若者や女性のビギナー進出で「ゴルフの風習」が変わる!?【木村和久連載】

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2024年08月25日 10:00  webスポルティーバ

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木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第41回

 最近、スマホでゴルフ情報を見ていたら、ビギナー向けのコンテンツが増えていることに気づきました。

 スマホの情報は、AIがユーザーの嗜好に合わせて提供します。このユーザーはゴルフ好きと判断したら、ゴルフ関連の情報やニュースを集中して流すのです。だから、自分のスマホの情報サイトで見るニュースや記事はゴルフ関連が多めです。

 そうしたなか、もちろんトーナメント情報やトッププロのニュースもたくさん流れてくるのですが、今ではそれにも増して、ビギナー向けの記事が半端なく出てきます。つまりそれだけ、ゴルフをやり始めている人が多いということです。

 そんな記事の影響か、近頃ゴルフ場でビギナーに遭遇する確率がグンと上がりました。おかげで一日コースにいたら、きれいなロストボールを数個は見つけます。おそらく、ビギナーの飛ばし屋さんが打ったのでしょう。

 あと、隣のコースから直接ボールが飛んでくることがよくあります。こんなこと、以前は数回ラウンドして1回あるかないか、でしたけどね。

 しかも、こっちが連れていく同伴メンバーのなかにもビギナー君がいて、その人が毎ホールのようにボールをそらしてしまう始末。だから毎回、こっちは「ファ〜〜〜」って叫ぶって、喉が枯れますがな......。

 ゴルファーの世代交代としては、誠によろしい傾向ではあります。ただちょっと、気になる点があります。

 新しいZ世代のゴルファーたちは、我々のようにハンデキャップを取ったり、競技に出たりはしないんだろうなぁ、と。もっと違うところに興味を抱き、新たな楽しみ方を模索しているように思えます。

 というわけで、今から10年後ぐらいの、日本のアマチュアゴルフの世界はどうなっているのか、少し予測してみましょう。

(1)消えゆく上司と部下、先輩と後輩という関係
 昔のゴルフと言えば、会社などの先輩や上司に連れていってもらうのが一般的でした。そこでルールやマナーを教えられ、帰りに練習場へ寄ったりして反省会などもしたものです。

 ところが、現在の若手社員は上司が飲み会に誘っても「それは業務ですか?」と聞いてくるZ世代。安易にゴルフに誘えば、パワハラになる恐れがあります。結果、今ではそういう上司と部下、先輩と後輩という関係のゴルフが減りました。

 じゃあ、その代わりに今の若者はどうしているのか。ひとりでスクールに行って学ぶとは思えません。なにしろ、お金を使わない世代ですからね。

 多いのは、YouTubeで無料レッスンを観るか、自撮りによるスイングチェックでしょうか。実際、練習場に行くと、若者がスマホで自らのスイングを撮影している姿をよく見かけます。何もやらないよりはマシですが、どれだけ効果があるかは、未知数ですね。

(2)周囲を気にせずラウンドできるメンタルの強さ
 我々の世代は、絶えず前後の組を気にしながら、他人に迷惑をかけないことを常に意識してプレーしていました。スピーディーなプレーを心掛け、後ろからせっつかれないようにする。加えて、「グリーンを傷つけるな」「ディボット跡は目土で埋めろ」「ピッチマークは補修しろ」と、うるさく言われてきたものです。

 でも今のビギナーは、そもそも砂袋とスコップの使い方さえ知らない人がいますから。砂袋に砂を入れていると、「何か植えるんですか?」って、女性ビギナーから真剣に聞かれましたからね。

 無論、「これは園芸じゃないよ」と言っておきました。まあ、その子はまったくのビギナーでしたから仕方がないですが、いやはや恐ろしきZ世代です。

 ビギナーの行動パターンは、おおよそ天然タイプと真面目タイプに分かれます。

 天然タイプは、自分らのプレーの進行が遅れていることに気づいていないキャラです。お茶屋に来たら必ず休むものだと思い込んでいたり、インスタ映えする場所を見つけると撮影タイムを設けたりして、まさにゴーイングマイウェイです。

