オークス有力馬の強みがわかる「3歳牝馬ランキング」本命ステレンボッシュを脅かす存在はいるか?

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2024年05月16日 07:40  webスポルティーバ

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 牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)は、ステレンボッシュ(牝3歳/父エピファネイア)が、2歳女王のアスコリピチェーノ(牝3歳/父ダイワメジャー)の追撃を抑えて勝利。桜の女王に輝いた。

 その後、アスコリピチェーノはクラシック戦線から離れ、マイル路線へと矛先を向けてGINHKマイルC(5月5日/東京・芝1600m)に参戦。2歳王者のジャンタルマンタルに次ぐ2着と、あらためて力を示した。

 そうした状況にあって、牝馬クラシック第2弾のGIオークス(5月19日/東京・芝2400m)へ向けては、ステレンボッシュの"1強"といったムードが強まっているが、桜花賞から4ハロンも距離が延びる舞台は、出走各馬にとって未知の世界。何が起こるかわからない。

 実際、桜花賞後のオークストライアルでは、魅力的な"新星"が登場。GIIフローラS(4月21日/東京・芝2000m)はアドマイヤベル(牝3歳/父スワーヴリチャード)が好位から抜け出して快勝し、リステッド競走のスイートピーS(4月28日/東京・芝1800m)ではコガネノソラ(牝3歳/父ゴールドシップ)が強烈な末脚を繰り出して、オークスへの切符を手にした。

 また、桜花賞ではステレンボッシュに屈した、3着のライトバック(牝3歳/父キズナ)や、4着のスウィープフィート(牝3歳/父スワーヴリチャード)、さらには3番人気で8着だったクイーンズウォーク(牝3歳/父キズナ)や、4番人気で13着だったチェルヴィニア(牝3歳/父ハービンジャー)ら素質馬たちも、オークスでの巻き返しを虎視眈々と狙っている。

 若き乙女たちにとっては、過酷な「樫の舞台」。ここでは、その注目の一戦を目前にしての、3歳牝馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。なお今回も、GI日本ダービー(5月26日/東京・芝2400m)に出走予定のレガレイラは含まない。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、クラシック第2弾のオークスに挑む3歳牝馬の実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。

 アスコリピチェーノがクラシック戦線から離脱したため、同馬が1位の座に君臨し続けていたランキングは大きく変動した。まず、アスコリピチェーノに代わって首位に立ったのは、ステレンボッシュ。桜花賞で、その2歳女王を退けて戴冠を遂げたのだから、当然の結果か。

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)と桜花賞は、ともに1分32秒台の高速決着。絶対的なスピードは天性のもので、速い時計の出る舞台で好走できる馬は限られています。そして、今年の3歳牝馬世代のGI2戦は、アスコリピチェーノとステレンボッシュの、着順を入れ替えてのワンツー決着。この2頭の能力が一枚上、という結果となりました。

 しかしその後、アスコリピチェーノはNHKマイルCに出走。最大のライバルが不在となった今、ステレンボッシュがこの世代で"1強"と判断していいでしょう。

 レースを使いつつ、少しずつ体質は強化していますが、それでも桜花賞時はキ甲も抜けず、トモ高で、前後のバランスなどは整っていませんでした。それでいて、あれだけのパフォーマンスを示しており、今後の成長次第では"名牝"になる可能性は大いにあります。体型や走法、折り合い面から、距離が延びるのはまったく問題なし。クラシックの二冠達成は濃厚と見ます」

伊吹雅也氏(競馬評論家)
「5月5日終了時点の本賞金は1億8820万円で、JRAに所属する現3歳世代の牝馬としては、アスコリピチェーノ(2億1120万円)に次ぐ単独2位。社台グループオーナーズの所属馬で、募集総額は5000万円でした。母のブルークランズは現役時代にJRAで3勝をマークしています。ディープインパクトらの近親にあたる良血馬です。

 近年のオークスは、重賞ウイナーが中心。1400m超のJRA重賞を制したことがない馬は、2016年以降に限ると1着2回、2着2回、3着3回、着外88回で、3着内率が7.4%にとどまっています。ちなみに、単勝10番人気で2着となった2022年のスタニングローズは同年のGIIIフラワーC(中山・芝1800m)を、単勝15番人気で3着となった昨年のドゥーラは前年のGIII札幌2歳S(札幌・芝1800m)を勝っていました。これだけ実績馬が強いレースですから、無理に嫌う必要はないでしょう」

 2位は、桜花賞で4着と善戦したスウィープフィートが入った。前哨戦となるGIIチューリップ賞(1着。3月2日/阪神・芝1600m)の大外強襲劇がフロックでないことを示し、評価を上げた。

