『GODZILLA ゴジラ』再び地上波へ “モンスターバース”原点としての魅力

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2020年06月20日 12:01  リアルサウンド

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『GODZILLA ゴジラ』(c)2014 Warner Bros. Entertainment Inc., Legendary and Ratpac-Dune Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 今から22年前、アメリカの映画会社トライスター・ピクチャーズが、ハリウッド版ゴジラを製作した。ローランド・エメリッヒ監督の『GODZILLA』(1998年)だ。興行面での成功を収め、モンスター映画としては肯定的にとらえる声がある一方で、ゴジラのデザインや、その最期をめぐる当時の評価は決して芳しいものではなかった。


参考:『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』なぜ圧倒的な美しさを獲得できた? 作品のメッセージを考察


 その後16年の月日を経て作られた新たなハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(2014年)が、6月20日にフジテレビ系で地上波放送される。


 製作を務めたのは、『バットマン・ビギンズ』(2005年)や『スーパーマン リターンズ』(2006年)で、21世紀のスクリーンにバットマンとスーパーマンを甦らせ、『パシフィック・リム』(2013年)では、日本の巨大ロボットアニメを大作スケールの実写でやってのけるなど、意欲的な作品をつぎつぎと世に送り出したアメリカの映画会社レジェンダリー・ピクチャーズ。そのレジェンダリー・ピクチャーズが東宝と提携し、作り出したのがギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』である。しかもレジェンダリー・ピクチャーズには、キングコングやゴジラが同じ世界観を共有する“モンスターバース”というクロスオーバー・プロジェクトの構想があり、本作はその記念すべき第1作という扱いだった。


 ギャレス・エドワーズ監督は『モンスターズ/地球外生命体』(2010年)で、低予算でも鑑賞に堪えうるパニック映画を撮って、多くの映画賞を獲得していた。このインディペンデント映画のヒットを評価され、彼はゴジラ映画のプロジェクトに招かれることになる。


 ゴジラのデザインは、ややマッシブながらも東宝映画版に沿ったシルエットで、その出自も核実験によって目覚めた太古の巨大生物というオリジナルに準じたものだった。渡辺謙が演じた芹沢猪四郎博士のネーミングは、東宝の『ゴジラ』(1954年)の登場人物・芹沢大助と、監督の本多猪四郎にリスペクトを捧げたもの。


 劇中で渡辺演じる芹沢博士が、巨大怪獣の名を日本流の発音で「ゴジラ」と初めて口にするシーンは、アメリカのワールドプレミア上映で万雷の拍手を浴びたほどだ(アメリカ流の発音では本来「ガッズィーラ」となる)。物語の中心となるブロディ一家の家族愛をメインに、アメリカ人が感情移入しやすいドラマの軸を通しつつ、世界中のゴジラファンへの目配せを欠かさないギャレス監督の演出ぶりは、日本のみならず海外の観客からも好意的に迎えられ、全世界での興行収入530億のヒットを記録した。本作の大成功により、レジェンダリー・ピクチャーズは当初の構想通り、モンスターバースのシリーズ化を本格的に動かすことになる。


 『GODZILLA ゴジラ』が日本国内でも興行的な成功を収めた2年後、東宝も庵野秀明を総監督に迎えて『シン・ゴジラ』(2016年)を製作・公開した。『シン・ゴジラ』は政府が初めて遭遇した巨大不明生物(ゴジラ)にどう対処してゆくかを通して、政治的駆け引きとミリタリー色の濃いドラマが展開されたが、『GODZILLA ゴジラ』が日本のドル箱路線だった平成ゴジラシリーズ(1989年〜1995年)のような、ゴジラと敵怪獣の市街地バトルを山場にした作劇だったのを思うと、ゴジラ映画へのアプローチ方法が日本とアメリカで入れ替わったかのようで面白い。


 『シン・ゴジラ』では、政府が巨大不明生物特設災害対策本部という公的な専門部署を設置していたが、『GODZILLA ゴジラ』には、世界各国の巨大生物を研究調査する秘密機関モナークが登場し、これがモンスターバースを繋ぐ存在として大きく関わっている。芹沢博士はモナークの生物科学者という設定だ。モンスターバース第2作にあたる『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年)は、モナークの地質学者ランダが、巨大生物の存在を確かめるべく髑髏島への調査隊を編成するのが物語の発端で、第3作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)は芹沢博士の再登場とともに、モナークの科学者夫妻が重要な役割を演じる。


 4作目『GODZILLA VS. KONG(原題)』は、新型コロナウイルスの影響で、公開予定が2020年11月から2021年5月に繰り下げられたが、果たしてどのような形でモナークが関わってくるのか? 置いてきぼりを食わないように、まずはシリーズ1作目『GODZILLA ゴジラ』と、2作目『キングコング:髑髏島の巨神』を順を追ってチェックしておこう。


■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。


このニュースに関するつぶやき

  • ドハティのキングオブモンスターズも放送して欲しいな。彼は聖書にゴジラを描き足すくらいのゴジラ信者。モブで出演して推しに喰われる演出をする程愛が深いファンの鑑。
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