 真面目タイプは、見失ったボールを時間いっぱい探したり、打順を守りすぎてプレーが遅くなったり......。クラブの選択ミスをしたら、わざわざ乗用カートまで取りにいき、ショットのたんびに距離計でしっかり計測するとかね。こういう所作をやりすぎると、時間がかかってしょうがないです。

 やはりゴルフは周りの状況を見て、この人は叩いているから甘いオーケーにしようとか、臨機応変に対処することが大事です。

(3)ルール&マナーがないがしろ? コースの風習が変わる
 先日、ハート型のバンカーのあるコースに行きました。そこを通る際、多くのプレーヤーがスマホで撮影をしていました。もちろんコース側はウケを狙っているわけで、プレーの進行が多少遅れようとも仕方がないと思っているみたいです。

 ハート型バンカーは、コースに来る客層を変えた象徴的なスポットと言えます。今までは「早くラウンドしろ」「ハーフ2時間15分以内で」という営業方針から、「うちはインスタ映えするコースですから、時間を気にせず、自由に撮影してください」って、なったわけですな。

 若い女性のインスタグラマーは、プレーより撮影が主体です。ゴルフ好きのオジさんからしてみれば、「何をちんたらやってるんだ」って、思いますよね。確かにプレーそっちのけで、コースの写真を撮っているのですから、古いタイプのゴルファーからすれば、不謹慎極まりなく見えるでしょう。

 けど、オジさんが地味に今日のスコアをSNSにアップしたところで、大した反響はありません。それが、女性がきれいなコースをバックにして撮った写真をアップさせれば、何万ものリアクションがあって、コースの集客に結びつくのです。

 フォロワーがたくさんいるゴルフ女子のインフルエンサーには、無料でラウンドしていただく、あるいは、割引でプレーしていただく――そういうことをしているコースは実際にあります。

(4)女性ビギナーの進出でゴルフ場のマーケットにも変化が起こる?
 というわけで、今後はこれまでのゴルフの常識が通用しなくなり、マーケットにも変化が起こるのではないでしょうか。

 そのひとつが先にもチラッと触れた、きっちりプレーしない人でもコースに入れるようになる、ということでしょうか。もちろん、正規料金を払ってコースを回るのですが、そんなゴルフフェアを着た女性ビギナーがカートに乗っている姿がこれから増えるかもしれません。

 昔、よくハワイとかで、ゴルフをやらない女性にカートを運転させているオジさんがいたじゃないですか。別にお金を払えば、それもありでいいかな、と思います。

 そもそも女性ビギナーのコースデビューで、18ホールをラウンドさせるのは難しいと思います。多くの先進的なアカデミックなゴルフスクールでも、3ホールデビューやハーフデビューをやっているのですから。

 そう考えると、多少練習をした程度でコースデビューする女性ビギナーは、同伴メンバーのカートにちょこんと乗って、様子を見ながら合間、合間に打ってみるとかね。そういうころができるコースこそ、多様性を認めているコースと言えます。

 自分が生まれて初めて18ホールを回り終えた時、ラウンド後にトイレに入って大きい用を足した際、疲れがどっと出て、和式便器からしばらく立てなかったです。デビュー戦は心身ともに疲れるのです。

 じゃあ、ショートコースや河川敷コースなどで練習ラウンドしてから、本格的にコースデビューしろ、と言う人もいますが、それはまた違う話です。

 若いアクティブな女性は、そういう地味なことはしたくないのです。ゴルフ場は晴れの舞台なわけで、そこでスポットを浴びたいみたいですよ。

 こうした変化が徐々に進んでいったら、あとはもう若い人に任せましょう。これらはあくまでも個人的な予測ですし、あ〜しろ、こ〜しろとは言いません。

 どうぞ、お好きなようにやってください。老兵は去るのみ、ですからね。

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