俳優・生田斗真(39歳)のSNSでの発言をきっかけに、いま「無痛分娩」について大きな注目が集まっています。
5月7日、生田は自身のインスタグラムのストーリー機能で、妊娠9か月だというファンからの「出産こわいよー」というコメントに、「旦那様に無痛(分娩)おねだりするか」と回答しました。
これに対し、自分の体のことは女性自身が決める権利があり「おねだり」は不要であることや、無痛分娩でも出産は命がけであり、痛み以外にも生命の危険を伴うことを分かっていないといった指摘が相次ぎました。
こうした事態を受け、生田はインスタグラムのストーリーで「僕の発言で傷つけてしまった方がいるようです。ごめんなさい」と謝罪。
今回、生田の発言は大きな話題になりましたが、無痛分娩について彼と同様の誤った認識や、「痛みがないと母親になれない」から自然分娩をすべきだという考えを持つ人々は男女問わず少なくありません。
こういった周囲の無理解に実際にぶつかった無痛分娩の経験者である、下着インフルエンサーのちーちょろすさんにその経験をつづってもらいました。(以下、ちーちょろすさんの寄稿です)
◆思っていたのとは全くちがった無痛分娩の体験
すべての出産からすると、11.6%(※日本産婦人科医会2023年報告より)とまだまだ少ないとはいえ、増えている無痛分娩。出産を検討されてる方なら一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
今回は、痛みに弱すぎて出産が怖かった筆者の無痛分娩体験談です。
筆者がどのくらい痛みに弱いかと言うと、注射は横になって打ってもらわないとダメなくらい、しょうもないアラサーです。
しかしそんな私でも出産ができました。現代医療には感謝しかありません。
とはいえ、思っていたのとは全く違う無痛分娩。「先に知っておけばよかった!」と思ったことを紹介していきます。
◆自分の心を大切にするため無痛分娩を選んだ
無痛分娩の一般的なメリットは「痛みを和らげられる」「産後の回復が早い」といわれています。
筆者はそれに加え、「出産への恐怖をやわらげる」というメリットを感じていました。
入院予定日が近づくにつれ出産への恐怖から逃げ出したい気持ちになっていましたが、計画無痛分娩だったため、経験者から聞いていた「全く痛くなかった」という言葉をお守りに無事入院ができたくらいです。
そして生む前の時点で産後の仕事復帰への心配もあったものの、“産後の回復が早い出産を選べている”と思うだけでも、プラシーボ効果のようなものかもしれませんが、想像以上に落ち着いて出産に臨めました。
無痛分娩で、痛みだけではなく不安も軽減できるのは、出産に対する恐怖がある私にとってありがたい出産方法でした。
◆なぜか親戚男性から「痛みがないと母親になれない」と反対された
無痛分娩をすると言うと、「痛みがないと母親になれない」という人が必ず出てきます。
実際筆者も、親戚男性に同じ理由でなぜか無痛分娩に反対されました。
しかし、実際無痛分娩をしてみても、しっかり陣痛は体験し、この世のものとは思えない痛みを経験しました。
“痛みが必要”という人々は今でも多くいますが、メリットが多いため、世界的には無痛分娩が一般的になっています。「無痛」という言葉により全く痛くないというイメージが一人歩きをしていますが、実際は「和痛分娩」「麻酔分娩」が正しいです(※編集部注:呼び方や定義には病院によっていろいろな分類があります)。
そもそも“痛みがないと母親になれない”という理論なら、男性はずっと父親にはなれないので、本来は子育てをしていく中で親になっていくのではないでしょうか。
◆もしまた出産するなら無痛分娩
陣痛は痛みがひどかったとはいえ、私の感じたメリットは、子宮口が全開になり、いざいきむ段階では本当に無痛だったことです。
そのおかげで、いきむ時は呼吸も整えることができて休憩もできたので、疲れずいきむことに集中ができました。
落ち着いて出産ができたのと、後処置も全く痛みを感じなかったので赤ちゃんや立ち会い出産をしてくれた夫との会話を楽しめたのもよかったです。
また、私の場合ですが産後の戻りも早く、産後ハイもあったとは思いますが、想像以上に産後は明るい気持ちで体調もよかったので、もしまた出産をするなら無痛分娩を選択したいと思います。
◆わかっていてもツッコんでしまった「無痛じゃないじゃん!」
無痛分娩で痛いのは陣痛だけだと思っていましたが、陣痛中に「二度と妊娠しない」と誓ったことはまだ序の口…さらに痛かったのは私の場合子宮口を広げる処置でした。
私の産院では陣痛促進剤を入れながらバルーンで子宮口を開かせるので、その処置が陣痛よりも痛かったです。
もちろんその時は麻酔を入れてもらえず、そこまで痛いとも思っていなかったため、虚(きょ)をつかれた筆者は産院に響き渡るくらいの声で叫びました。
逆に痛いことを心配していたけれど大丈夫だったのは、麻酔の針です。背中に入れるので陣痛より痛いのではないかとビビりちらかしていましたが、筆者の場合は点滴の方が痛かったです。
◆出産一時金50万円じゃ全然足りない!
