【フェンシング】江村美咲の弟凌平が全日本8強!パリ五輪で旗手、銅メダルの姉がベンチコーチに

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2024年09月15日 14:07  日刊スポーツ

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フェンシング全日本選手権 男子サーブル3回戦を突破して引き揚げる江村凌平(左)とベンチコーチに入った姉美咲(撮影・木下淳)

<フェンシング全日本選手権>◇15日◇第2日◇男子サーブル、女子エペ◇静岡・沼津市総合体育館



男子サーブルで2028年ロサンゼルス五輪(オリンピック)を目指す江村凌平(23=オリエンタル酵母工業)が、初のベスト8入りを果たした。初戦の2回戦で佐藤悠雅(早稲田大)に15−9。続く3回戦も松永健吾(警視庁)に15−9で快勝した。「アップの時から身体の調子が良くて、今日はいけるんじゃないかという感覚があった」。昨年の32強から進化を証明した。


準々決勝は、はね返された。20年の全日本王者で、第1シードの小久保真旺(21=法政大)に挑戦。日本代表のトップクラスを相手に8−15と、まだ力の差はあったが、大会を通じて「自分の納得のいく試合運びと思い通りの動きができた」と内容に手応えをつかんだ。


江村。今、日本フェンシング界で最も有名な姓で、姉がいる。男女を通じて日本勢初となる世界選手権2連覇、今夏のパリ五輪では日本選手団の女性旗手を務め、女子サーブル団体で種目初の銅メダルを獲得した美咲(25)だ。


父宏二さんもオリンピアンで、フルーレの88年ソウル五輪代表。08年北京五輪では日本代表監督を務め、太田雄貴の日本初メダル(銀)獲得に導いた。


「昔は父の七光と言われていたんですけど、それを超える姉が出てきまして(笑い)。フェンシングをやっている以上は比較され続けるので、姉の…とならないよう、少しずつ頑張って結果を出していかないと」


まさに剣士一家。母孝枝さんもエペの世界選手権代表で、現在もエペを続けている兄将太郎と、同じサーブルの姉を追った次男は、大分県のクラブで小学校2年の時に剣を握った。


この日は、翌日に試合を控える2歳上の姉が昨年に続き、ベンチコーチに入ってくれた。身ぶり手ぶりのアドバイス、動画撮影、不調になった剣の交換などフル回転。3回戦まで、好プレーのたびに姉が「そうそうそう!」とサムアップで評価してくれて「本当に状況判断とか的確。流れが悪くなり始めると一言二言、後ろから、こうした方がいいと声をかけてくれるので助かります。今日は『いい感じ』『そのままで大丈夫』と気持ちを乗せてもらいました」と感謝した。


一気の4強入りを阻まれた小久保には、きょうだいタッグでも、まだ敵わなかった。男子サーブル種目で初の五輪メダルが期待される有望株。埼玉・星槎国際高川口では父に師事した愛弟子で「分かっていたけど本当に強かったです」と感服した。よく練習はともにしているが、公式戦では迫力に押された。「年下ですけど、チャレンジャーのつもりで攻めました。でも1枚上でした」と日本の最上位層を肌で感じた。


一方で、伸びしろは引けを取らない。自身は中学でいったん剣を置き、バドミントンやバスケットボール部へ。埼玉栄高から再開して3年時にフルーレでインターハイ16強に入った。並行してサーブルにも取り組み、姉と同様に転向。まだ本格挑戦6年目に入ったところだ。


それでも、父や姉と同じ中央大に進んでサーブルに一本化し、大学3年時の22年12月に日本代表入り。翌23年1月から国際大会に出場している。これまでは23年の東京都選手権3位などの実績があったが、今回は日本最高峰大会のベスト8進出。過去最高成績を足掛かりにロス五輪を目指す。


その雰囲気は、一足先に味わってきた。今夏のパリは家族で美咲の応援に。個人でまさかの3回戦敗退に終わり、団体も苦しみながら最後の最後に本来の動きを取り戻して銅メダルをつかむ姿を目に焼きつけた。


「今まで姉を見てきた中で、一番苦しそうでした。団体になっても、まだ調子が戻っていなさそうで。それだけに、選手目線で見ていたんですけど、最後の1本を取った時には泣いちゃって(笑い)。心からホッとしました」


4年後へ、姉はこの日「個人と団体の金メダルという目標が残っている。リベンジしたい」と、フェンシングのまち沼津のファンに宣言した。弟も、まずは出場を目指して国際舞台へ。11月から新シーズンが始まり、再び海外転戦を重ねていく。「また代表に選んでもらうためにも、国内のランキングポイントもほしかった。うれしかったです」と初の全日本8強でアピールした。


あとは、楽しむ。世界女王の美咲からは「試合を楽しむ」ことが大切だと、常日ごろ言われている。


「姉自身も、自らに言い聞かせていることなんですけど、それが最も大事だなと胸に刻んでいます」


受ける期待は大きく、今春、アスリート社員としてオリエンタル酵母工業へ入社した。社会人1年目の挑戦は始まったばかりだが、ペースを上げなければ、きょうだいLAは夢物語となる。堅実に、しかし野心を持って、偉大な姉を追う。【木下淳】


◆江村凌平(えむら・りょうへい)2001年(平13)3月19日、大分県生まれ。フェンシングを始めた1年後に家族と東京へ移住し、週1回、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で行われていた東京都のジュニア講習会で学ぶ。現在もNTC拠点。中学時代に熱中したバスケでは現在、身長177センチながら高さ305センチのリングに触れる跳躍力を誇る。瞬発系で、姉と同じロングアタックを武器にすべく鍛錬中。利き手は右。体重69キロ。血液型AB。

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