米ワシントンで7日(日本時間8日)に行われた初の日米首脳会談。トランプ大統領から「爆弾発言」はなく、無難に乗り切る形となった要因の一つとして、日本政府が事前に同氏の性格や言動を分析するなど入念な対策を講じたことが明らかになってきた。石破茂首相は回りくどい言い回しが特徴の「石破構文」を封印したという。
「ノーと言ってしまうと話が全部ぶち壊れる。否定されることが大嫌いだというので否定はしない。『石破構文』風にくだくだも言わない」。首相は9日の日本テレビの番組で、初顔合わせに臨むに当たって心構えとしたことをこう説明した。
複数の関係者によると、政府は外務、経済産業、防衛など関係省庁幹部による「トランプ対策チーム」を編成し、幅広い分野で想定問答を用意。首相を交えた勉強会は昨年12月ごろから直前まで繰り返された。休日の首相公邸でひそかに行った時もあり、全部で30時間に及んだ。
「日本の貢献」をトランプ氏に分かりやすく伝えるため、日本企業の対米投資や在日米軍の対中抑止力を表した図表を作成した。首相は「自分のカラーを最初から出して会談が決裂したら何も進まない」と判断。米側との摩擦になりかねない日米地位協定改定などの持論は控えることにした。
「トランプ氏には結論から言わなければ駄目だ」。昨年12月には自民党の麻生太郎元首相からこんなアドバイスを受けた。麻生氏はトランプ氏と個別に会談したことがある。
安倍晋三元首相がトランプ氏を褒めることを意識して蜜月関係を築いた例も参考にしたという。実際に会談冒頭、トランプ氏が大統領選中に銃撃された直後に拳を突き上げるシーンの写真に触れ、「歴史に残る一枚。神様から選ばれた」と持ち上げた。
少人数会合では、首相に事務方から何度かメモが差し出される場面があった。これについて首相は日テレ番組で、報道陣への公開が予定外に長引いたとして「メディアがいないところでないと話せないこともあり、切り上げないとまずいみたいなことが書いてあった」と明かした。
首相は今後のトランプ氏との関係に自信を持ったもよう。10日の自民役員会で「外交、安全保障、経済問題など多岐にわたっていろいろと深い議論をすることができた」と手応えを語った。