西武池袋本店、開業以来初の全面改装の狙いとは? そごう・西武が説明

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2024年09月12日 22:41  Fashionsnap.com

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そごう・西武の(左から)副社長の久保田俊樹氏、田口広人社長、劉勁代表、ダヴィデ・セシア副社長

Image by: FASHIONSNAP
 そごう・西武が、全面改装を進めている西武池袋本店に関する記者会見を9月12日に都内で開いた。同店が全面改装するのは1940年に前身となる武蔵野デパートが開業して以来初。会見にはそごう・西武の劉勁(りゅう・じん)代表取締役をはじめとする経営陣が揃って登壇し、改装の狙いについて説明した。

 西武池袋本店の全面改装は、そごう・西武が旧親会社のセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)により売却され、新たに米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)の傘下に入ったことがきっかけとなった。改装をめぐっては、フォートレスのビジネスパートナーでもあるヨドバシホールディングスが運営する家電量販店「ヨドバシカメラ」が出店する見方が濃厚だったこともあり、これまで貫いてきた“百貨店のあるべき姿”が崩れていくという不安視から、セブン&アイによる売却が正式決定する前に労働組合によるストライキが起こったほか、海外ブランド店舗の撤退などの問題を懸念した元豊島区長の高野之夫氏が「西武池袋本店存続に関する嘆願書」を提出するなど、日本を代表する百貨店店舗の行方について多方面で注目を集めていた。
 初の全面改装では「インクルージョン(INCLUSION)」をテーマに、婦人フロアと紳士フロアが分かれていた伝統的なデパートメントからの脱却を掲げる。加えて、ヨドバシカメラの出店により、百貨店部分の売り場面積は実質約半減する計画だ。

 百貨店部分ではこれまで手を広げ過ぎていたというカテゴリーを、ラグジュアリー、コスメ、フードに絞り込み、これまでの「百貨」を扱ってきたビジネスモデルから3カテゴリーにフォーカスすることで「カテゴリーキラー」へとシフトする方針を掲げている。
◾️フロア構成8階:ファッション ライフスタイル雑貨7階:メンズ&レディースファッション 催事場6階:インターナショナルデザイナーズ5階:ハイジュエリー&ウォッチ VIP特別室4階:ラグジュアリーブティック メンズ&レディース プラチナサロン3階:コスメ メンズ&レディース プロモーションスペース“NEWS”2階:ラグジュアリーブティック メンズ&レディース1階:ラグジュアリーブティック フレグランス メンズ&レディース地下1階:デパ地下 和洋菓子 パン 海苔茶名産
 ラグジュアリーでは世界のトップ約60プランドを誘致。売場面積はこれまでの約1.3倍に広げる。コスメでは売場面積を約1.7倍に拡大し、国内外約60ブランドを展開することで日本最大級のコスメ売場を目指す。フードは、「デパ地下」の概念を生み出した西武池袋本店ならでは取り組みとして、約180ショップからなる“新しいデパ地下”を創出。世界から注目される「BENTO(弁当)」に特化したコーナーも設ける。
 劉代表が同職に着任してから同社として会見を開いたのは初めて。同日夜にはオープニングセレモニーと題し、取引先などを招いた新しい西武池袋本店の姿を発信するイベントを開催した。
 再スタートを切るにあたり、劉代表はもう一度“顧客ファースト”に立ち返り、改革を行っているという。この“顧客”は消費者だけではなく、取引先も含まれる。「我々のプラットフォームでいかに気持ちよく商売していただけるかが経営課題」としており、今回のイベントの開催も取引先とのつながり強化が狙いだ。
 これまでの“失敗”の要因の一つに挙げるのは、2010年のリニューアル時から力を入れてきたそごう・西武の「育てたいブランド」の売り上げを伸ばせなかったこと。商品やブランドの知識のある顧客からの共感が得られなかったほか、取引先に対しても強気の態度に出ていた時期があったと田口広人社長は振り返る。今回の改装では経済合理性を徹底。「日常」の要素はヨドバシカメラや「無印良品」「ロフト」といった周辺店舗に託しながら、百貨店部分では西武池袋本店が培ってきた「非日常」の強みを積極的に打ち出す。改装後は、売り場面積が半減しても改装前の売り上げ規模を目指したい考え。西武池袋本店の改装が成功した際には、そごう・西武の他店舗にも応用する。
 労働組合との関係性も気になるところだが、セブン&アイによる売却後も継続的にディスカッションを続け、真摯に向き合っているという。リストラや店舗の撤退は現時点では考えておらず、今回の改装で取り組んでいる“新しいデパートメント”の成果を見てから検討する方針。プラダジャパン元社長で元そごう・西武取締役執行役員副社長のダヴィデ・セシア(Davide Sesia)氏によると、ラグジュアリーブランドも多くのブランドが新たな西武池袋本店のイメージに共感しているという。外商比率は将来的には3、4割のシェアを想定しており、力を入れていく考えだ。西武池袋本店は2025年夏から段階的にリニューアルオープンする。
 同日夜に開かれたオープニングセレモニーに登壇したフォートレス日本代表の山下明男氏は、そごう・西武のスポンサーになってから「極めて順調」と総括。特に若手、中堅社員に対して「新しい、斬新なものに変えていきたいという士気に溢れていて喜ばしい」と評価し、従業員とともに「大幅に設備投資をしてリアル店舗として感動の場を提供する、そういう池袋の館を作っていきたい」と意欲を示した。
 また、来賓祝辞ではLVMH モエ・ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパンのノルベール・ルレ(Norbert Leuret)社長が急遽登壇。43年前に来日して初めて百貨店で買い物をした場所が西武池袋本店だったというルレ社長は、「フォートレスから西武池袋本店の新しい話を聞いたときには一緒にやりたいとすぐ考えた」とコメント。「日本の百貨店はすごく頑張っていると思う。日本の百貨店がなければ我々は成功できなかった。日本の百貨店に関わる皆さんにお礼がしたい」と賛辞を述べ、新しい西武池袋本店の姿に対しても「前向きに考えてみませんか」と呼びかけた。

 オープニングセレモニーでは小池百合子東京都知事がビデオメッセージを寄せたほか、ピアニストの清塚信也がスペシャルステージを披露し会場を盛り上げた。

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