鈴木福、21歳の真実「みんなが思うようないい子ちゃんではない」国民的子役時代から抱える葛藤を明かす

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2025年11月16日 09:20  日刊SPA!

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鈴木福
―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
’11年の大ヒットドラマ『マルモのおきて』で一躍知られるようになった“国民的子役”も、今は21歳。“福くん”というイメージを背負いながらも、「みんなが思うようないい子ちゃんではない」と言う。子役を経て成長した俳優・鈴木福が、等身大の自分と向き合う現在地を語る。

 1歳でデビューしてから、今年で芸歴20年。国民的ドラマ、NHK連続テレビ小説出演、情報番組司会など、子役時代から芸能界の“ど真ん中”を走り続けてきた鈴木福。近日公開予定の(※1)映画『ヒグマ!!』では、父の自死をきっかけに闇バイトに手を出してしまった主人公がヒグマに襲われるという衝撃的な役柄に挑んだ。日本各地でクマ被害が起きている現状から、本作の公開延期が報じられたことは周知のとおり。今までのキャリアとは異なる挑戦だが、鈴木が「スーパーポジティブ人間」と自らを語る裏には、挫折や葛藤を乗り越えてきた強靭なメンタルがある。芸能界を生き抜いてきた鈴木の素顔に迫った。

◆いい子のままでは終われない

──今回の映画について福さんのSNSでの告知投稿を見て驚きましたよ。攻めた作品ですが、この仕事を受けようと思ったきっかけは何ですか。

福:最初にオファーを受けたときのインパクトと、(※2)内藤瑛亮監督と佐藤(圭一朗、企画・プロデュース)さんたちと一緒にやれることも含めて、すごい熱量を持って僕にオファーしてくれているとマネジャーさんから聞いていたので、それならぜひということでお引き受けしました。

──ちなみに内藤監督の作品はお好きなんですか? 先鋭的な作品を作ってきた人ですけど。

福:もちろん知っていて、好きでしたね。中学生ぐらいのときに観た(※3)『ミスミソウ』にすごく惹かれて、それがとても印象的でした。内藤監督の作品に呼ばれるとは思いもしなかったですし、タイプ的に違うのかなと思っていたんですけど、主演として携わらせてもらえることになって楽しかったです。

──ボクも勝手なイメージで、福さんは芸能界のど真ん中を行こうとする人だと思っていたので、人生に追い詰められて闇バイトに手を染めてしまうような役柄にも挑戦して、しかも見事に自分のものにしているという衝撃がありました。

福:なるほど。そのイメージはなんとなくわかります。俳優の仕事に関してはスケジュール的な問題がない限りは、ほとんどやりたい。まずやりたいという気持ちで企画を見るところから始まります。でも、挑戦的な役が来ないよなあ……というのは、やはりいくらでもありますよね。

──基本、(※4)『仮面ライダー』をやりたいというのはずっとおっしゃってましたけど、それ以外に何かあったりしたんですか?

福:そこがあまりにも大きすぎましたが、アクションをやりたいという気持ちもありました。

──今回もアクション的な部分はあるといえばありますよね。

福:だいぶ、緊張感のあるアクションですけども。

◆みんなが思うような“いい子ちゃん”ではない

──今回の役は過酷な状況にあっても、すごいポジティブじゃないですか。監督もプロットを書いている段階から顔が浮かんでいて、福さん自身の“陽性”的なトーンが作品に合っている、とキャスティングしたとコメントされていましたね。

福:はい。僕も今日初めて聞いて、確かになと思いました。

──納得はするんですね。

福:します! え、しません?

──します、すごく。福さんも自分がどれだけポジティブなのかよく語っていますが、家庭環境で培われたんですか?

福:そこは大きいと思います。生まれ持ったものでいえば母親の影響が大きくて。あとからいろいろ考えた上でのポジティブさみたいなものは、父親からもらったものが大きいと思います。

──反抗期がなく、イヤイヤ期もなかったみたいですけど、これまでにいわゆる“闇落ち”した経験もほとんどないということなんですよね?

福:まあ、“かわいいもので済んでいた”というのはあると思いますね。いろんなものに対してうがった見方をしていた時期もあるといえばあるんですけど。今思えば、そんなに気にすることじゃなかったよなと思います。

──お父さんが厳しかったのも大きいだろうし。ゲーム機をへし折った話も笑いました(笑)。

福:3DSが真ん中できれいに真っぷたつになったのを今でも覚えています。

──「これは反抗できないな」と確信して(笑)。そこからホントによくここまで真っすぐ育ってくれたと思うんですけど。

福:……真っすぐ育っているんですかね? よくそう言われますけど、そんなにみんなが思うようないい子ちゃんではないですよ、とは思います。僕、本当はずっと寝ていたい人間ですし。

──あとは(※5)野球をやりたいっていうぐらいの感じでしょうね。

福:寝ていて、たまにボールを投げて、友達と話して……、それで一生が進むのであればいいですね。

──それで食べられるのなら。

福:それでもいい。それくらいダラけた人間だけど、そう思えない自分がいるので。やはり、立ち向かうことが楽しかったり、そうしなきゃいけないという形ができてしまっている世の中だからこそというのを感じたりしています。

──苦しさの果てに楽しいことがあるのもわかっているし。

福:だから、そのまま進んでしまうんだろうなと思います。

◆ホントに僕が好きにしたら、どんな顔になるんだろう

──ホントに物心つく前から仕事をしていて、よく言われているのが「もう子役じゃないんだから」と言われ始めたあたりからプロ意識が芽生えた話で。

福:さすが。僕のエピソードが全部入っているじゃないですか……!

