プレミアリーグ開幕3連勝で注目のリバプール 林陵平がアルネ・スロット新監督の戦術を徹底解説

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2024年09月14日 10:01  webスポルティーバ

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林陵平のフットボールゼミ

今週末から再開する欧州各国リーグ。注目のプレミアリーグを開幕3連勝で目立っているのが、アルネ・スロット新監督率いるリバプールだ。人気解説者の林陵平氏に、昨シーズンからの戦術の変化と好調の要因を詳細に説明してもらった。

【動画】林陵平深掘り解説「リバプールの新監督スロットが有能すぎる!」↓↓↓

【縦の速さに加えて、ポゼッションの質が上がった】

 今シーズン、リバプールの新監督に就任したアルネ・スロットは、昨シーズン、フェイエノールトの試合をチャンピオンズリーグ(CL)で何度か解説した時に、「この監督は間違いないな」と思いました。試合中の修正の早さがあり、自分たちのゲームモデルを持ちながら対戦相手によって形を変えられるので、非常にいい監督です。

 リバプールの今季の初期配置は4−2−3−1ですね。GKはアリソン・ベッカー。DFは右からトレント・アレクサンダー=アーノルド、イブラヒマ・コナテ、フィルジル・ファン・ダイク、アンドリュー・ロバートソン。2ボランチにアレクシス・マック・アリスターとライアン・フラーフェンベルフ。トップ下はドミニク・ソボスライ。前線は右にモハメド・サラー、中央にディオゴ・ジョタ、左にルイス・ディアス。

 今季はユルゲン・クロップ前監督の縦の速さを残しつつ、ポゼッションの質が上がったのが変わった部分だと思います。ポゼッション時は、右サイドバック(SB)のアレクサンダー=アーノルドが中のボランチの位置に入り、マック・アリスターが高い位置に出る3−2−5の形や、アレクサンダー=アーノルドがそのまま右サイドの高い位置を取るケースもあります。

 あるいはマック・アリスターとフラーフェンベルフが相手2トップの後ろに立ち、そこへ相手のボランチが食いついたりすると、DFラインから一気に前線に縦パスを送るような「擬似カウンター」の形も見られます。このあたりの選手の立ち位置の工夫が非常にうまいです。

 第3節のマンチェスター・ユナイテッド戦(3−0で勝利)では、相手が前線からマンツーマンでプレッシャーをかけてきた時に、トップ下のソボスライを意図的にサイドのスペースに下ろし、そこにボールを送ってプレス回避するなど、昨シーズンまでとは違った形を意図的に作っているのが見えます。試合によってやり方を変えていますが、1試合のなかで再現性のある形をとっているのがスロット監督のよさです。

【さまざまなプレーがきちんと設計されている】

 相手によって形を変え、ゆっくり前進しながら攻撃もできるし、今までどおりの縦の速さも使える。これが今のリバプールの強さです。

 ソボスライは昨シーズンの4−3−3のインサイドハーフから、4−2−3−1のトップ下に入ったことで、広大なスペースを自由に動けるようになり、彼の活動量や力強さが出ている。彼のよさが引き出され、チームのキープレーヤーになっています。

 ボランチのフラーフェンベルフも、昨シーズンは自分のよさを出せなかったところ、スロット監督に変わってプレーが整理されたことで、彼のよさが色濃く出ています。

 崩しの局面では、サラーとディアスのクオリティがあるので突破でき、アレクサンダー=アーノルドも高い位置でゴール前の崩しに関わっています。スロット監督の言葉で「彼(アレクサンダー=アーノルド)は中だけでプレーさせるのはもったいない」というのがありました。高い位置でゴール前の崩しに関わらせることで、アレクサンダー=アーノルドのキックのよさが出ています。

 守備面ですが、今季のリバプールは攻撃時に縦の速さだけでなく、ゆっくりボールを保持しながら前進できるようになったので、全体の陣形がコンパクトになっています。そうなるとボールロストしたあとも選手たちの距離が近いので、すぐさま奪い返すカウンタープレスがハマりやすくなっています。

 攻撃から守備への切り替えも速く、チーム全体のボールに対する準備や反応も早い。これは、スロット監督も口酸っぱく言っているのかなと感じます。

 プレッシャーのかけ方にもいろいろな形があります。例えば、相手の右SBにはディアス、右センターバック(CB)にはジョタ、左CBにはサラーと、右からの3人に対して3トップを当てるケースがあります。この時、左SBに対してはアレクサンダー=アーノルドが縦スライドして捕まえにいく。そして、後ろのDFラインは右にスライドします。

 第2節のブレントフォード戦では、このはめ方をしていました。特にサラーが左CBにプレッシャーをかける時に、左SBへパスを通しにくいような角度から詰めにいきます。この状況から相手が中央を通してきた時には、ソボスライが2ボランチへのコースをうまく消していますし、状況に応じてフラーフェンベルフが前に捕まえに出て奪います。

 また、ブレントフォード戦ではアレクサンダー=アーノルドが左SBを捕まえにいっていましたが、マンチェスター・ユナイテッド戦ではフラーフェンベルフがスライドして出ていっていました。これは、ユナイテッドの左ウイングにマーカス・ラッシュフォードがいるので、彼にフリーでボールが渡るとやっかいだからです。

 またこうしたプレッシャーのかけ方でサラーとディアスを前に残すことで、ボールを奪った時にはふたりが前線のスペースを使えるようにもなっている。

 こうしたさまざまなことがきちんと設計されているのがすばらしい。プレシーズンの期間だけでここまでチームとして落とし込んでいるのは、スロット監督、恐るべしですね。

【遠藤航の出番が少ないのは戦い方が変わった影響】

 スロット監督が自分の戦術をチームに浸透させられているのは、ゲームモデルがしっかりしていて、攻撃と守備の4局面(攻撃、守備、攻→守、守→攻の切り替え時の4つ)のデザインに確固たるものがあるからでしょう。加えて相手によって変えられる柔軟性もある。選手もやることが整理されると、プラスアルファのものが生まれます。

 まだ3試合ですし、カウンターを受けた時のリスク管理なども含めて、作り上げている途中の部分はあるでしょうが、今シーズンは優勝争いをすると思っています。

 選手層も厚くなり、いいチームになっています。ジョタの代わりにダルウィン・ヌニェスがいます。ディアスの代わりにはコーディ・ガクポがいます。サラーところには、フェデリコ・キエーザも移籍してきました。

 遠藤航の出番がまだ少ないのは、戦い方が変わった影響があると思います。クロップ監督時代は守備面で気が利く選手が求めてられていたところ、スロット監督ではボール保持の局面で前向きな状態で前線にボールを配給できる選手が求められている。ただ、遠藤にもチャンスは来ると思います。

 今後も新しい顔が出てくるでしょう。シーズンを通してのリバプールの変化が楽しみです。

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