インドで女性の経済的自立を支援|オンライン金融アプリ「LXME」、金融リテラシー高める教育機能も

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2024年08月29日 10:00  Techable

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女性の権利の確立において、経済的な自立は必要不可欠な柱だ。一方で、その土台となる金融リテラシーに関しては無視できない男女差があることが言及されており、女性の金融リテラシーが男性に比べて低いという調査・研究結果は複数報告されている。

また、金融リテラシーは金融教育の経験があるほど高まるとされるが、男女ともに学校や家庭で学ぶ機会は少ないため、自ら学習する機会を得るかどうかにより金融リテラシーに差が生じる。(参考資料)

この課題は日本だけの問題ではなく、また国によってはさまざまな背景とも絡み合う。たとえばインドでは、女性への苛烈な差別が実態として今も存在する。伝統的にインドの女性は社会進出よりも家庭に入ることを優先させられてきた背景も相まって、男性に比べて教育の機会が限られているという指摘もある。(参考:JETROレポート)
[caption id="attachment_243873" align="aligncenter" width="1529"] Image Credits:LXME[/caption]一方で同レポートにもあるように、インドの都市化が進み、近年はこうした状況に変化が起きており、女性のさらなる社会進出を促進するムードが高まっている。こうした取り組みのひとつとして、女性の経済的自立を支える金融教育機能を備えた投資信託および即時融資アプリ「LXME」(発音は「ラクシュミ」)を運営するのが、LXME Money(以降LXME)だ。

[caption id="attachment_243886" align="aligncenter" width="823"] Image Credits:LXME[/caption]LXMEアプリは、オンライン金融プラットフォームとして、各種金融商品だけでなく女性向けの金融教育も提供し、さらに情報交換ができるユーザーコミュニティーを構築している。主な機能カテゴリは、借入・消費・貯蓄・保険・収入・投資・プラン・学習・話し合いの9つ。
女性支援のCXXO主導ラウンドで120万ドルを調達仏教では「吉祥天女」とされる「ラクシュミー」は、ヒンズー教では富と繁栄を象徴する女神だ。両手から金貨をあふれさせる描写も多いとされている(論文「ラグジュアリーな女神、ラクシュミー」参照)。

LXMEは2021年にPriti Rathi Gupta氏(下の画像左)およびRidhi Kanoria Doongursee氏(右)によって設立された。女性による女性のための、女性専用のファンドに支援されたスタートアップと言える。

[caption id="attachment_243895" align="aligncenter" width="859"] Image Credits:LXME[/caption]今年6月のシードラウンドは Kalaari Capital社が主導し、同社の「CXXO 」イニシアチブで実現した。CXXOは新進の女性起業家に投資を行う取り組みで、名称は「CEO」と「XX」*を組み合わせたもの。女性リーダーのコミュニティを構築し、次世代の女性設立者や女性CEOを支援している。

ほかにも著名な投資家が複数参加した同ラウンドで、LXMEは120万ドルを調達した。同社は今月28〜30日にムンバイで開催中の「グローバル・フィンテック・フェス」にもブース出展している。

*一般に女性が持つとされる性染色体。ただし、出生時に女性と判断される人の性染色体がXXとは限らない
「インド初」を名乗る女性専用投資信託アプリLXMEの掲げるビジョンは、「インド国内に2億8000万人いる就労女性の貯蓄や借入をサポートし、経済的自立を目指す」こと。アプリの機能や商品はすべて女性に特化している。

同社サイトでは、インド女性の経済状況について2022年の調査結果を確認できる。それによると、インド女性の98%は退職後の具体的な財務計画を立てていないという。個人として自分の資産を投資に使っていない人が91%という状況で、投資信託を始める自信がないと答えた女性は85%にのぼる。

[caption id="attachment_243876" align="aligncenter" width="1129"] Image Credits:LXME[/caption]そして、76%の女性が「もっと簡単に投資できるプラットフォーム」を必要としている。LXMEアプリの投資信託プランの中には、100ルピー(約170円)から始められる商品も。インドで利用できる2500超の投資信託スキームの中からLXMEの専門家チームが調査・分析・厳選を行っているという。
個人向けローンの利用条件はハードル高めLXMEアプリでは担保不要の個人向けローンも利用できる。アプリで24時間申請可能な利便性と、いわゆる「隠れた料金 (hidden charge)」が一切ない透明性をアピールしている。

『2万5,000〜50万ルピア、最短2分』という手軽さで、専業主婦を含めニーズが異なるさまざまな女性ユーザーにカスタマイズされた個人向けローンとなっている。ただし、FQAに記載された利用条件は「満21歳以上でインド国籍およびインド国内の銀行口座を持つ女性で、月1万8,000ルピー以上の収入があること」だ。

[caption id="attachment_243912" align="aligncenter" width="847"] Image Credits:LXME[/caption]cleartaxの2024年調査によると、インド女性の平均年収は151万6,296ルピー(月収12万6,357ルピー)。銀行口座保有も必須条件であることから、利用のハードルは決して低くはない。個人向けローンを利用できるのは平均年収以上の女性となる。

一方で、LXMEは女性に対する収益向上プログラムと銘打った在宅パートタイムの求人紹介事業も行っている。このプログラムを利用すれば、月に最大6万ルピーの収入を得られるという。
専門家とのマンツーマンセッションは30分無料そのほか、LXMEは最低5,000ルピーから利用できる定期預金や、アカウントと紐付けして買い物に利用できる「Dream Card」も用意している。タッチ決済が可能なプリペイドカードで、大学生を含めた若い世代をエンパワーし、浪費を抑えて賢い財政管理を実現する。

より注目すべきは、「女性の金融リテラシーの向上」を目的としたサービスだろう。5万人以上が登録しているLXMEコミュニティでユーザー同士の交流が可能なほか、クイズやゲーム形式で金融の基礎を学ぶことができ、投資について専門家に直接相談できる「1:1 Money Sessions」は30分間無料となっている。

[caption id="attachment_243929" align="aligncenter" width="1327"] Image Credits:LXME[/caption]単なる金融商品にとどまらず、女性が金融リテラシーを一層高める機会の提供を目指すLXME Money。

現地メディアInc42によると、アプリの累計ダウンロード数はすでに10万以上、3,000万人以上のコンテンツ閲覧数という実績を持っているとのことだ。今後5年以内にユーザー数1,000万人突破を目指しているという。総人口が14億以上のインドにおいては、決して実現不可能な数字ではないだろう。

参照:LXME Money

(文・澤田 真一)

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