限定公開( 24 )
三重県亀山市の新名神高速道路下り線で4人がけがをする逆走事故が起きて25日で1週間がたった。県警の調べでは、普通乗用車が本線上でUターンを始めたのが原因との見方が強まっている。全国の高速道路を管理・運営しているNEXCO各社は逆走を防ぐためにさまざまな対策を取っているが、ドライバーの故意のUターンを防ぐことなどできるのだろうか。【長谷山寧音】
事故は、18日午前11時ごろ、亀山市の新名神高速道路下り線の鈴鹿トンネル入り口付近で発生。逆走してきた普通乗用車が乗用車2台に接触し、これに気付いて停止した後続の中型貨物車に大型貨物車が追突するなど計6台が絡む多重事故となった。接触された乗用車の女性計4人が軽いけが。車はそのまま逃げ、なおも10キロ先の鈴鹿パーキングエリアまで逆走を続けたとみられている。
県警は翌19日、滋賀県長浜市の会社員、ロッシ・クルーズ・ジョン・エリアス容疑者(34)=ペルー国籍=を道交法違反(事故不申告)の疑いで逮捕した。調べに「道に迷った」と供述。三重・滋賀県境の鈴鹿トンネル(約4キロ)を抜けた滋賀県甲賀市内の本線上でUターンして逆走を始めたとみられる。
2日に1件起きている計算に
国土交通省の2011〜23年のデータによると、高速道路上での逆走事案は2654件発生。毎年約200件、ざっと2日に約1件は起きている計算になる。事故に発展したのは約2割の531件。人身事故は204件で、そのうち死亡事故は54件だった。
|
|
三重県内では24年に11件の逆走事案があり、20年には事故も1件起きている。ちなみに高速道路以外の国道1号では24年、名阪国道では20年に死亡事故が起きた。
NEXCO中日本のホームページによると、23年に全国で起きた逆走事案224件を分析したところ、ドライバーの年齢は65歳以上が68%、75歳以上が46%を占め、認知症者による事案が約3割に上った。
15〜22年のデータをもとに逆走の「動機」を探ると、間違えて逆方向に進入するなど「過失」が約4割、認知症などにより逆走の自覚がない「認識なし」が約3割で、「故意」が約2割だった。
今回のような本線上のUターンは「故意」に含まれ、NEXCOにとって全く予想外だったわけではない。実際、ホームページには「本来のルートへ復帰するための逆走」の例を図付きで紹介。目的のインターチェンジ(IC)を通り過ぎてしまい、出ようとしていたランプ(ICなどへの連結道路)に戻ろうとするケースだ。
NEXCO中日本管内でも過去に本線上でUターンした逆走事案がある。24年8月、東海環状自動車道の豊田ジャンクション(JCT)で80代男性が運転する軽トラックがUターンし、外周り線を土岐(岐阜県)方面へ約33キロも逆走したのだ。
|
|
「防ぐ手立てがあるかもわからない」
NEXCO各社はさまざまな対策を講じている。路面に矢印を描いて進行方向を明示したり、本線合流地点で逆方向へ進めないようにするためラバーポールを設置したりするのもその一つ。また、逆走しそうな車両に注意を呼び掛ける標識の設置も進めており、逆走車を感知した時だけ「逆走戻れ」と警告が出る表示板もある。
ただし、これらはいずれも当たり前に本線上を走行しているドライバーが突然故意にUターンすることまでは想定していないようだ。今回の事故についてNEXCO西日本は「どこでUターンしたか分からないので防ぐ手立てがあるかもわからない」としている。
国土交通省高速道路交通課は「高速道路での事故は被害が大きくなる可能性が高い。警察と協力して注意喚起するなど、逆走事案の減少に向けて対策を講じていく」とコメントした。
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 THE MAINICHI NEWSPAPERS. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。