夏の甲子園、あのとき“継続試合”があれば…「降雨ノーゲーム」の不運に泣いたチームは勝てたのか、シミュレートしてみた

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2024年09月10日 06:52  ベースボールキング

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もし“継続試合”があれば…(C)Kyodo News
 今年から継続試合が採用された高校野球。天候不良で試合が中断された場合でも、イニングに関係なく、翌日以降に中断されたイニングから試合が継続されることになった。

 夏の甲子園でも、過去にはリードしていた試合がコールドゲームの条件となる7回未満だったため、ノーゲームになり、再試合で敗れるという不運なケースが何度かあった。これらの中から、平成以降の3試合を選び、もし“継続試合”があれば、どんな展開になっていたか、シミュレーションしてみよう。


◆ 8点リードするも…ノーゲームになった駒大苫小牧

 まずは大量8点をリードしながら、4回途中ノーゲームとなり、再試合で敗れた2003年の駒大苫小牧から。

 1回戦の倉敷工戦、駒苫打線は2回裏、打者13人の猛攻で一挙7点を先制すると、3回にも敵失に乗じて1点を加え、8-0と大きくリード。先発・白石守も4回まで1安打無失点に抑え、同校の甲子園初勝利と北海道勢の夏通算50勝目もほぼ確実と思われた。

 ところが、4回にも二死一、三塁のチャンスをつくった直後、雨が激しくなり、無念のノーゲームとなった。

 この日は台風10号が接近中であることを考慮して、4試合の予定を2試合に変更したが、台風が予想を上回る速さで接近したことから、2試合目が割りを食う羽目に……。

 そして、翌日の再試合では、前日の試合を反省材料に相手を徹底研究した倉敷工が、白石の高めの速球を捨て、カウントを取りにくる低めのボールを狙い打ち。前日炎上したエース・陶山大介も打者の打ち気をそらす投球に徹し、狙い球を絞らせなかった。

 終わってみれば、倉敷工が5-2で雪辱。前日の勢いを取り戻せずに敗れた駒苫・香田誉士史監督は「すべて自分の責任。(気持ちを)切り替えて選手の力を引き出せなかった自分のせい」と肩を落とした。

 だが、仮に“継続試合”になっていれば、8-0の4回二死一、三塁から試合再開となる。仮に倉敷工が5回からの5イニングで翌日と同じ5点を取ったとしても(再試合では5回までに4得点)、8点リードには届かない。

 また、駒苫には、翌日の再試合で6回途中からリリーフし、7奪三振無失点と好投した2年生左腕・鈴木康仁も控えているので、多少の失点を許しても逃げ切れたかもしれない。


 次は全国的な冷夏で、秋には米不足騒動も起きた1993年に雨に泣いた鹿児島商工(現・樟南)だ。

 3回戦で8強入りをかけて常総学院と対戦した鹿商工は、2年生エース・福岡真一郎が3回まで1安打無失点の好投で、4-0とリード。4回表にも一死三塁と追加点のチャンスながら、雨のため、試合が中断。降雨ノーゲームになった。

 これには常総学院・木内幸男監督も「完敗でした。向こうの気持ちを考えると申し訳ない」と沈痛な面持ちだった。

 翌日の再試合、福岡は常総打線を4安打7奪三振と2日連続の好投も、7回一死二、三塁のピンチで、一塁ライナーが野手のグラブをはじく不運な一打(記録は二ゴロ)で失点。0‐1と惜敗した。

 鹿商工は常総を上回る5安打を記録したが、常総のエース・倉則彦は当時「3連投目が、一番調子がいい」と言われるほど連投に強かったので、攻略の糸口を見つけられなかった。

 もし、“継続試合”となり、4回一死三塁で再開された場合、この回に鹿商工が加点できたかどうかにかかわらず、常総が残り5イニングで4点リードを追いつくのは、福岡の調子を考えると、容易なことではなかっただろう。やはり、鹿商工が逃げ切ったのではないか。

 ちなみに、鹿商工は、2回戦の堀越戦でも、3‐0とリードの8回無死一塁の攻撃中に雨で試合が中断し、降雨コールド勝ち。こちらも“継続試合”が適用されていれば、8回裏、4人目に打順が回ってきたら「同点3ランを打ってやろう」と狙っていた、堀越の1番打者・井端弘和(元中日、巨人)も結果はどうあれ納得したことだろう。


◆ 大会史上初の“同一カード3連戦”

 最後は2度にわたって降雨ノーゲームとなり、大会史上初の“同一カード3連戦”となった2009年の1回戦、如水館対高知だ。

 8月9日の試合は、如水館が2-0とリードの3回終了後、翌10日は5回表に高知が5-6と1点差に迫り、なおも一死一塁の場面でいずれもノーゲームになった。

 2試合続けて“継続試合”になるので、トータルすると、8-5と如水館がリードした8回表、高知の一死一塁からの再開になる。

 8月11日の再々対決では、2日間で計136球を投げた如水館のエース・幸野宣途が2回3失点で降板。

 一方、雨でぬかるんだマウンドで、2日間計7回8失点と本来の投球ができなかった、高知のエース・公文克彦(元巨人、日本ハム、西武)が「晴れたので自分のピッチングができた」と14奪三振完投した結果、9-3で高知が大勝している。

 公文は春先から1日300球を投げ込み、夏の県大会の1ヵ月前から毎日の10キロ走でスタミナにも自信があったので、前の2試合と投球パターンを変えたことと併せて、高知が有利であることに変わりはないだろう。

 だが、8、9回の2イニングで3点差を追いつけるかどうかも微妙なところ。9回決着なら如水館が逃げ切り。延長戦突入の場合は高知に分があったかもしれない。

文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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