「おめーの席ねぇから!」 トリップドットコムで購入したスリランカ航空のチケットが”空売り”だった話【レポート】

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2024年09月09日 14:20  TRAICY

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「おめーの席ねぇから!」というのは、とあるドラマの有名なセリフである。普通、それが許されることはなかなかない。なかなかないはずだったのに、飛行機に乗ろうとしたら、本当に席がなかった顛末をレポートしたい。

オーバーブッキングとは?

オーバーブッキングとは、日本語でいえば「過剰予約」ともいう、航空業界や旅行業界ではよく使われる用語である。ほとんどの場合、キャンセルされることを見越して定員を超えて多めに予約を受け付けることを指すが、予約時のトラブルなどにより重複して予約されてしまうようなこともオーバーブッキングという。どちらにしても、平たくいえば「おめーの席ねぇから!」ということだ。

航空会社がオーバーブッキングを受け付けること自体は、問題ない。だが、オーバーブッキング後の対応を誤ると、問題になることがある。例えば、2018年に日本航空(JAL)がオーバーブッキングした国内線の便の座席調整に失敗。定期便が欠航したうえ、搭乗予定だった乗客には補償として少なくとも2万円を配布するなどした。

「おめーの席ねぇから!」という状態は、必ず出発前までに解消する必要がある。航空機は定員を上回って出発することは許されない。全日本空輸(ANA)は2016年、定員を超過して空港を出発しようとするトラブルがあり、国土交通省から厳重注意を受けた。航空機の安全運航のためなので、もちろん日本だけではなく、世界共通のルールであることは言うまでもない。

実際にオーバーブッキングになったみたいだが…困惑

2024年3月、筆者はインド・ムンバイからシンガポールに向かうことにしていた。いくつかの選択肢があったが、トリップドットコム(Trip.com)経由でスリランカ航空を予約した。コロンボ経由で3万円弱だった。筆者はワンワールドアライアンスのエメラルド会員(上級会員)だったので、なるべくワンワールドアライアンスの便で行きたいという思惑もあった。

予約したのが5日前だったが、その2日後、スリランカ航空ムンバイオフィスを名乗るメールアドレスから「Flight Over booked」というメールが届いた。本文が「Dear Sir, Greetings from SriLankan Airlines !!!!!!」から始まり、予約システム「アマデウス」と思われる文字列が乱暴に貼り付けられて説明されるメールをみて、呆れてしまった。どういうテンションで顧客にメールを送り付けているのだろうか…

メールの内容は、スリランカ航空のムンバイ→コロンボ間の航空便がオーバーブッキングしたので、シンガポール航空のムンバイ→シンガポール直行便に振り替える、という内容。ただ、提案されたのは、当初予定の前日に出発する便。約26時間出発が早い便だ。こういう振替は普通は時間が近い便を提案してくると思っていたが、もしかしてそういう常識は通用しないのだろうか…。

メールで、ワンワールドアライアンスの便で振り替えられるか確認したところ、梨の礫。直接やり取りをしても埒が明かなさそうだったので、発券した旅行代理店であるトリップドットコムのカスタマーサポートに連絡する。「いきなりオーバーブッキングの連絡が来たんだけど、把握してます?」「把握してないです」。それはそう。とはいえ、トリップドットコムのカスタマーサポート自体はしっかり対応してくれている印象を受けたので、しばらく任せることに。

搭乗前日「オーバーブッキングは解消されました!」という連絡が

任せた結果、スリランカ航空とトリップドットコムのそれぞれからほぼ同じタイミングで「オーバーブッキングが解消された」連絡が届く。数年前の空売り問題でおなじみ(?)のトリップドットコムも、スリランカ航空も信用していないけれど、とりあえずそういう事らしいので、悪い予感はするものの信用してみることにしてみる。もちろん、代替案はいくつか考えたうえで…。

今回、ムンバイの空港到着はスケジュールの都合上約2時間前となった。座席がないかもしれない不安があったので、なるべく早くチェックインカウンターに向かいたかったが、前の予定との兼ね合いもあっての対応となった。このとき筆者は、「いろいろすったもんだあったけど、搭乗はできるんじゃないか」という淡い期待を抱いていた。

「やっぱり席ないです」→猛抗議→結果は?