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「桜花賞は最後方からの競馬で、進路の不利もあって、もったいない4着でした。父がオークスと同じ舞台のGIジャパンC(東京・芝2400m)を勝っているスワーヴリチャード。血統的に距離延長は問題ないはずで、さらなる躍進が期待されます」

 3位は、桜花賞で3着入線を果たしたライトバック。2位のスウィープフィート同様、桜花賞の好走によって初のランク入りとなった。

本誌競馬班
「アスコリピチェーノがNHKマイルCへ回ったことから、桜花賞で僅差の3着となった同馬が2番手の評価となるのは自然な流れでしょう。桜花賞でもメンバー最速の上がりをマークし、末脚の破壊力は世代屈指。輸送をクリアすれば、再び勝ち負け必至と見ます」

 4位に入ったのは、スイートピーSを勝ってオークス出走権を手にしたコガネノソラ。目下3連勝中という勢いに乗って、大舞台での飛躍を果たすか。

土屋真光氏(フリーライター)
「時計の出やすい馬場だったとはいえ、スイートピーSをレースレコードで勝ったのは立派。昨秋の未勝利戦(10月9日/東京・芝1800m)から、着実に馬体を増やしているのも好感が持てます。

 叔母にはオークス2着で、海外GIの香港ヴァーズ(シャティン・芝2400m)も勝っているウインマリリンがいて、父ゴールドシップは3年前のオークス馬ユーバーレーベンを出しています。そうした血統面からしても、オークスではかなり楽しみな存在です」

 ステレンボッシュの"1強"ムードにあって、2位以下はポイントも僅差の激戦。おかげで、5位には4頭の馬が名を連ねた。前回2位のクイーンズウォーク、フローラSを制したアドマイヤベル、前回3位のチェルヴィニア、そして、リステッド競走の忘れな草賞(4月7日/阪神・芝2000m)を勝ったタガノエルピーダ(牝3歳/父キズナ)だ。

吉田氏
「クイーンズウォークは、胴長+脚長のスラッとした姿形。少し内股になりますが、それでもストライドがしっかりと伸び、長くいい脚を使えるタイプです。

 桜花賞時のパドックでは少し動きがこぢんまりと映っており、まだ伸びしろを感じさせる雰囲気でした。レースでも、内枠発走から中団のポジションを確保し、内を突く形となりましたが、エンジンが掛かる前にゴールを迎えた印象です。

 やはり長い直線で早めにエンジンをふかし、緩やかにギアを上げていくほうがパフォーマンスは高まる馬。折り合いは、なだめれば我慢が利く類いで、距離延長は問題なく、長い直線の東京競馬場は歓迎のクチ。枠の並びや流れ次第で、巻き返しがあると踏んでいます」

伊吹氏
「アドマイヤベルは、5月5日終了時点の一走あたりの賞金は1655万円で、JRAに所属する現3歳世代の牝馬としては単独5位。出走レース数のわりに獲得賞金額が多く、伸びしろのある実績馬と言えます。

 近年のオークスは、脚質が重要です。2019年以降に限ると、前走の4コーナー通過順が2番手以内だった馬は、12頭いたにもかかわらず、3着以内ゼロ。前走の4コーナー通過順が13番手以下だった馬も、2023年1着のリバティアイランドを除く該当馬20頭が、いずれも4着以下に敗れました。

 アドマイヤベルは好位でレースを進めることができるタイプ。ある程度は素直に信頼していいと思います」

木南氏
「チェルヴィニアの桜花賞惨敗は、正直なところ想定外でした。休み明けだったとはいえ、あそこまで負けるとは思いませんでした。大外枠からの発走で忙しい競馬になったことが影響したのでしょう。

 ともあれ、潜在能力は世代1位と見ています。東京競馬場に替わっての走りにもう一度、期待したいと思っています」

土屋氏
「タガノエルピーダは、チューリップ賞で4着に敗れて桜花賞出走の権利を得られませんでした。しかし"残念桜花賞"と言われる忘れな草賞できっちり勝利。オークス出走への十分な賞金を加算しました。

 牡馬への挑戦はレガレイラが注目されていますが、この馬も昨年末のGI朝日杯フューチュリティS(12月17日/阪神・芝1600m)に1戦1勝の身で出走。勝ったジャンタルマンタルにコンマ2秒差の3着と好走しています。

 そもそも適距離も、マイルよりは中距離。激戦の高速決着となった桜花賞組よりも消耗が少なくここに臨めるのも大きいです」

 ランキングの顔ぶれがガラッと変わった3歳牝馬戦線。未知なる2400m戦ではどんな戦いが繰り広げられるのか。予断を許さない攻防から目が離せない。

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