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「今年の春、大学を卒業しました。挑戦することに、遅すぎることはないんだと感じた4年間でした」
そう語るのは、タレントのスザンヌ(39)。かつて“おバカキャラ”でブレーク、多数のテレビ番組で活躍してきた彼女は、故郷・熊本でシングルマザーとして息子を育てながら、32歳のときに高校に再入学。35歳で卒業すると、日本経済大学経営学部に進学し、仕事・子育て・学業を同時にこなしながら、この春、39歳で大学卒業をはたした。
地元を拠点として、芸能活動も順調で多忙を極めるなか、なぜ彼女はあえて“学び直し”を選んだのか。そのきっかけは、2014年1月に出産した息子からかけられたあるひと言だったという。
■息子の無邪気なひと言が残した、「働くとは?」という問い
シングルマザーとして息子を育てながら、芸能活動を続けていたスザンヌ。自らの働く姿を通して、「仕事とは何か」を伝えてきたつもりだった。だが、息子の目に映っていた母の姿は、思いがけないものだった。
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「『ママのお仕事って、どんな仕事かわかる?』って聞いたら、『楽しそうにご飯を食べて、おいしいって言えばいい仕事でしょ?』って言われて(笑)。間違いではないし、そこにやりがいがあるんです。でも、働くってそれだけじゃないですよね。それをどう説明すればいいのかわからなくて……。そのひと言で、『働くってなんだろう』と、改めて自分自身も考えるようになったんです」
息子が小学1年生になり、家で宿題をするようになると、隣に座って学習を見守るようになった。そんなある日、再び不意をつく一言を投げかけられる――。
「息子に『なんで勉強するの?』って聞かれたんです。私自身は高校を中退していて、これまできちんと勉強をしてこなかったので、何も答えられなくて……。とても悔しかったし、情けなかったんですよね」
無邪気なひと言に、言葉を失った。その経験が、彼女の背中を押したと振り返る。
「もう一度、学び直したいという思いが、その瞬間にはっきりしました。学ぶことと働くことを、自分の中でしっかり考え直したい。息子に『なんで勉強するの?』『働くって何?』と聞かれたとき、きちんと答えられる自分でいたかったんです」
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■15年ぶりの母校で、ゼロからの学び直し
その思いを胸に、かつて中退した高校の通信課程への再入学を決意。高校2年で中退していたものの、単位はそのまま残っていた。さらに、コロナ禍で授業がオンライン対応になっていたことも追い風となり、32歳で再び学びの場に戻ることができた。
「仕事のスケジュールを調整すれば、できないことはないと思ってチャレンジしました。在学当時の先生たちがそのままいらっしゃって、『山本(注:本名)、元気だったか!』というふうに声をかけてくれて、うれしかったですね。勉強のやり方も本当に丁寧に教えてくださいました。先生たちの支えがなければ、続けられていなかったと思います」
一方で、32歳からの学び直しには、年齢ならではの壁もあった。
「サプリでも飲みたいくらい、記憶力や集中力の衰えを実感しました(笑)。高校時代に習ったことも、ほとんど覚えていませんでした。だから、単語や公式を繰り返し覚えるところから始めました。ただ、年齢を重ねたぶん、先生の話の中で『ここが大事なポイントだ』と勘が働くようになっていたんです。記憶力や集中力は落ちても、経験をもとにメリハリをつけて学べる。それが、大人になってから学び直す強みだったのかもしれません」
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高校に再入学後は、毎朝4時に起き、息子が目を覚ます前に勉強する習慣を身につけた。
「朝に勉強するスタイルをずっと続けていました。夜は電話やメールが来たりして気が散ってしまうんですけど、朝だと余計な情報が入らないから集中できるんです。息子を学校に送り出した後、日中はオンラインで授業を受け、仕事もして。テスト前やレポートの締め切りが迫っているときは、息子を寝かしつけた後に夜遅くまで勉強することもありましたね」
仕事、子育てをこなしながら時間をやりくりしての学び直しは、生活だけでなく親子の関係にも変化をもたらした。一緒に机に向かう時間が生まれたのだ。
「息子の小学校の宿題と、私の高校の課題を一緒にやる時間ができて。『どっちが早く終わるか競争しよう』って言いながらやっていたんですけど、それがもう本当に宝物みたいな時間で。高校に再入学していなかったら、あの時間は絶対に生まれなかったと思うので、やってよかったなって心から思いましたね。一緒に学ぶ経験ができたことは、大きかったです」
■「ここまで本気で取り組むなんて思わなかった」母の言葉が背中を押した
35歳で晴れて高校を卒業。卒業式には母親も出席した。
「17歳で高校を中退したとき、母に『高すぎた授業料だった……』と言わせてしまったんです。芸能活動に専念するために中退し、芸能活動ができたので後悔こそありませんが、母には申し訳ない気持ちがずっと心に残っていました。そんな中で迎えた卒業式で、母が『時間をかけて、ここまで本気で取り組んで高校を卒業するなんて思わなかった。この年で高校に入学する決断をしてやり遂げたあなたを、お母さんは誇りに思う』って言ってくれたんです。それが本当に大きな励みになって……。母が喜んでくれたことが、もっと学びたいという気持ちに火をつけてくれました」
「もっと学びたい」、スザンヌはさらに大学進学を決意する。
「“知る”って楽しい、と思ったんです。学ぶほどに、もっと知りたいという気持ちが強くなっていきました。仕事でずっとファッションに関わってきたこともあって、古着をリメイクして販売することを、いつかやってみたいと漠然と思っていて。そのビジネスの仕組みなどを、きちんと勉強したいと考えるようになっていたんです」
オンラインで講義を受けられ、キャンパスにも足を運べること。そして、興味があったビジネスが学べること。そうした条件を満たす場として、日本経済大学経営学部を選んだ。大学進学は誰にも相談せず、すべて自分一人で決めた。
「学ぶことで得られる知識があって、先生や母など喜んでくれる人もいる。息子にも、何か伝えられているのかもしれないと感じるようになりました。そして、自分の夢のためにも、もっと頑張りたいという気持ちで大学に進学しました」
母の「誇りに思う」という言葉、そして自分の手でつかんだ高校卒業という経験。それらが重なり合い、35歳の春、大学進学という新たな挑戦へと踏み出したのだった。
【中編】「完璧な母を目指すのはやめた」スザンヌ 35歳からの大学生活で気づいた“子育てへの学び直し”へ続く
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