予定通り、フライト2時間前にムンバイ空港の、スリランカ航空のチェックインカウンターに向かったところ、悪い予感は的中。当初聞いていた座席が用意されているなんてことはなく、非情にも「オーバーブッキングのため、ムンバイ→コロンボの席が用意されていない」旨が告げられる。やっぱりか…という心の声が洩れる。そして、数日前からの不毛なやり取りは何だったのか改めて責めたいところだったが、ここは我慢。もう諦めの感情が大きい。

努めて冷静に、代替案を尋ねる。回答はシンガポール航空の直行便。直近の便はムンバイをお昼頃に出る便なのだが、この代替案を確認しているのは、深夜1時前である。仮に待ち時間を潰せるホテルが用意されたとしても、空港とホテルの行き来などを踏まえると、あまり上質な睡眠は確保されなさそう。すでにスリランカ航空への信頼はないので、10時間後に飛行機に乗れるという口約束を信頼する気にもなれなかった。

ワンワールドアライアンスのステイタスポイントが欲しかったので、シンガポール航空の選択肢はない。近い時間でワンワールドの航空会社便は1便だけ。カタール航空のドーハ行だ。ドーハに行けばシンガポール行きとつながるし、ステイタスポイントも稼げる。到着時間もそこまで遅れないのでよい選択肢になるはずだった。

だが、担当者は1度ノーと返した。時間がないという。カタール航空便がムンバイ午前3時10分発で、現在の時間が午前1時過ぎ。翌日便だったら振り替えられるけどね、というコメントとともに返答。今思うとやる気がなさ過ぎなコメントだと思うが、こんなことで腹を立ててもしょうがない。粘り強く交渉した結果、1時間くらい時間もらえれば何とかやるという回答を得た。

「どっか適当なところで座っていていいよ」というありがたいコメントをいただいたが、信用できないので、カウンター周辺で待つ。宣言通り1時間ほどで、カタール航空利用のチケットが出来上がる。時刻は午前2時過ぎ。もう疲労困憊であるが、やっと飛行機に乗れるという気持ちだけがモチベーションだった。こんなはずじゃなかったのだが。

カタール航空のチェックインはとくに問題なく進行。また座席がないとか言われずによかった。ほぼ満席のフライトだったが、オンタイムでドーハに出発。ドーハのトランジットもあっけなく、無事にシンガポールに向かえた。こうして、とんでもない1日はなんとか収まった。

後日談と振り返り

後日、JALマイレージバンク(JMB)の積算状況を確認したところ、カタール航空のフライトについてマイルが積算されていた。ただ、当初の予約はスリランカ航空の予約クラスV(JMBでは積算率50%)だったのに対し、振替でカタール航空の予約クラスV(同30%)と処理されたようで、積算されるマイル数はちょっと損した気分。もちろん、マイル以上に失ったものが多いのだが。

今回、5日前にスリランカ航空をトリップドットコムで予約し、3日前にオーバーブッキングを知らされるという状況。そもそもトリップドットコムで買った時に、「空売り」状態だったのではと思わざるを得ない。過去にも遅延・欠航・目的地変更などさまざまな経験がある筆者だからなんとも対応できたが、正直言ってこういう対応をすると、スリランカ航空はおすすめできないし、トリップドットコムの「空売り」騒動を思い出してしまう結末となった。

そして、スリランカ航空からはアフターフォローは何もない。別に今後当分乗らないので、正直どうでもいいが、ワンワールドアライアンスのエメラルドステイタスを以てしてこの扱いなので、顧客を大事にする姿勢はあるのだろうか。ちなみに、トリップドットコムからはアフターフォローはあったが、目的地に着いたので特に補償などは提供できないという回答だった。ここについては旅行代理店としては妥当な対応だと思うが…

最後に、これは愚痴なのだが、オーバーブッキングの連絡を受けたことにより、自動でスリランカ航空ムンバイ支店のメールマガジンに登録されてしまったようだ。定期的にオーバーブッキングをリマインドさせられる羽目になるので、本当に勘弁してほしい。メールマガジンを停止する方法も書いてないので、正直困る。スリランカ航空、もう少ししっかりやってくれないだろうか…

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