「罰金大国」シンガポール 街中を自動走行する“謎のロボット”の正体は?

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2024年09月12日 07:01  ITmedia ビジネスオンライン

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シンガポールの観光名所であるマーライオン像とマリーナベイ・サンズ

 8月上旬、出張でシンガポールを訪れた。前知識はほとんどなく、観光名所のマーライオン像や、商社マンの駐在先、開発独裁の国――といったイメージしか持っていなかった。実はシンガポールは、世界でも有数の「デジタル大国」だ。チャンギ国際空港に降り立ったその瞬間から、さまざまな手続きが自動化されていて驚いた。街中には自動走行するロボットの姿も。何かを監視しているようだが、その正体は……。


【画像】マーライオン公園を自動走行していた屋外セキュリティロボット


●入国審査は完全自動化


 まずは空港に到着した直後の入国審査。自動ゲートが設置されてあり、機械にパスポートをスキャンした後に、顔と指の生体認証であっさりと手続きは終了した。シンガポールでは現在、国籍を問わず、全ての国・地域からの渡航者が自動レーンで入国審査できるという。


 2024年末までには、シンガポール在住者の入国、さらに全ての国籍者の出国において、パスポートの提示を必要としない生体認証審査が可能になる予定だ。


(参考:「チャンギ空港、全ての外国人渡航者が自動レーン審査可能に」2024年05月21日、日本貿易振興機構/ジェトロ)


 空港でもう一つ印象的だったのが、出国時に使用した「自動手荷物預け機」。自動チェックイン機で手荷物タグを印刷した後に、スーツケースにタグを貼り付けて、自身で無人の手荷物預け機に預ける。


 日本国内でも全日空(ANA)が2015年の段階で、同様の自動手荷物預け機を導入していたようだが、利用したことがなかったため、とても新鮮だった。


●街中を自走するロボットの正体は?


 シンガポールは、言わずと知れたデジタル大国だ。スイスの経営大学院IMD(国際経営開発研究所)が発表した「2023年世界デジタル競争力ランキング」では、米国、オランダに次ぐ3位。日本は32位と大きく水をあけられている。


 シンガポール政府は少子高齢化などの問題を解決するため、2014年から「Smart Nation」という国家戦略を掲げ、デジタル技術とデータを駆使した国家づくりを進めている。スマートシティ技術の格好の実験場であり、日本からもパナソニックやダイキン、東京海上ホールディングスなど多くの企業が進出している。


 そんなシンガポールの街中で目に留まったのが、赤と青のライトを明滅させながら自動走行するロボットだ。マリーナベイ地区にあるマーライオン公園を、人の歩行と同じくらいの速度で移動している。カメラのようなレンズがついていて、何かを監視しているようだ。付近には重装備の警察官らもパトロールしていて、なんだか物々しい。


 車体に記載された企業名「Kabam Robotics」をもとに公式Webサイトを確認すると、このロボットは、同社が手掛ける屋外セキュリティロボットで、周囲を360度見渡しながら広範な情報収集が可能だという。


 シンガポール警察は、「地上の目」を増強する手段として、空港などに警備ロボットを配備するなど積極活用している。


(参考:「シンガポール警察、空港パトロールにロボット2台を配備」2023年6月19日、CNN)


 シンガポールは「罰金大国」としても知られる。つばを吐くと罰金、ごみをポイ捨てすると罰金、公衆トイレで水を流さなければ罰金……と、うそのような細かなルールがたくさんあるという。


 パトロールロボットには、こうした公共空間における違反行為を取り締まる目的もあるようだ。シンガポールのホームチーム科学技術庁(HTX)は2021年に、パトロールロボットの実証実験を実施。禁止された区域での喫煙や、ポイ捨て、5人以上の集会などを発見すると、AIシステムが映像をリアルタイムで分析し、ルール順守の警告や注意喚起を発する取り組みを進めてきた。


(参考:シンガポールのホームチーム科学技術庁(HTX)のニュースリリース、2021年9月5日)


 人間によるパトロールの負担を軽減する有効性を感じる一方で、プライバシー保護などの課題もあるに違いない。日本で導入するのは容易ではなさそうだ。これも開発独裁のなせる業なのかもしれない。



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  • 猫型配膳ロボを紛れ込ませてみたい。
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