ事業に比べて利益率が劇的に高いわけではありませんが、安定した買い替え需要が見込める収益源として機能しています。ビル空調(B2B)と家庭用エアコン(B2C)でコンプレッサーやモーターの基幹技術を共通化できるため、開発・生産コストの最適化が図りやすいという構造的メリットもあります。


 三菱電機は極めて着実に、伝統的な電機メーカーとしての形を守り続けています。それは保守的であるという意味ではありません。むしろ、インフラというマクロな視点と、家電というミクロな視点の両方を持つことで、エネルギー効率の最適化や長寿命な製品づくりという、現代のサステナビリティ(持続可能性)の要求に正面から応えようとしているのです。


 「家電は三菱」という信頼を支えるのは、日本の屋台骨を支える重電技術である─この硬派なバックボーンがある限り、三菱電機にとって家電事業は、今後も手放すことのない三菱ブランドの象徴であり続けるでしょう。


(安蔵靖志)


※この記事は、書籍『家電ビジネス』(安蔵靖志/クロスメディア・パブリッシング)に、編集を加えて転載したものです。



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  • 三菱製冷蔵庫、30年。自動製氷機能はイカれたが未だに現役。
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