筆者は出産のため地方に移住したのですが、無痛分娩ができる産院は少ない上に非推奨の産院ばかりでした。
そのためか無痛分娩費用が記載されていない産院も多いため、もし選びたい場合は、まずは問い合わせてみるのが良いと感じました。
他にも、産院のサイトに記載されている金額だと思っていたら、次年から値上げで出産は年をまたぐため思っていたより高くなる…というケースもあります。(筆者です)
ちなみに、筆者は出産一時金の50万円を引いて実際にかかった金額は無痛分娩代込みで約30万円でした(全体でかかった金額が80万円ということです)。
個室かつ夫も泊まれる部屋にしたからでもありますが、一番安い部屋だったとしても支給される50万円では足りなかったため、かかる金額を早い段階でしっかり見積もっておくことが大切です。
入院費だけではなく、入院セット代なども別でかかるところもあるので、価格欄は全て確認をして計算するのがよいと思います。
◆「夫もできる限り当事者意識を持つ」出産ができるのが自分の理想だったので
産院を選ぶ際、ほとんど選択肢がありませんでしたが重視していたポイントは付き添い入院ができるかでした。
筆者は出産において重視したかったのが「夫もできる限り当事者意識を持つ」ということでした。完璧には無理でも、立ち会い出産はもちろん入院も一緒にすることで子供が生まれてくる過程を一緒に体験したかったんです。
何を重視するかは人によって違いますが、自分の望む理想の出産をイメージして、かなえられる産院かをみておくのがおすすめです。
また、その際、出産をする部屋がどこかや助産師さんがどのタイミングまでいてくれるかなども確認しておくといいかもしれません。
私の場合は、出産の流れを事前に説明してくれましたが、陣痛がくる前から出産まで同じ部屋とは知らず、当日とまどったり、最初からほとんどずっと助産師さんがついてくれていたりと想像と違うことが多かったです。
(私の産院は1日に一人しか無痛分娩ができなかったのもあります)
◆出産方法を決めるべきなのは、出産をする本人だけ
今は出産に不要な痛みをともなう必要のない時代になったのもあり、もちろん自然分娩も素晴らしいですが、痛みがあるなしではなく「どんな出産をしたいか」で選ぶのが大切ではないかと思います。
私の産院は夜間休日の無痛はできなかったため、私もいざとなったら自然分娩になることや状況によっては帝王切開になる覚悟も持っていました。
しかし、まだ選択をできる段階であれば出産方法を決めるべきなのは、出産をする本人だけです。
まだまだ高額な無痛分娩ですが、女性が無痛分娩での出産を希望するのであればそれも「必要な出産費用」になると私は思います。
これはわがままでもなんでもなく、必要のない痛みを感じずに女性が心も体も安定しやすくなるなら、そういった選択肢が当たり前になっていくことで女性が出産しやすい世の中になるのではないでしょうか。
<※本記事内容は、一個人である筆者の体験談に基づくものであり、すべての人に当てはまるものではありません。ご自身の判断で選択してください。>
<文/ちーちょろす>
【ちーちょろす】
下着の魔法使い。販売員時代の知識を活かして、下着で自分に魔法をかけるための知識をnoteやTwitter、YouTubeで発信中。特技はサイズを当てること。趣味は下着屋さん巡り