ペットの犬や猫が増えすぎて飼育不能に陥る「多頭飼育崩壊」が後を絶たない。環境省の最新の調査によると、2018年度に都道府県や政令指定都市、中核市に寄せられた住民からの苦情は2149件に上る。一定の飼育数を超える際は届け出を義務付ける方針を決めた自治体もあり、保護団体は「ペットも家族として大切に」と訴えている。
相模原市では21〜23年度、多頭飼育崩壊が7件確認された。昨年9月には、近隣住民から悪臭の苦情を受けて市などが調べた結果、60代男性が猫約70匹を飼育するケースが発覚した。男性の住宅は一部を除き、室内が猫のふん尿で汚れており、感染症にかかって失明した猫もいた。
男性は十数年前、保護猫7匹を飼い始めたが、不妊・去勢手術をしていなかったことで約70匹に増えてしまったという。
男性への指導や猫の保護、新しい飼い主への譲渡には市や相模原市獣医師会、保護団体などが連携して取り組んだ。現場に立ち入った市の担当者は「市だけでは猫を受け入れ切れず、保護団体の協力なしには対処できなかった」と話している。
こうした事態を受け市は来年度、対策を強化する。動物愛護管理条例を改正し、25年4月からは犬または猫を6匹以上飼育する場合、飼い主の氏名や住所、不妊・去勢手術を受けた頭数などの届け出を義務付ける。届け出は30日以内とし、違反者には5万円以下の過料を設ける。
同市で猫の保護や譲渡を行うボランティア団体「たんぽぽの里」の石丸雅代代表(59)は飼育数について「ペットの病気に気付ける範囲なのかを考える必要がある」と指摘。飼い主が病気になった際に世話を頼める人がいるかも考慮する必要があるとした上で「ペットには家族として向き合ってほしい」と話している。