──メモを見なくてもすぐ出ますよ(笑)。そこは、大人になってから仕事を始める人とは感覚が違うのかもしれないけど。

福:だからこそ言いたいことも言えないというのはありますね。発言に気をつけなければならない。そういうもどかしさがあって。「好きに生きていいよ」と言うけど、じゃあホントに僕が好きなようにしたら、世間の人たちはどんな顔になるんだろうと思いますね。

──そういうものを抱えながらも「真ん中をゆく」ということじゃないかと思うんです。

福:そうですね。そのなかに自分が楽しくやれるポイントを探す。ここまで来てしまったからこそ、できることや、自分がやりたいと思えることをやれたらなと思っています。

──実際、好きなことをやれる環境にはどんどんなっているじゃないですか。『仮面ライダー』しかり、野球関係しかり。

福:ホントそうですよね。

──ど真ん中の仕事をやりながら、こういう『ヒグマ!!』的な攻めた仕事を織り交ぜていくのがおもしろいと思うんですよ。

福:そうですね。今回みたいに一緒に作品を作ろうと言ってくれる人がひとりでも増えるように、それを観たいと思ってくれる人がひとりでも増えるように頑張りたいです。僕と仕事をやりたいと思ってくれるんだというのが喜びですね。

◆好きなものを人に奪われた経験

──これも聞いてみたかったのが、挫折の経験はありますか?

福:何をもって挫折とするのかというところはあると思うんですけど。理不尽な“何か”を振りかざされて、物事がうまくいかなくなるみたいなことでいうと、ありますね。自分がやりたかったことをひょんなことから奪われてしまったりということはありました。でも、スーパーポジティブ人間なんで(笑)。やっぱり僕はおもしろいことが好きですし、笑われることに対して抵抗がない人間なのがプラスなんだろうなと思います。

──子供の頃からいろんな芸人さんと絡んで相当な洗礼を受け続けている人だから、そう思われているんですかね。

福:そういうのも含めてだと思います。やっぱり役柄にしても、カッコいい人がやると観ていてキツくなっちゃうようなこともあるじゃないですか。そこがないのが何よりもいいポイントかなと思います。

◆思った以上にハートが強いんですね

──パブリックイメージどおりの部分と、そうじゃない部分が交ざっていておもしろいです。

福:ちゃんと話をさせてもらうと、そう言われるときもありますね。「思っていたのと違う部分もあるんだね」って。

──もっとのんきそうなイメージではありました。でも、思った以上にハートが強いんですね。

福:確かにそうかもしれないです。考えてないわけじゃないです(笑)。生きにくさとかあんまり感じないようにしているというか、割り切りがうまいのでそこはよかったなと思います。だからそれを吐き出したりする方法がお芝居なり他のものなり、そういうアウトプットをしていけたらいいのかもしれないと思いますね。「クソッ!」とか、そういう感情になったことがない人という感じがするかもしれないですけど、全然あります。だからそういう作品に出たときに、その気持ちが生かせるだろうなと考えますね。

【Fuku Suzuki】
’04年、東京都生まれ。1歳で、NHK教育番組でデビュー。’11年に大ヒットしたドラマ『マルモのおきて』で一躍”国民的子役”として知られるように。以後、映画、TV、舞台、CMなど多岐にわたり活躍。特技は箏、けん玉、趣味は野球

(※1)映画『ヒグマ!!』
父の自死を発端に闇バイトに手を出した18歳の少年・小山内(鈴木)を待ち受けるのは、森の最強モンスター!? 予測不能のモンスターパニック映画

(※2)内藤瑛亮監督
長編デビュー作『先生を流産させる会』で注目を集める。少年少女の罪や狂気、現代社会の闇を鋭く描く。サスペンスやホラー要素の強い作品も多い

(※3)『ミスミソウ』
’18年公開。押切蓮介原作。陰湿ないじめで家族を失った少女が、雪深い田舎町でいじめ加害者たちに凄惨な復讐を遂げるサイコホラー

(※4) 『仮面ライダー』
幼い頃からファンであることを公言。’23年、特撮テレビドラマ『仮面ライダーギーツ』にて、仮面ライダージーン役で念願のレギュラー出演を果たした

(※5)野球
好きが高じ、始球式などに登場する機会も多く、今年9月に放送された『パワプロドラマ2025─平凡な新社会人の俺がサクセスした話─』では元球児でパワプロ好きの主人公を演じた

取材・文/吉田豪 撮影/尾藤能暢 ヘアメイク/ショウジロウ フェニックス スタイリング/作山直紀 Ⓒ2025映画「ヒグマ!!」製作委員会

―[インタビュー連載『エッジな人々』]―

【吉田豪】
1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。主な著書に『男気万字固め』(幻冬舎)、『人間コク宝』シリーズ(コアマガジン)、『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店)、『書評の星座』(ホーム社)など

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  • 鈴木福も芦田愛菜も“良い子”の枠には収まらないと思うexclamation ��2もしも“良い子”の枠に収まるような人であれば、芸能界どころか一般社会でもやっていけないexclamation ��2
    • イイネ!2
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