「とにかくうちの職場ではバレンタインは普通の日と一緒だから。以上! はい、仕事!」「え〜、ホナミさんのいじわるう……」たしかに職場の人たちはみんないい人です。チョコをあげたらきっと喜んではくれるでしょう。しかし今まで渡してこなかったわけですし、お返しという面倒なやりとりが必要になることは積極的にはしたくありません。ブーブー言いながら仕事を始めるカヤちゃんを横目に、私は書類の作成をしました。そしてバレンタイン当日……。
ザ・バレンタインな光景を目にして、私はがっくりと肩を落としてしまいました。そして同時に、腑に落ちない気持ちが心の中でムクムクと大きくなりました。当然ですがチョコを配っているのはカヤちゃんだけ。職場のみなさんだってきっと、「カヤちゃんからはあるのに、ホナミちゃんからはないの?」と疑問に思うでしょう。私はなんだか肩身の狭い思いを感じながらも、頭を切り替えてとりあえず今日も仕事に励むことにしました。
「この職場でバレンタインには何もしない」と事前に伝えておいたにもかかわらず、笑顔でチョコを配り歩いていたカヤちゃん。当然ながら職場のみなさんは喜んでいましたが、ひとりだけ仲間外れにされてしまったような私は、もちろんいい気はしません。私に質問してきたにも関わらず配り歩くなんて、彼女は最初からチョコを持ってくるつもりだったのでしょうか……。とはいえ何か事情があるのかもしれません。とりあえずお昼休みになったら、カヤちゃんに話を聞いてみようと思います。
【第2話】へ続く。
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